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ゴーストと呼ばれた地味な令嬢は逆行して悪女となって派手に返り咲く〜クロエは振り子を二度揺らす〜  作者: あまぞらりゅう
第二章 派手に、生まれ変わります!

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68/88

68 魔法大会の結末です!

「おめでとう、クロエ」


 クロエがコートニーを破った瞬間、客席からユリウスがするりと降りてきて、一番に祝福の言葉を伝えた。


「ありがとう、ユリウス」


 クロエはにっこりと微笑む。とても晴れやかな気分だった。本当に、今日の雲ひとつない鮮やかな青い空のよう。


 逆行前は魔法が使えないせいで、コートニーから酷い仕打ちを受けていた。

 あの頃は、どれだけ魔法という存在を呪っただろうか。どれだけ魔法という形のないものに憧れただろうか。


 いつか、魔法で異母妹に勝ちたいと願っていた。

 ついに、それが叶う日がやって来て、とても嬉しい。逆行前の自分の努力は間違っていなかったのだ。


 ……これで、母の名誉も回復できただろうか。



「毒に侵されそうになったときは、どうなることかと心配したよ。君が無事で本当に良かった」


「私も驚いたわ。まさか、あんな手を使ってくるなんて……」


 レイン伯爵令息も継母たちの毒薬も、禁止されている闇魔法だった。

 こんな場でよくも堂々と使えたものだと感心さえ覚えた。継母も異母妹も、それほどに自分のことが憎いのだろう。

 彼女たちとは、きっと何度時間を巻き戻しても、絶対に分かり合えないのだと思った。


「あぁ……。しかし、お陰で大規模な闇魔法の組織を掴めそうだ。彼らの存在は帝国でも問題視されていたんだ。これで芋づる式に検挙できそうだ」


「それは良かったわ」



「――じゃあ、そろそろやりますか、クロエ様?」


「そうね」


 静止している土埃の隙間から、コートニーを見る。満身創痍の肉体は、もう戦闘不可能だろう。


「……本当に、いいんだな?」


 囁くような低い声音に驚いてクロエが振り返ると、ユリウスが真剣な面持ちで彼女を見ていた。それは、どことなく陰りを帯びているようだった。


「当然よ」と、クロエは決意するように強く言う。


「実行すれば、君の家門も深い傷を負う。そうなれば、君自身にも疑惑の目が向けられる可能性もある。聖女の地位だって――」


「覚悟の上だわ」


 ユリウスは軽く肩をすくめてから、懐から巾着袋を取り出した。

 クロエはそれを受け取る。その中には、ジェンナー公爵家の魔石がゴロゴロと入っていた。


 彼女は、彼に公爵家の魔石を手に入れて欲しいと頼んでいた。それも、スコットがコートニーのために個人的に用意したように見せかけて。


 彼は快諾して、早速仕事に取り掛かった。ジェンナー家の魔石は厳重に管理されているので少しばかり骨が折れたが、それでも帝国皇子の彼にとっては問題なく入手することができた。


 ……スコット・ジェンナーの名前で。



 クロエは魔石をコートニーの周辺に散らばせて、特に大きなものは彼女の懐の中にしのばせた。


 そして、

 コートニーの体内を流れる魔力を、完全停止させたのだ。




◆◆◆





「なんでっ、なんで魔法が使えないのようっ!!」


 コートニーは騎士の制止を振り切って何度も魔法を放った。

 何度も何度も何度も……、

 しかし、ついに彼女が魔法を発動する瞬間は訪れなかった。


(なんでっ……なんでよっ……なんで……なんっ……)


 コートニーの瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。

 歯痒くて、苛立たしくて、悔しくて悔しくて悔しくて、腹が立って、悲しくて……ぐちゃぐちゃの感情が彼女の胸を掻き乱した。


 さっきまで自由自在に魔法を発動できたのに、今では体内の魔力も枯渇したような空っぽな感覚だ。訳が分からない。


 あたしは、たしかに魔法が使えて、それどころか、他の魔導士を凌駕する天才的な才能を持っているのに……それこそ、あの女さえも敵わないような…………。



「お前っ、魔法が使えないから魔石の力で誤魔化していたな!」


 一人の騎士が、眉を吊り上げて叫ぶ。とんでもない発言に、またぞろ会場内に衝撃が走った。


「魔法が使えないのに魔法大会に出場したですって!?」


「だからあの魔石の量なのか」


「これは……前代未聞だぞっ!」


「王に対する不敬罪だ! 即刻処刑すべきだ!」


「ジェンナー公爵家もパリステラ家もお家取り潰しかもしれないわね……」


「まさか、両家で謀反を計画して!?」


 貴族たちに激しい動揺が走って、波打つように騒然となった。

 困惑の声はやがて非難の声に変化して、中心にいるジェンナー、パリステラ両家に襲いかかって来る。


 スコットは顔面蒼白でその場に凍り付いて、コートニーは今も魔法を使って異母姉を殺そうと、ぶつぶつと詠唱を繰り返す。



「静かにするように」


 しばらくして、国王の峻厳な声が響いた。

 その重々しい声に、場内はぴたりと静まり返る。その場にいる誰しも、緊張感がびりりと肌の上を走った。


「スコット・ジェンナーとコートニー・パリステラは直ちに地下牢へ投獄しろ。その他のパリステラ家の者も王宮へ連行するように。騎士たちは即刻ジェンナー家、パリステラ家の屋敷を捜査。領地に滞在中のジェンナー公爵と夫人も王都へ呼び戻せ」


「「「「「はっ!」」」」」




 こうして、国王主催の魔法大会は、後味の悪さだけを残して終了した。

 クロエの優勝は保留――彼女も魔石で不正をしていなかったか徹底的に調査を行ってから、王自らが決定を下すこととなった。


 スコットとコートニーは、貴族にとって一生縁のないような、暗くかび臭い地下牢へと収監されてしまった。

 そして全ての調査が終わるまで、パリステラ家の人間はクロエも含めて、王宮の貴族用の牢獄に軟禁されることになったのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 魔石はユリウスが用意してたのか…ユリウスがクロエの時間停止無効持ちなの忘れてたww
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