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43話 アメリアとのデート その1


「いて~~! 歳よりになんてことすんねん! これやから若い者は……」


 吹き飛ばされたクライブは顔を抑えながら立ち上がった。まだまだ元気そうで安心する春人。口では春人を責めているクライブだが、その表情は晴れやかだった。


「ここまでか……まあ、殺し合いでも結果は変わらんやろ」

「殺し合いって……」

「しかし、お前も大概、ミルドレアみたいな性格しとるかもな」


 クライブは春人の表情を伺いながらそう言った。「興が削がれた」と春人が思っているように感じたのか。


「俺はあの人の性格は良く知りませんけど……一緒にしないでほしいです。俺は戦闘狂じゃないし」

「いやいや、同じやで? 戦力的に強すぎる才能を持ってるっていう意味では同じや」


 クライブは春人の不満そうな発言をすぐに否定した。圧倒的な才能の持ち主……両者に敗北した経験のあるクライブからすれば、果たして二人が戦えばどうなるのか。非常に楽しみなところではあった。お互いに本気を出していないのも共通している。


「春人、お疲れ様。やっぱ、あんたって格好いいわよ? そろそろ格好つけてもいいんじゃない?」

「あ、ありがとう……ははっ」


 アメリアの言葉は春人がもっと自信を表に出して、服装なども完璧にすればいいという意味合いが含まれている。春人としては、ファッションに手を出すのは勇気のいる行為だ。高校時代の嫌な思い出などもあるからだ。


「凄すぎ……春人さん、やばいって! わ、私もアルマークがね……いなかったら……ほら、ね……うん……」

「……うん?」


 イオも春人に賞賛の言葉を送るが、最後の方のセリフが聞き取れない春人だった。


「春人さん! お疲れ様です!」

「ありがとう、アルマーク。少しは先輩らしかったかな?」

「はい! もうびっくりし過ぎて、今日は寝られそうにありません!」


 冒険者の年月的には春人の方が後輩ではあるが、自分を尊敬してくれるアルマークに良いところを見せられて、春人としても嬉しさが込み上げていた。


「春人さん、すごいのね。ボスをあっさり倒すなんて……」


 ルクレツィアも春人の前には来ていないが、彼を遠目から賞賛していた。


「ありえない……こんなことが……!」



 彼ら二人の戦いを観察していたリガイン以下、クライブの部下たちは目の前の光景を信じられないでいた。


 肉弾戦で「超人」クライブがあっさりとやられた。これが一体どういうことなのか、春人はまだ知らない。リガインはアメリアにやられた時のことを思い出す。彼女でもここまで簡単にボスであるクライブを倒すことはできないだろう……そのような確信が渦巻いていた。



「ところでさ、あんたってミルドレアと戦ったことあるの?」


 突如、繰り出されたアメリアからの質問。彼女としても、クライブとミルドレアに接点があったことは興味深かった。


「まあな……春人と同じように勝負したんやが、やられてもうたわ」

「やっぱり、あの男って相当に強いのね」

「ああ、本気すら出してないわ。あの男の真の攻撃パターンは誰も見れてないのが現状や。それを繰り出す間も無く、勝負は決するみたいやからな。それは隠しエリアのモンスターを相手にしても同じらしいぞ」


 戦闘を生業にする者ならば、一度は言ってみたいセリフだ。自らが最も得意とする攻撃スタイルを見せる必要がない……これが一体どれほどのことなのかは、春人にも想像がついた。鉄の剣といった貧弱装備でグリーンドラゴンに挑むのと、ある意味では似ている。


「ま、今度会ったら適当に言っておいてくれや。あいつは遺跡の隠しエリアを開放してるんやろ。残りはオルランド遺跡、アクアエルス遺跡、回廊遺跡の3つらしいぞ」


 それ以外の遺跡は全て探索を終えたと言うことだろう。クライブの情報網は相当とも言える。

 アクアエルス遺跡は最深部までの調査は完了しているが、オルランド遺跡と回廊遺跡はまだ最深部までは到達していない。まずは、最深部への到達を目指すことになるだろう。


「でも、ミルドレアとは個人的には対立してないよね? 積極的に、邪魔をする大義名分がないような気がするけど」

「そうなのよね……」


 冒険者ではないミルドレアであるが、やっていることは隠しエリアのモンスター討伐と宝の奪取だ。開放した扉をわざわざ報告しているので、性質も悪くない。

 冒険者も好き勝手に遺跡を探索して、周辺にモンスターを散らばらせていることを考えると、彼の行為自体を咎めるのは難しかった。


「オマケに白髪の紳士とか言われてるし。男って顔だけじゃないと思うけどね」

「アメリアもミルドレアは二枚目だと思う?」

「なに、春人? 妬いてる?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」


 アメリアにいたずらっぽく指摘された春人は顔を赤くしながらそっぽ向いてしまった。春人としては意識をしたわけではないが、アメリアが二枚目に弱いのは嫌だという感情は持っていた。その感情は、自らの外見は大したことないと確信しているゆえの反動なのかもしれない。


「なによ~? 春人って結構、独占欲強くない?」

「べ、別に妬いてるとかそんなんじゃ……!」

「はいはい」


 アメリアは上機嫌で春人の腕に絡みついた。ますます彼は顔を赤くする。周囲はそんな光景に頭を抱えていた。「見せつけるな」という意志表示なのだろう。


「俺と戦った直後やのに随分余裕やな……なんか阿呆らしくなってきたわ。ほんなら、依頼の件はまた今度話そうか」

「ええ、そうしてくれる?」


 クライブは苦笑いをしながら承諾した。そして、軽く手を振りながら、春人の前から立ち去った。彼の部下もその後に続くように去って行く。


「それでは春人さん。私も行きますけど、先ほどの試合はとても興奮しました。よろしければ、また来てくださいね?」


 ルクレツィアはそう言って引き返そうとする。しかし、春人は支払いをしていないことに気付いた。


「待ってください。お支払いをしないと」

「あら、春人さんならいくらでもツケがききますよ?」

「そういうわけにはいきませんよ。いくらです?」

「ふふ、真面目なんですね。お酒とおつまみ、VIPルーム使用料、あとは追加料金込みで8万ゴールドです」


 ルクレツィアは明細を見せながら話した。彼女を信じている春人としては、それがぼったくりとは考えていないが、普通に考えればかなりの金額だ。円に換算すると100万円ほどにもなるのだから。


「じゃあ、これで」

「毎度ありがとうございます。ふふ、こんな金額をすぐに出せる春人さんには驚きしかありません」


 彼女は春人から、ネバータ金貨を受け取り、おつりを返却した。こんな芸当はSランク冒険者でもなければ、簡単にはできないだろう。ルクレツィアの中で春人の評価が上がった瞬間だった。


「それでは」

「はい、ありがとうございました」


 深々と頭を下げて、ルクレツィアはお店へと戻って行った。彼女は春人の中で、レナやルナ、アメリア達と比較しても全くひけを取らない美人として確立されつつあった。むしろ、ルクレツィアと比較できる、春人の周りが異常とも言えるが。


「いつまで見惚れてんのよ、春人」

「いや、でも美人だろ?」

「まあ、それはわかるけど……ちょっと悔しい」


 アメリアも彼女の美しさには嫉妬しているようだ。さすがは1つの店の頂点に立つ人物である。残ったメドゥも相当に人気はあるが、まだルクレツィアには及んでいない。


「くら~~い~ぶ~をた~お~す~の~は~凄い~~」

「あ、ありがとう……」


 一人残ったメドゥからも春人は褒められた。バニーガール姿の美しい少女から言われるのは悪い気はしない。照れている春人に、アメリアはすかさず肘打ちを喰らわせる。そういったアメリアの行為も楽しみながら、すぐに春人は正気に戻った。


「と、とりあえず、君も戻った方がよくないか? 仕事中だろ?」

「う~~ん~~もどる~~」


 そして、春人に指摘されたメドゥはそこに残っている者達に挨拶をして店の方へと歩いて行った。


「でも~~くらい~~ぶ~を~倒した~~くらいで~~いい気に~~ならない~~方が~~いいかも~~」


 メドゥは皆には聞こえない位置で、静かに声を漏らしていた。自らの、そして「シンドローム」のメンバーとしての圧倒的な自信の裏返しとも言えるのかもしれない。彼女はそのまま振り返ることなく店へと帰って行った。


「はあ……メドゥさん」

「アルマーク、なにデレデレしてるの!? バカ!」


 イオからの直接的な嫉妬の炎がアルマークを襲った。彼は耳をこれでもかと言わんばかりに引っ張られ、とても痛そうな表情で彼女に謝っている。しかし、イオの怒りは収まらないようだ。


「大変だな、あの二人……アルマークは尻に敷かれそうだ」

「何、他人事みたいに言ってるのよ」


 同じく耳をつねられる春人。アルマークのそれと比較すれば、痛みはないが。


「アメリア……」

「ちょっとこれから付き合ってよ。いいでしょ?」

「え? いいけど……」


 春人は先ほどのこともあってか、断りにくい状況であると察知した。それに、特に断る理由もない。彼女の頼みを、特に深く考えることもなく引き受けた春人であった。


「あ、春人さん。それじゃあ、僕たちも失礼しますね。今日は色々とありがとうございました!」



 アルマークの混ざり気のない気持ちの良い挨拶。春人も恐縮しながらも、その挨拶に答えた。


「ああ、それじゃあここで解散しようか。あ、そうだ。二人とも、ゴイシュの寄宿舎に行く時は気を付けてね。万が一もあるかもだし」

「大丈夫だよ、春人さん! 私とアルマークが、あんな奴に負けるはずないじゃん!」


 スパッツに白いシャツという、ボーイッシュなイオが身体を前に突き出しながら答えた。均整の取れたスタイルを強調しているようにも見える。

 それだけに、春人は心配していた。二人の仲を引き裂くことで優越感に浸ろうとする輩を。ゴイシュなどはその典型だろう。彼らがゴイシュ達に、負けるはずがないのはわかっているが、やはり万が一ということがある。


「んじゃ、これ持って行きなさい。このボタンを押したら、私達にだけブザーでピンチを知らせるから」


 アメリアはそう言って、アルマークとイオに小さな警報機をプレゼントした。見た目はただのアクセサリーにしか見えない。ペアのアクセサリーと考えれば、全く不自然はない代物だ。


「いいんですか? ありがとうございます!」

「へへ~~! アメリアさんからのプレゼント~~!」


 アルマークとイオ共に、喜んでそのアクセサリーを首に掛けた。アルマークは既に付けている金の首飾りと重なるようになっている。二人とも自然かつ、よく似合っていた。


「それじゃあ、僕たちは行きますね! 春人さん、アメリアさん、また今度お会いしましょう!」

「またね~~!」


 そういいながら、明朗快活な二人は走り出して行った。いつの間にか、仲の良い二人に戻っているようで、春人も安心した。ゴイシュの寄宿舎への訪問は後日になるので、二人でデートでもするのかもしれない。春人がそんなことを考えていると……彼の左腕にアメリアの腕が絡みついた。


「それじゃ、私達はデートでもしましょ? いいわよね、は・る・とっ」

「……え?」


 春人の腕を逃がさない意味も込めて強く捕まえたアメリアは、春人に向けてとても可愛らしく笑っていた。


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