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110.罠の気配(2)

 城壁の外では本隊の騎馬隊が中へ侵攻しようとしている。


 リオはふと空を見上げた。暗雲が立ち込めている。早春の冷たい風が強く吹き、体を突き刺すように感じられる。

 彼は嫌な予感を感じた。何か場の空気が変わったような違和感だ。ゆっくりと見回す。そこでハッとした。


 城塞都市の西側。山の上に何かがある。よく目をこらす。


「リオ......お前も気づいたか」

「ああ......」


 隣では副団長ヘイグも丁度リオと同じ物を見て愕然としていた。


「あれは......なんだ......」

「あれは......――大軍だ。敵の......大軍だ」


 山の上にあった何かはこちらに近づいてきて徐々にその姿を明瞭にする。無数の旗が風に翻り、鋭い槍と剣が太陽光を受けて不気味に煌めいている。大地が揺れるほどの足音が近づき、地面が微かに震えた。


「――()()()の軍だ......!」

「ば、馬鹿な! 青の都と私達の戦いに介入してきたというのか!? 奴らは関係ないだろう!?」


 ヘイグは狼狽した。彼の反応は無理もない。


 獣度の高い獣人達の国、獣公国。彼らにとってリザードマンの街青の都を救う理由がない。挙句、今はオーク達と領土争いをしていてそちらで手一杯だ。こちらの戦に介入する意味がない。


「見た限り、それ程多くの軍は用意できていないようだな。これではまともな介入にならん。どの道、奴らにはなんらメリットはない。......とにかく、新手が来たからには中の軍をすぐに呼び戻さねば」


 その時丁度、伝令が慌てた様子で走ってきた。


「――報告ッ! 城の中で一部の騎士達による反乱が起きています!」

「なんだって!?」

「壁の内側は混乱を極め、いくつかの隊が機能しなくなっています!」

「......なっ、仲間の......裏切りだと......? ......ありえん」


 リオもヘイグも耳を疑った。ただ、勘の良いリオはすぐに何か思い当たったようだった。


「反乱を起こしている騎士達は獣度の高い獣人か?」

「全員かはわかりませんが、獣度の高い獣人が多く確認されています!」


 納得した様子のリオに対し、ヘイグは徐々に近づきつつある獣公国の大軍を見ながら苛立ち混じりに言った。


「なんだリオ! 何かわかった事があるならさっさと言ってくれ!」

「......レウミア城戦で俺たちが使った手をやり返されたんだよ」

「どういうことだ! わかるように説明しろ!」

「良いかい、リザードマンの都で金獅子の団の格好をした獣人が現れたら、まさか敵だとは思わないだろう? 今、反乱を起こしている騎士達は味方じゃない。元々この城塞都市が陥落する事を想定して街に待機させていた獣公国兵だ。つまり、あの獣公国の軍はおそらく第三者の介入なんかじゃない。青の都と獣公国は手を結んだんだ。まずい、とにかく中の軍を急いで呼び戻せ! 最悪、全滅するかもしれない!」


 ――ギイイッ


 その時、重々しい音が鳴り響く。騎士達もヘイグもリオでさえも口が開いてしまう。


 城門が、閉じた。

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