どんどんおかしな方向に
はぁ、どうしてこんなことになったの…
「ラフィール様、体調はいかがですか?」
「ロジー…もう少し1人にさせて」
「かしこまりました」
そうだ、まずはこの世界を把握しなくちゃ。
もし私がやっていたゲームの世界なら。
いや私とタケルがやっていたゲームの世界なら。
……あれ、私、勇者を殺しちゃう。
「ダメよダメダメ!!」
「どうしました、ラフィール様」
「まずいわ、私殺しちゃう」
「何をおっしゃられているのですか?」
「私、いや私達勇者を殺してしまうわ」
「はぁ、それを防ぐために我々は人間と戦っておられるのでしょう」
ロギーは呆れた顔をする。
「嘘じゃないのよ。だって私が」
「おいおい、ロギー。王女がいよいよ壊れたぞ」
「言葉を慎みなさい。ブロス」
ロギーはブロスを叱りつける。
「へいへい。でもおかしいのは事実だろう。なぁレグロ」
「そうね。王女様、どうしちゃったのよ」
「…それよりロマネはどこに言ったの?」
「ああ、あのキザ野郎か」
「ロマネなら人間の町を攻めに行ったわよ」
「何ですって!!今すぐ引き返すように言いなさい」
「何をおっしゃっているんですか」
まずい、ロマネが攻める場所は勇者の町。ロマネが勇者の町人を殺すことで勇者は力を覚醒させて…その後は私に怒りを覚えて…。
私は顔が真っ青になる。
「ラフィール様、そんなに止めたいのであればラフィール様自らお止めになられては」
「ちょっと、ロギー!!」
「出来るの?」
「もちろんですとも、あなたのテレポートならすぐにロマネに追い付けるでしょう」
「わかったわ、じゃあ早速」
確かラフィールはイメージしたところにテレポートできる能力があったはず。
私はロマネの顔をイメージする。
よし!!
「じゃあ行ってくるわね」
「お気をつけて」
「おいおい、いいのかよ。王女を行かせるなんて」
「あの王女は何か様子がおかしい。少し様子を見たいと思いましてな」
「相変わらず悪どいジジイだぜ」
「本当ね。私も後を追いかけるわ」
「気を付けろよ。レグロ」
「あの町か。あの町に勇者候補がいると聞いたが…」
ロマネは部隊を率いて町に進攻する。
「お待ちなさい、ロマネ」
「なっ!!ラフィール様」
部隊もザワザワとし始める。
「ロマネ、一旦城に戻るわよ」
「何をおっしゃります。この進攻を指示したのは他でもないラフィール様ではないですか」
「え、あ、そういえばそういう話だった気がする」
まずい、ゲームの内容をちゃんと覚えていない。
だっていつもバーっとズバッと倒してたから…
ああ、タケルどこに行ったの?
「ラフィール様、よろしいですか」
「あ、ダメよ。ダメダメ。ここから先を通りたければ私を倒しなさい」
「正気ですか、ラフィール様」
「ええ、私は本気よ」
ちょっと力を使えばロマネも退いてくれるはず。
「はぁぁぁ」
私は力を放出する。
「ぐわぁぁぁぁぁ」
すると辺り1面が焼け野原となる。
「あれ…」
「おお、ラフィール様。町が破壊されている」
「え、ええ」
「流石です、ラフィール様。私ではなく王女の力を人間共に見せつける為にこのようなことを」
「うそ、私が人間を殺しちゃったの?」
うそうそうそ、ゲームの中とはいえ人殺しを…
いや、これじゃあ勇者が目覚めちゃう。
「むっ、ラフィール様。何か強力な力がこちらに」
「えっ、ええ」
「お前らよくも僕の町を、みんなを殺したなぁぁぁぁ」
剣を持った少年がこちらに向かってくる。
「あれは勇者クラウン」
「勇者?あの小僧がですか」
「そうよ。あいつは味方を引き連れていずれ私達を滅ぼす存在になる」
「では今の内に殺しましょう」
「そ、そうね」
仕方ないわよね。勇者が生き残るためには…
「えっと、ダークネスバスター」
「うわぁぁぁぁ」
クラウンは吹き飛ばされる。
「ははっ、トドメよ」
私はクラウンに接近する。
「う、うわぁ」
「えっ!!」
「な、なんだよ」
クラウンは後退りする。
「た、タケル?」
「誰だよ。そいつは」
「間違いない、あんたタケルよね」
「僕はクラウンだ。そんなやつ知らない」
嘘でしょ。タケルそっくりじゃない。これじゃあ殺せない。
「ラフィール様。人間側の部隊が攻めてきました。1度退却を」
「あ、ああ。あんた逃げなさい」
「え、魔女が僕を逃がすのか」
「早くしろ、殺されたいのか」
「ひ、はい」
クラウンは急いで逃げていく。
「ラフィール様!!」
「あ、うん。帰りましょう」
私はロマネと部下を連れて城に戻っていく。