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53話 鉄巨人 その1


 亡霊剣士とバジリスクの群れ……その数はおよそ20体。レベルは41と44を誇る亡霊剣士とバジリスクであり、オルランド遺跡の6階層……そういった、大群に襲われても文句の言えない高難易度の場所となっている。


 だが、この二人にとっては体力が削られる相手ですら、もはやなくなっていた。


「はああああ!」


 春人は亡霊剣士とバジリスクを、なんと剣を使わず打撃のみで粉々に粉砕していた。念のため、最小限の消耗で倒そうという彼なりの配慮である。


 そして、後方では炎の球が無数に飛び交い、アメリアが亡霊剣士たちを排除していた。春人は素手でモンスターを殴り殺し、アメリアは基本的な炎を魔法で焼き尽くしている。

 各個撃破……コンビなのに協力していないというのは、まさに彼らからしてみれば日常茶飯事の行為だ。もちろん、試しに協力をして倒したこともあるのが、もはや一瞬……遊びにすらならずに相手は消滅した……それから、さらに協力することを控えている二人だった。


「春人ってホントに強いわね。私も楽が出来ていいけど……サキアのレベルが異常なのも頷けるわね」


 アメリアは亡霊剣士とバジリスクの群れの全滅を確認してから、春人に言った。高価な結晶石を目の色を変えて拾っている。


「アメリアは、私のレベルがどの程度かは……わかっているのですか?」


 亡霊剣士たちとのバトルの中、一度として攻撃を喰らわなかった春人。彼女の出番は全くなく、主人の役に立てない悔しさを春人に抱き着くことで解消しつつ質問をした。アメリアとしても3日前のギルドでのイザコザを思い出し、顔が引きつっている。


「……そりゃあ、多少は。まあ、春人の場合は才能が全部出てないからさらに上がるだろうけど」

「はい、私の現在のレベルは200です。マスターのレベル……現段階で400という換算になります」


 サキアからのカミングアウト。既に春人の実力は400レベルに達していたのだ。ゴイシュが、サキアのレベルを見て絶望するのも頷ける数値と言えるだろう。春人としても初めて聞いた数値に驚きを隠せないでいた。


「俺のレベル換算は……400?」

「はい、ただし現段階でということです。今後、さらに加速度的に上がる可能性は高いかと」

「ま、春人の才能はまだまだ底が見えないしね」


 春人の驚愕の表情……アメリアも驚いてはいるだろうが、表面上はそこまでの驚きを見せてはいない。しかし、春人としてはこれ以上ないほどの驚きだ。


伝説のモンスターである鉄巨人と今の時点で並んでいる……これがどういうことなのか、基本的に自信のない春人にとってもすぐに理解した。





「春人は色んな意味で規格外よ。その辺りちゃんと理解するように」

「う、うん……肝に銘じておくよ」

「よろしい。よかったじゃない? アーカーシャの女の子選び放題よ?」


 アメリアはいたずら染みた笑いを浮かべながら春人に問いかけた。春人も何時ものことながら、顔を紅潮させてしまう。



「別にそれは……アメリアが相手なら考えるけど」

「なななっ! 何言って……!」


 春人の仕返しというわけではないが、いつもからかわれている彼女に対してのお見舞いの言葉。意外にもアメリアは表情を崩して視線を逸らした。


「ま、まあ……ペアリングもした仲だし、春人がどうしてもっていうなら……」

「え? アメリア……?」


 とても冗談には見えないアメリアの態度。それどころか、意外とその気になっている。不味いと感じた春人はすぐに話題を切り替える。


「そ、それより! 先に進もうか! いよいよ最深部攻略だし!」

「ちょっ! いきなり話変えないでよ! ずるいっ!」


 アメリアは春人に恨みがましく文句を言いながら、春人の背中を殴打する。春人はこれ以上は恥ずかしさで耐えられなくなりそうだったため、強引に先を急いだ。

その後もアメリアの顔を赤くした状態の殴打は続いたが、バカップルにしか見えない状況だ。この状態をサキアはとても不満そうに感じていたという……。



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「……これが、ジラークさんが見せてくれた壁画ね」

「そうみたいだね」


 それから、二人は8階層の壁画の所まですぐに到達した。その間もマッドゴーレムや、ポイズンリザードなどを含め、複数のモンスターとの戦闘になったが、全く体力は削られていない。

二人としては、壁画の間は未攻略の地になっていたが、その場所に余裕を持って到着したのだ。壁画を改めて見上げると、壁画の中央には人間サイズの獣耳の少女が二人配置されていた。そして、その両脇には狼のようなモンスターが2体描かれている。


「その周囲にサイクロプスと鉄巨人……あとは死神……」

「うん、中央のモンスターが指揮官ってところかしら」


 壁画の位置から考えてもそれは明白であった。親衛隊の中でも序列は存在するのだろう。伝説のモンスター鉄巨人も親衛隊の中では埋もれてしまうのかもしれない。この壁画はそんな事実を告げているように見えた。



「どうする、春人? この先に進む? 臆病風に吹かれてない?」


 アメリアは春人を試すようにそう言った。この壁画を見て、春人に先を進む勇気があるかを問いただしているのだ。


「アメリアだってわかってるだろ? 真実はこの壁画の通りなのかもしれない。でも、俺だって冒険者だ、真実を確かめずに引き返すなんてありえないよ」

「うん、よく言えました。じゃあ、行きましょ!」


 アメリアは上機嫌に春人の手を掴んで先の道へと進んだ。影の姿のサキアもその後についていく。

 この3日でジラーク達とレナ達もそれぞれの探索に出向いていた。「シンドローム」のメンバーも同じだ。そして……春人達も現在、オルランド遺跡の最深部を目と鼻の先にしている。

運命が大きく動き出そうとしていた……オルランド遺跡の奇妙な気配はより、増大していたのだ。


「来たわね……」

「パイロヒドラか……」


 レベル240のパイロヒドラ……一際、大きな空間に辿りついた二人はそこで、複数体のパイロヒドラを見ることになった。そして……そんなモンスターの中央に座するは……。


「鉄巨人……」

「予想通りといったところかしら? 春人、さすがに今回ばかりは本気で行くわよ」


 中央に座する最深部のボス、鉄巨人。春人達の数倍はあろうかと言う体高に加え、赤い甲冑に覆われた騎士だ。右手には人間以上のサイズの大刀を携えている。レベル400の伝説のモンスターがそこには居たのだ。さらに、それを護衛するかのように5体のパイロヒドラも存在していた。

 今までの中で、最も強力なモンスターとの戦いが始まろうとしていた。



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 そして、時を同じくして地上にて……

 アーカーシャの街に進撃する巨大な影の一体……既にアーカーシャはその存在を認知していた。だが……


「悟! まずいわ! とにかく、街の人を中央会議場に集めて!」

「は、はい!」


 「フェアリーブースト」のメンバーを中心に、アーカーシャの街の人々は安全な場所へと扇動がなされていた。とにかく、パニックを起こさないように、テロス丘陵近くの住人はアーカーシャの中央付近に存在する円卓会議の場、中央会議場に集結させた。


「おいおい、どうなってんだよ……! なんでこんなことに……!」

「悟! 外のことは「センチネル」に任せるんだ! 俺たちが今できることは街の人々の誘導だろ?」

「わ、わかってます!」


 「フェアリーブースト」では、街の外には行っても意味はない。悟はそれが悔しくもあったが、今は上位の者に任せるしかなかった。




「イオ……」

「大丈夫、アルマーク……ずっと一緒だよ。例え、死ぬ瞬間でも……」

「うん、最後の瞬間まで……信じるさ」


 アルマークとイオ、二人の専属員は懸命に目の前の怪物を見据えていた。彼らの周囲には、レナ達が呼び出したゴブリンロード30体の姿もある。Sランク冒険者が不在のアーカーシャだが、彼らは任務を忠実に遂行する為にこの場に居るのだ。

 だが、敵となるモンスターの戦力は圧倒的に高い……赤い甲冑の鉄巨人がそこには居たのだ。


 目の前のモンスター、伝説の鉄巨人を見据えても、アルマークとイオの瞳の色は変わらなかった。春人達のところの鉄巨人とは別に、地上に降臨した怪物は街を蹂躙せんとその大刀を振りかざしていた。


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