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81.貴族になった金獅子の団(2)

「――お待たせ」


 突然後ろから声をかけられて英傑達は驚いて振り返る。そこには銀髪に赤い瞳の美しいハーフエルフ__ルーナが立っていた。


 皆目を輝かせてルーナを見た。だが、すぐに落胆のため息をつく。


 ――ルーナは、()()()()()()()。いつものように長い銀髪を一つに編み込み、きっちりとしたシャツとズボンにベストを着てその上に黒い貴族のコートを羽織っている。


「あれれ、ちゃんルナ、ドレス着ないの?」

「ええ」


 英傑達+アランが不服そうな顔をするとルーナがにらみつける。


「何? 文句あんの? 私が何を着ようが勝手でしょうか」

「......あー忘れてた。ちゃんルナって俺達の前だと女の格好したがらないんだよね。そういうお年頃ってやつ?」

「じゃ、じゃあ、オルレアン公爵が用意したっていうドレスは何だったんですか!」


 男達の中で一番不服そうにアランは眉を寄せる。


「あーそれは......」


 ルーナは体を一歩横に移動させた。後ろに控えていた、黒髪に黒目の人形のような可愛らしい少女__パトリシアが姿を現した。彼女はフリルのついた薄い緑色のドレスに身を包み、いつにも増して人形のように可愛らしい。ただ、やはり、いつものように無表情で何を考えているかわからない。

 彼女の可愛らしい姿に男たちが、おおっと感嘆の声をもらす。


「パティだって、もう少しで英傑になるかもしれないんだから、連れてきたわ。こういう事も未来のリーダー格として早いうちから経験しとかないと」

「......」


 少女は、とにかく無表情&無言を貫いた。


「その子連れてくるのはどうでもいいんだけどさ......」

「――――ルーナ」


 ヴィクターの言葉を、別の声が遮る。振り返ると、リオが立っていた。さっきまでリオを取り囲んでいた女性の集団は、英傑達に畏怖を感じているのか少し距離のある所からじっとこちらの様子を見つめている。


「ルーナ、お前の分のドレスだってオルレアン公爵が用意して下さったんじゃなかったのか?」

「断ったわ」

「お前なあ......。その恰好で俺と踊る気?」

「踊らない」

「......なんでだよ。練習しただろ?」

「兄貴にはセーラ様や他の女の人がいるでしょ」


 ルーナは耳をイカ耳にして、リオを取り巻いていた女性達を見ると、プイと顔を背けた。

 ベンが「なんだあ、嫉妬か?」と言うと、ルーナが睨みつけた。


「おい、ルー......」

「あの、レオナルド様。どうか金獅子の団の皆様をご紹介していただけませんか?」


 リオが更に何か言おうとした時、とうとう我慢できなくなった貴族の女性の1人が声をかけてきた。彼女がファーストペンギンとなって、次々と他の女性達も傭兵__今となっては騎士となった男達を取り囲む。細身のルーナはさっと人だかりの中に消えていった。

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