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97話 マシュマト王国 その3


「どうする? どうやって探そう。結構、広いよね」

「魔力でルナと通信はできますが……どうやら、遮断してますね」


 以前にミルドレアも行っていた魔力通信。レナとルナも可能であるが、現在は携帯電話の電源が切れたような状態であった。


 換金所の入り口で美少女二人は戯れている。少なくとも周りからは遊んでいるように見えたのだ。可愛らしい風景だ。


「リグド」


 ディランの突き刺すような言葉。リグドはその言葉に敏感に反応してみせた。なにが言いたいのか感じ取ったのだ。


「ああ、金髪の女はアメリア・ランドルフで間違いないね。褐色の女性は……レナ・イングウェイかな? イングウェイ姉妹は双子だからわかり辛いけど」


 博識のリグドは言葉を途切れさせることなく話した。一目で彼女たちの名前が浮かん だのだ。確かに有名な二人ではあるが、ここまで素早く思い出せる者も珍しい。


「会いたいと願ってたぜ。まさか、こんなに早く叶うなんてな」



 ディランはまるで獲物に出会えたかのような瞳になっている。レッドドラゴンと相対した時の彼の態度と酷似していたが、隣に立つニルヴァーナは、軽く溜息をついた。


「商売敵ではあるけど、敵じゃないんだよ? 勘違いすんじゃないよ」


 戦闘意欲を出していたディランにニルヴァーナは厳しく釘をさす。知り合いでもない相手に敵意を示すなどマナー違反だ。下手をすれば、ナラクノハナの評判に傷がついてしまう。ニルヴァーナはそれを懸念したわけだが、ディランもそんなことはわかっていた。


「冗談だ、冗談。俺がいきなり襲うわけないだろ?」

「ま、それはわかっているけどさ」


 ディランの言葉にニルヴァーナは頷いた。彼のことは一応は信頼しており、本気で襲い掛かるとは考えていなかった。念のため、釘をさしただけだ。


「しかし、かなり良い女だな。何歳なんだ?」

「アメリアが17歳。レナ、ルナ姉妹は19歳なはずだ」

「なるほど。ちょいと歳下だが、俺も26歳だ。良い感じだろ?」

「それを言うなら、俺は24歳だ。つまりは彼女たちとはさらに良い関係が築けそうだが」


 いつの間にか、話題は別の方向へと移っていた。ニルヴァーナは肩の力が抜けてしまう。彼ら二人はどちらがアメリア達に相応しいかを話し始めたのだ。



「見ろよ、リグド。ニルヴァーナですら、少々劣勢になるほど美しいぜ?」

「本人の前で言うのは失礼だが、確かに……」

「失礼だと思ってるなら、納得するんじゃないよ、全く……」


 ニルヴァーナは二人のバカバカしい話に呆れているようだ。ディランとリグドはある意味で、アメリアとレナの外見に一目惚れをしていたのだ。ファンになったと言うべきであろうか。


「まあ、冗談はこれくらいにしておくか」




 ディランはそこまで話し終えてから表情を戻した。真剣な顔つきに変わっている。


「本当に冗談だったのかい?」

「まあまあ、ニルヴァーナ。君も20歳だし、十分若くて綺麗じゃないか」

「このスケベ男共……」


 ニルヴァーナは少し不機嫌そうであった。20歳で十分綺麗という言葉はフォローになっていない。アメリア達の方が綺麗だと言っているようなものだからだ。おまけに年齢も負けている。


 クールな印象の彼女ではあるが、ニルヴァーナも女の子なのであった。実際にはニルヴァーナの外見は街中の男の誰もが振り返るほどだ。アイドルやモデルに十分になれる魅力を持ち合わせていると言えるだろう。



「だが、ウチのニルヴァーナは実力では、決して負けてねぇ。リグドあの二人、レベル換算ではどのくらいだ?」


 ナラクノハナの頭脳役を務めるリグドにディランは質問をした。彼の戦力分析の能力を高く評価してのことだ。通常、人間のレベルを測ることはできない。それでも尋ねたということは、彼であれば答えられると踏んだからだ。


「そうだね……!!」

「……リグド?」


 アメリアとレナの二人を注視するリグドだったが、次の瞬間には驚愕の表情を浮かべていた。質問をしたディランの表情にも変化が生まれる。


「いくつなんだ……?」

「……はは。まあ、予想はしていたけどね……」


 リグドは汗を流しながら呟いた。ディランの言葉は聞こえていないようだ。




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「なんだか見られていますわね」

「そうね、これ見よがしに見るのは遠慮してほしいんだけど」


 アメリアとレナの二人は春人たちとの連絡手段を考えている過程で、自分たちに集まる視線に感づいていた。それもそのはず、彼女たちは無意識の内に周囲からの脅威に対策を練っているのだから。


 グリモワール王国の一件が尾を引いていた。暗殺の話もあった為の警戒だ。現在の彼女たちを襲える輩などほとんど存在しないレベルになっていた。襲おうものなら、相手は両腕がへし折れるくらいの覚悟は必要だろう。



「見惚れている方が多いようです。それは光栄なことではありますが……あの方々は違うようですわね」


 レナが軽く視線を送る先……ナラクノハナのメンバーが佇んでいた。目線こそ交差はしていないが、お互いに様子を伺っている状態に変わりはない。


「へえ、男二人に女一人のグループよね。かなり強いんじゃない?」

「そうですわね……特に奥に居らっしゃる女性は……強さが測れませんわね」

「私と比べてどう?」

「それは、どうでしょうか……」


 レナは珍しく真剣な表情になり、言葉を濁していた。決して視線を合わせないまま、彼女たちはナラクノハナのメンバーの様子を伺い続けている。


「Sランク冒険者ではありませんわね。私はマシュマト王国に存在している2組のSランク冒険者は見たことがありますが……彼ら以外にまだこれ程の方々が存在していたとは」


 旅芸人として各地を回っているレナは、アルミラージとレヴァントソードとの面識はあったのだ。そんな彼女がナラクノハナの実力を認めている。ナラクノハナが既にSランクであることは確実なものとなっていた。




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「400以上だと……!?」


 まず、リグドから出た言葉がそれであった。ディランの表情はさらに引きつっている。しかし、リグドはさらに恐ろしいことを告げたのだ。


「違うよ、ディラン。レナ・イングウェイのレベルがそれだ。もう少し正確に言うと……410程度かな?」

「おいおい、あの女は召喚士だろ?」


 イングウェイ姉妹が稀代の召喚士であることはディランの耳にも入っていた。そんな彼女自身の能力がレベル410相当だ。その数値は非常に正確であった。リグドの能力の高さが伺えるものである。


 だが、驚くべきところはむしろそこではない。彼女は召喚士……強力な眷属を召喚できることを意味している。


「通常、召喚で生み出せるモンスターは本人以下だから、最大でも300台のモンスターだろうけど……それでも恐ろしいね」


 リグドはディランに付け加えるように話した。事実、レナ自身はレベル330のユニコーンを生み出すのが精一杯だ。ほぼ互角の実力を持つ、鉄巨人の召喚はさすがにできない。リグドの戦力分析はここも的中したことになる。


「ははっ、さっきの発言は撤回しないとな。俺が相応しいなんざ、出過ぎたぜ……」

「ディラン、君もレベル350相当はあるだろう。そう悲観することではないさ」



 レッドドラゴン戦を思い出しながら、リグドは正確にディランのレベルを読み取った。以前から感じていたことではあるが、彼のレベルも恐ろしいクラスに突入しているのだ。完全にSランクの領域であった。


「やめろよ、リグド。それで? お前が驚いたのは、むしろアメリアの方なんだろ?」


 ディランは自分へのフォローはいらないといった顔つきであった。そして気付いている、リグドが驚きの表情を見せた本当の相手を。リグドも静かに頷いてみせた。


「バレていたか。アメリア・ランドルフは……おそらく、レベル600相当だな」

「はっ、なんだそりゃ? 鉄巨人すら単独で余裕レベルじゃねぇかよ。前に話した、アーカーシャに現れた鉄巨人はあの女が単独で倒したんじゃねぇか? 協力して倒したんじゃないかって言葉は恥ずかし過ぎるな……」


 ディランは前言撤回したい気持ちに駆られていた。レッドドラゴンを倒せば並べるなどと……彼自身の言葉ではないが、彼も本気で考えていたのだ。しかし、それは淡い夢でしかなかった。真に驚きことはレベル350相当の彼の自信を打ち砕いたアメリアとレナの実力ではあるが……。


 だが、彼らには揺るぎないことが1つだけあった。そのことについては、リグドだけでなく自信を打ち砕かれたディランですら変わっていない。ナラクノハナに於いて絶対の自信……おそらく、彼らの中でそれ以上に信じられるものはないと言っても過言ではない。


 彼ら二人は静かにニルヴァーナの方向を見つめていた。


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