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39話 マニアックなお店 その3


「シンドロームの……なんでここに?」

「趣味~可愛い、衣装が~~好きだから~~~」


 相変わらずの語尾でメドゥは春人にVサインで答えた。春人としても、初めて話した相手ではあるが、独特の雰囲気に意外にも普通に話せていた。


「あ、そういえば、シンドロームのメンバーに居たような……」


 メドゥの隣に座るアルマークも思い出したように話し出した。メドゥは春人とアルマークの態度が楽しいのか上機嫌になっている。


「で~~も~~きょうは~~二人に手籠めに~~されて~しまう~~」

VIPルームに響くメドゥの心無い発言。春人は必死に言い訳をするように否定した。


「いやいや! 君が嫌なことをわざわざしないし!」

「じょうだん~~、それに~おかねもらってるから~~~平気~~」


 春人の態度は予想通りだったのか、メドゥは無表情でそう言った。からかわれた形になり、春人はうつむいてしまう。


「ふふ、高宮さんは、こういうお店は初めてですか?」

「え? い、いやそんなことないですよ?」


 春人はルクレツィアに対して強がって見せる。もちろん、単独で来ていたら強がる必要はないが。ルクレツィアは大人の余裕なのかくすくすと笑い出した。


「高宮さんも大変ですね。私も昔、同じようなことはありましたので、お気持ちはわかります」

「あ、あははは……」


 ルクレツィアには一発でバレていた。彼の態度から女性経験がないことも見抜いている可能性は高い。そもそも、春人が経験豊富な彼女を欺けるはずはないが、ルクレツィアはアルマークの手前それ以上突っ込むことはなかった。


「とりあえず、飲みましょうか?」

「は、はい。そうしてくれると助かります」


 ルクレツィアの気遣いとリードに春人は感謝しながら、彼女が開ける高そうな酒に手をつける。それなりの金額はする物だが、春人が出せないわけはなかった。


「さすがにおしいしいですね……バーモンドさんの所も良いですけど。これって1本いくらですか?」

「2万ゴールドですわ」

「ま、まあそれくらいなら」


 日本円で24万円程のお酒。高校生の春人からすれば、目玉が飛び出るほどの価格ではあるが、今の春人は金銭感覚がマヒしているのかそこまでの驚きはない。。隣ではアルマークも同じ酒を飲んでいるので、これだけで48万円が飛んでいる。



「冒険者やってると、金銭感覚がおかしくなってまして……」

「どのくらいお稼ぎになるんですか?」


 ルクレツィアとしてもSランク冒険者の稼ぎというのは興味があったのか、かなりの喰いつきであった。春人としても金額を言うのはどうかと思ったが、VIPルームであることも考え、正直に述べる。


「最低で1回3万くらいかと……最高は1回100万超えもあります」

「まあ……! まさに一攫千金ですね。高宮さんからしてみれば、2万ゴールドは本当に少ない額なんですね。安心しました、こういうお店に嵌って破産する方もいますので」


 ルクレツィアの経験上、破産をした客は何人も見てきた印象だ。相手が春人達で良かったといったところだろうか。


春人の稼ぎはオルランド遺跡の8階層を攻略するようになって飛躍的に上がったと言える。8階層での稼ぎはとてつもなく、それほどに良質な結晶石や宝石の類が取れることを意味する。


 もちろんレベル100超えのモンスターとの連戦になるので、それが可能な者は非常に限られてしまうが。しかし、その分1日で100万以上の稼ぎも容易になりつつあるのだった。


「まあ、なんとかなるのは事実ですけど」

「そういう謙虚なところは、女性であれば放っておかないでしょうね」


 ルクレツィアは、また春人の太ももを怪しくなぞりながら、顔を近づけてきた。春人としては、こういった行為は非常に嬉しいが、恥ずかしさもそれと同じくらい出てしまう。


「高宮さん? お好きに触っていただいて結構ですよ? 5000ゴールドもいただいて何もされないのでは、プライドが傷つきます」

「あ、そ、そういうことなら……」


 ルクレツィアの妖艶な誘いに応えるかのように、春人は彼女の脚に腕を這わせる。彼女は演技なのか本当なのか、彼の行為に喘いでみせた。


「高宮さんはお上手ですね……」

「いや、あの……すみません……」


 生来の臆病さが前面に出てきている為、それ以上の攻めをできないでいる春人。それとは逆にアルマークは好奇心旺盛な性格が表に出ていた。


「し、失礼します!」

「ん~~……結構、はげしいいいいい~~!」


 アルマークは丁寧に断りを入れながらも、メドゥの大きな胸に興奮したのか、両腕で鷲掴みにしていた。メドゥもそれなりに声を漏らしている。


「アルマーク……やるな……」

「高宮さん? 負けてられませんね、先輩としては」

「え?」


 ルクレツィアは春人の心情を察したのか、春人に対してディープキスを試みた。気持ちのいい唇が彼を襲い、天国へと向かわせた。アルマークの行為に対抗しなければ、春人の面目が保たれないかもしれないとの配慮である。


しかし、このルクレツィアの行為はある意味で裏目に出る。春人が理性を失いつつあったのだ。酒の力もあるが、ルクレツィアを相当に攻めていく春人。意外にも男らしい攻勢に彼女も少しだけ乙女になってしまっていた。


「た、高宮さん……! そこは!」


 そんないやらしい言葉がVIPルームに響いたそうな。




「春人さんにこんなにされて……もうお嫁にいけませんわ……」


 冗談交じりだが、一通りの行為が終了した時点でルクレツィアは言った。春人は流れに任せてしまったことを後悔している。


「す、すみませんでした」

「いえ、お気になさらないでください」


 ルクレツィアはいつの間にか春人を名前で呼んでいる。それだけ春人の行為が予想外だったことの証だ。彼女としては嬉しくはあったが、春人の性格からは考えづらいほど攻めてきたので、少し驚いているといった印象なのだろう。



 アルマークはというと、その好奇心からメドゥと楽しくじゃれ合っていた。春人がついついルクレツィアを攻めていた時はしっかりと覗きながら。


「やっぱり春人さんは凄いです。あんな大胆なこと僕にはできません」

「え? あはははは、ま、まあね」


 アルマークの勘違いではあるが、春人の行為そのものは彼が赤面するほど激しいものだった。もちろんそれを言葉に出すのは憚られるので、具体的な行為の内容はアルマークも口にしないが。春人の面目は保たれたと言えるだろう。


「面目保たれましたね。ここの支払いも春人さんなのでしょう?」

「そうですね。まあ、よかったのかな? 大丈夫、バレはしないはず……」


 彼も口にするのは恥ずかしくなる行為……アメリア達の姿が思い浮かんだ。しかし、バーモンドも上手く話すと言っていたので、彼はバレるということを考えていなかった。実際、アメリアとイオが近づいているとは夢にも思わないだろう。


「見つかるとまずいお相手がいらっしゃいますの? 春人さんはいけないお人ですね」


 ルクレツィアは今までの経験からか、春人の内面を見透かすかのような口調で話した。春人としては、これ以上話すのは墓穴を掘ると考え敢えて受け流す。そして、話題をメドゥのことへと切り替える。


「メドゥはここに居るのは趣味と言ったけど……冒険者の活動はいいのか?」


 春人は無理やり切り替えたが、言葉の意味がおかしいことに気付く。自分やアルマークも同じように活動してないからだ。春人は説得力がないことに気付いたが、遅かった。


「君たちもおなじ~~だよ~~」


 メドゥはスローテンポながら、適格な回答をした。春人はなにも言い返せず、アルマークは彼女に膝枕をされており、聞いていない様子だった。


「まあ、確かに……それを言われると痛いけど」

「そ~れ~に、わ~た~し~たちは~、アクアエルス遺跡を~~踏破した~~」

「えっ? アクアエルス遺跡を? 本当に?」


 春人は思わず乗り出して聞き返す。メドゥも頷いており、どうやら嘘と言うわけではないようだ。アクアエルス遺跡は「ブラッドインパルス」が攻略していた遺跡である。それを先に「シンドローム」が最深部攻略を成功させたということになる。


「今、しんせいずみ~~。最深部のボスは~~レベル、137のイビルビーストだった~~4体出てきた~~」

「レベル137のモンスターも倒せるほどか……」

「う~ん~。これでSランク冒険者は確実~~」


 ブラッドインパルスとしては先を越されたことは悔しいだろう。しかし、レベル137のモンスターを倒せる実力は見事と言わざるを得ない。今回の功績でSランクは確実だろうと春人も考えた。


「隠しエリアが最後のところに~~あるっぽい~~。そこを攻略して完了~~」


 アクアエルス遺跡の隠し扉……以前、アメリアから聞いた話ではアクアエルス遺跡にも隠し扉はあるということだった。


「レベル137……そんな化け物を倒せるなんて、メドゥさんすごいです!」

「ありがと~~~」


 賞賛の言葉を送るアルマークに、メドゥはお礼のつもりなのか、膝枕状態で耳かきを開始した。彼女の膝で寝ているアルマークはとんでもないほどに、感激している。


 そんな二人を見ていると、春人は緊張が解けていくのを感じた。少し、構え過ぎたかもしれない。アルマークは初めてなのにも関わらず、驚くほど自然体だ。


「ささ、春人さん? 飲みましょうか」

「あ、はい。いただきます」


 緊張の解れた春人は、すこし気分が高揚し始め、3本目4本目の酒も開けることになった。楽しい一時、彼は初めての経験を相当に楽しむことになった


 だが……そう上手く行かないのは世の常でもあるのだ。



「ここだよね、アメリアさん」

「ええ、目撃情報から、春人達が、「ドルトリン」に居るのは間違いないわ」

「バニーガールのお店か……アルマークは何してるのかな?」

「さあ? 男なら、とても健全なことをしてるんじゃない?」

「へ、へえ……なるほど、なるほど……」


 とても笑顔ながら、周囲の人を寄せ付けない二人の少女が「ドルトリン」の前に存在していた。周りを歩く人々はおそろしい雰囲気に足早で通り過ぎていく。春人たちの運命は……ここまでかもしれない……。


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