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121話 ラブピースとの決着 その3


「くっ! グリーンドラゴンが5体も森から出て来るとは……こんなことが」


「カイエルさん! どうもグリーンドラゴンは何かから逃げて来たようです!」


「はあ、何を言っているんだ?」



 カイエルは部下からの報告に溜息を吐いた。レベル110のグリーンドラゴンが5体も賢者の森から逃げて来るわけがない。しかし……。


「確かに、何か焦っているようだな……」


「そうでしょう? グリーンドラゴンからしたら、あり得ない態度です」


「……」


「グルルルル……!」



 真相は分からないでいたが、脅えているグリーンドラゴンがどうかなど、この際、どうでも良かった。カイエル、アンバートからすれば排除することに変わりはないのだから。


「アンバート……この5体、どうする? 勝てるかい?」


「同数以上がいる時点で無理だな。1対1でも勝てない相手だ、レベル的にはな。奇跡的に倒せたとしても相手は5体……どうにもならん」


「アンバートの意見は正しい」



 カイエルもアンバートもグリーンドラゴンが5体の時点で戦意を喪失していた。彼らの場合は死の恐怖よりも、仕事を果たせなくなることの方が重要にはなっているが。逆に言えば、二人を犠牲にしてでも捕らえた者達を安全圏に送り出せればそれは組織としては成功と言える。しかし……。


「グリーンドラゴンが1体だけならば、俺達のコンビで倒せたかもしれないが……これは……」



 グリーンドラゴンに人質など通用するわけがない。洞窟内の者達も含めて全滅する未来が、二人には見えていた。カイエル、アンバートのそれぞれのレベルは70程度だ。グリーンドラゴンと比べてかなり低かった。


「くそっ! アインザー様さえ、居てくれたら……!」


「ラブピースは幾つもの組織の1つでしかない。トップのアインザー様に期待するのは無理だよ」



 アインザー・モグレフはレヴィンが誇る三天衆の一人だ。レヴィンが最も信頼する者達の一人ということになる。必然的に様々な組織を束ねる必要がある為、ラブピースだけに構っている余裕はなかった。アインザーが管理する組織の中でもラブピースの売り上げはトップクラスだが、それでも常駐は難しい。


 しかし、この時はカイエル、アンバートに勝利の女神が微笑んでいた。


「呼んだかな? 二人とも」


「この声は……アインザー様!」


「まさか、このタイミングで来て下さるなんて……!」



 まさかの本人登場であった。ちなみに完全なる偶然だ。ある意味では運命と言えるのかもしれないが……。



「グリーンドラゴンが5体か……二人や他の部下では少々、厳しいかもしれないな」


「厳しいどころの話ではないですよ……全滅余裕案件です」


「ははは、確かにそうかもしれないな。ふむ、ならば僕が参戦するとしようか」


「ありがとうございます! このご恩は一生忘れません!」



「ははは、大袈裟だな。君らが死んでしまっては僕としても困るんだ。攫った者達の供給が途絶えて、レヴィンさんに怒られるからね」



 グリーンドラゴン達は目の前まで来ている。三天衆の一人であるアインザーの参戦……戦局にどのような影響をもたらすのか。



------------------------



「私から逃げたグリーンドラゴンは賢者の森の端にある洞窟付近で暴れているようだ」


「洞窟……なんだか誘拐犯みたいな連中の姿が見えるし、あそこがラブピースの拠点なのかもしれないわね。ミーティア達の姿も見えないし……」



 リッカとタナトスレーグの二人は賢者の森の入り口……グリーンドラゴン達の背後付近まで歩を進めていた。リッカは洞窟の存在と、その周辺にいる者達を見て、あそこに攫われた者達がいるのではないかという当たりを付けたのだ。


「ミーティアもナーベルも美人だし……万が一、負けていたとしても殺されてはいないはず」



 リッカは別行動になっていたが、元々は賢者の森で落ち合うことになっていた。しかし、彼女たちの姿が見えない。アジトを先に見つけ、助けに行ったと考えるのは至極当然の発想であった。



「仲間が危険に晒されているのか?」


「その可能性があるってだけよ。洞窟内にいる可能性がありそうね。洞窟の破壊はやめてよね」


「仕方がない。ではどうする? グリーンドラゴン達も始末するか? あの連中ではとても勝てそうにないが」


「そうね……」



 レベル80を誇るリッカではあるが、彼女もグリーンドラゴンの1体を倒すことはほぼ出来ない。カイエルやアンバートを含め、見えている連中で今の自分より強い者は居ないと判断していたのだが……。


 そこに現れたのがアインザーだ。彼の特殊能力である髪の刃はリッカと同じ技になる。しかし、現在のレベル80のリッカのそれより、はるかに洗練された技をアインザーは駆使していた。それだけで、レベル80を楽に超えることが想定される。


「私と同じ技……? いえ、でもあれは……! 私より強い!」



 リッカも見るだけでアインザーの実力が分かった。正確なレベルは不明だが、グリーンドラゴンの1体を軽く仕留めるその実力は確かだったのだ。


「……」


「嘘でしょ? グリーンドラゴンをいとも簡単に……」



 タナトスレーグは無言で見ているだけだが、リッカの驚きは相当なものであった。今の自分よりも確実に強い……同じ特殊能力を使用しているのだから、より分かりやすいということなのだろうか。



「グオオオオオ!」


「ギャオオオオオ!」



 残りの4体のグリーンドラゴンはアインザーに向かって行ったが、最初の1体と同じ結末を辿ることになった……。


 その光景を見たリッカはその場で動けなくなってしまった。




-------------------------



「流石です……アインザー様。まさか、グリーンドラゴン5体を簡単に倒してしまわれるとは……」


「ああ、大丈夫だよ。これでも僕は賞金首ランキング4位になっているからね。それにレヴィンさんの直属の配下にもなれている。このくらいのことは出来ないとマズイさ」


「上には上がいる……勉強させていただきました」


 アンバートとカイエルの素直な称賛だった。彼らは末端の構成員としてなりあがった者達なので、実力主義を痛感している。真なるトップでレヴィンを含めて尊敬しているのであった。アインザーは22歳と彼らよりも若いが、そんなことは関係ない。


「ははは、ありがとう。さて、それじゃあ、中で捕まえている連中を運び出そうか。次に何が訪れるか分からないからね」


「そうですね、分かりました」



 カイエルとアンバートは頷いた。グリーンドラゴンのような存在がまた現れては大変だ。ミーティア達をさっさと移動させようと考えたのだ。




---------------------------



「グリーンドラゴン達は死んだか。どうするんだ? 奴らに聞きたいことがあるんじゃないのか?」



 冷静に見ていたタナトスレーグ。しかし、リッカの心の中はたやすく読めたようだ。



「あんたはさっきの攻防を見ても驚かないんだ? 私は震えが止まらないんだけど……」


「ああ……今のお前はそうかもしれんな」



「……」


 

 リッカの震えが止まらないのは事実だった。アインザーと話している二人の存在……その二人も相当に強いと見ているが、アインザー自身は比べ物にならない程にレベルが高い。今までの経験の中であのレベルの者を見たことが果たしてあっただろうか? 強いて上げるのであれば、ジラーク達ということになるが……。


 彼女は春人やアメリア、レナ、ルナとは面識がない。こういう態度は仕方ないと言える。しかし、彼女は目の前の存在をすっかりと忘れていた。まあ、モンスターのことは考えていなかったので仕方ないのだが。


「そういえば、今までに私が出会った中で最強はあんただったわ……すっかり忘れてた」


「殺すぞ、貴様……」



 この流れはいつものやり取りに近くなっている。タナトスレーグとしては決して冗談ではないが、攻撃しても緊急回避で防がれると分かっているのだ。その後に手痛い一撃が返ってくることも。レベル80のリッカからはあり得ない矛盾した攻撃だ。


「あいつらがミーティア達を誘拐したのなら、話を聞かないと駄目ね」


「お仲間のことが心配なのか?」


「当たり前でしょ、私の大切な仲間よ。殺さない程度に仕留めることは出来る?」


「……今のお前の命令を聞くのは癪に障るな」


「な、なによそれ……私の命令を聞いてくれるんでしょ?」


「ランファーリの命令ならまだしも……私より弱いお前の命令は聞くに値しないと考えていてな」



 また、知らない存在のランファーリという名前が出て来た。彼を屈服させた存在ではあるのだが、リッカにその記憶はない。それだけに、タナトスレーグも微妙な気持ちを持っているのだ。


「ああ、分かったわよ。自分で動けってことね?」


「そういうことだ」


「使えない奴……いいわよ。私が話を聞きに行くわよ!」



 今はアインザーは洞窟内に入って行ったところだ。外に残っているのはその配下の二人……アンバートとカイエルだった。今がチャンスとばかりにリッカは動いた。


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