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悠久、空が結ぶ。  作者: むい
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トンっと落とした忘れ物

 学校の帰り道、ボーッと歩く悠の隣で怜が色々と話しかけている。なんとなく適当に返事をしながら、トボトボと歩いていると怜がため息混じりに肩にポンッと手を置いた

「おい、悠。今度はなに見ているだ?」

「特になにも見てないけど……」

「今日も雨が降らないかなとか思うなよ。また濡れて帰るはめになるんだから」

「ああ分かってるよ」

 返事をしながら、ふと空を見上げる。今は雲一つない快晴で、夕暮れが近い時間になっても日差しが眩しく少し目を閉じた

「なぁ、怜は夢を見るのか?」

 悠が小声で問いかけると怜が首をかしげながら悠の顔を見た

「夢?寝ているときに見るやつか?」

「まあ、そんな感じの」

「いや、全く。仮に見てたとしても覚えてない」

「そっか。まあそうだよな」

 怜の返事を聞いて、悠も素っ気なく返事をしてスタスタと歩きだす。追い抜かれた怜が慌てて悠のあとを追いかけながら戸惑いつつ声をかけた

「なに、なんか夢でも見たのか?」

 少し顔をにやつかせながら聞く怜。悠はその話しに返事せずに歩き続ける

「嫌な夢か?良い夢とか?」

「良い夢といえばそうかな……」

「なんだ、教えろ……」

 怜が悠の左腕にトンっと軽く肘打ちしながら話しかけた時、突然悠が歩くのを止め、道路の向こう側を見ていた

「あの人……」

「ん?なんだ?」

 怜も足を止め悠が見る先を見ると、前に見た公園に一人また同じように傘をさした女性が一人立っていた

「やっぱり似てる……」

「似てる?誰に?」

 怜が悠の呟いた声を聞いて不思議そうに聞くと、女性がこちらに振り向いた

「あの人……」

 二人と目が合った女性が驚きつつ呟く。抱きしめている子猫が上を向き、にゃあ。と一つ鳴いて、ジタバタと動きだした

「まって、急に動かないで……」

 慌てて子猫を落ち着かせようとして、持っていた傘が地面に落ちた。トンっと落ちた音に驚いた子猫が女性の腕からすり抜け走って逃げた

「あっ、ゆう……」

 逃げていく子猫に手を伸ばし声をかけるが、子猫はあっという間に草むらに隠れ消えていった。女性が子猫が走っていた草むらの方を見てしょんぼりとしていると、そばに落ちたはずの傘が突然視界から消えた

「あの……すみません、この傘……」

 聞こえてきた声に驚いて振り向くと、悠と目が合った

「もしかして夢で……」

「いえ、たぶん違います!」

 そう悠が問いかけると、大きな声で否定すると同時に女性が子猫が走って逃げた草むらの方にバタバタと走っていった

「なんだ悠、知り合いか?」

「いや、知り合いとかでは……」

 後から追いかけてきた怜に返事をしながら渡しそびれた傘を見た後、グッと傘を強くつかんで女性が走り去った方を見た

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