123話 ラブピースとの決着 その5
「フェアリーブースト? なんでこんなところに……」
リッカは戦いに集中していた為、彼らの接近に気付いていなかった。それはカイエルとアンバートの二人も同じだ。
「おいおい、以前に逃げたフェアリーブーストじゃないか! ネオトレジャーの二人を生贄にして逃げられたというのに……また戻って来るとはな!」
「アンバートの言う通りだ。わざわざ、死にに来るとはな」
「えっ、意味が分からないんだけど……」
リッカは意味が分かっていない。確かにナーベルとミーティアは彼らを助けたという事実はあるが、生贄にしたというのは間違いだ。その辺りは敵の発言なので、リッカも本気にはしていない。
「俺達ではとても戦える相手ではないが……煙幕を張れるからな。少しは役に立てるかと思う」
「あっそ、なら、相手に気付かれる前にさっさとしてくれない?」
「お前……俺達が助けてやろうってのに……!」
ヘルグへの言葉遣いで悟は怒っているようだった。しかし、現状はそんなことを言っている状況ではない。
「早くして!」
悟の憎まれ口は普段であれば冷静に対処するところだが、今は反論などしている状況ではない。一歩間違えれば、フェアリーブーストの面子が死ぬかもしれないのだ。リッカはその辺りも懸念していた。彼らのレベルはカイエルとアンバートにはるかに及ばないのだから。リッカであれば闘気によるガードで防げたとしても、彼ははとても無理だ。
「行くぞ!」
「ぬっ!?」
「しまった……この状況は……! マズイ……!」
フェアリーブーストが現れたことによる一瞬の隙と言えるだろうか。ヘルグが出した煙幕は二人を慌てさせた。単独では勝ち目のないリッカがいるからの反応と言えるだろう。フェアリーブーストだけならば、こんな煙幕などどうと言うことはないはずだからだ。
「今がチャンス!」
リッカは戸惑ったカイエルとアンバートの反応を見逃さなかった。まずは一人に集中するとばかりに、アンバートを集中攻撃する。
「ぬう……! マズイ……!」
「てやあああああ!」
「がはっ!」
リッカの髪の刃による一撃はアンバートの腹を貫通した。致命傷というほどではないが、重傷を与えたのは間違いない。アンバートはその場に倒れ伏し、その後、動かなくなった。
「アンバート! 大丈夫か!?」
「自分の心配をした方がいいんじゃない?」
「く、くそう……!」
1対1ならば負ける相手ではない……その事実をこの煙幕の間で感じ取り、リッカは一人の攻撃に集中することにしたのだ。それは見事に成功し、残りはカイエルのみとなった。アンバートは死んだわけではないが、最早、戦うことは出来ないはずだ。
「助かったわ。とりあえず、すぐにこの場から離れてくれる? 人質とかになったら困るし」
「はあ? なに言ってんだよ、残りは一人だろ?」
リッカの言葉に反論したのは周りが見えていない悟だった。リッカは軽く溜息を吐く。
「あんたらを守りながら戦うのが難しいのよ! 言う通りにして!」
「おい、悟。離れるぞ」
「わ、わかりました……くそっ」
悟はヘルグに促され、不満気にしながらもその場から離れた。
「はあ、やっと行ってくれたわ。でさ、あんた……覚悟は出来ているわよね?」
「貴様……アンバートをよくも! 許さん!」
「こっちのセリフよ、この悪党!」
リッカは本気でキレている。自分の仲間が危険に晒されたのだから当然だ。アンバートへの攻撃も本来なら殺しても問題なかった。偶然、致命傷を逃れたに過ぎない。そして、二人の攻防はしばらく続き、カイエルの敗北に終わった。
「がふ……こんな……!」
カイエルも致命傷ではないが、重傷でその場に倒れ伏した。アンバートと違い意識はあるようだが、もうどうしようもないだろう。リッカは勝ちを確信する。他の雑魚達は洞窟内に逃げて行ったが、今は無視することになった。
「……」
それは何故か……同じ洞窟内から強力な闘気が流れ込んで来たからだ。そして現れたのは……アインザーだった。
「まさか、アンバートとカイエルがやられるとは。娘、君は警戒に値するね」
「うっ!?」
アインザーより繰り出されるは、リッカと同系統の髪の刃。しかし、その速度は予想以上に速く……リッカはとても避けることが出来なかった。




