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120話 ラブピースとの決着 その2

(リッカ視点)



「でさ、この賢者の森でいいわけ?」


「悪くはない。私はモンスターだからな。こういう自然に溶け込む方が自然というものだ」


「あそ。なら、いいんだけれど……」



 タナトスレーグをとりあえず賢者の森に案内したリッカ。レーグ自身もこの森の雰囲気は気に入ったようで良かったと言う現状だ。



「ところで、食べ物なんかは大丈夫なの?」


「私はタナトスと同様、食物を必要としない。暇になれば適当に狩りをすればいいだけだからな」


「あ、そうなんだ。それなら安心だけど、冒険者を襲わないでよ?」



 タナトスレーグの器官は食事を必要としなかった。ほぼ永久に生きられる点もアテナやヘカーテと同じようだ。違うのはその強さや致命傷くらいのものだろうか。タナトスレーグは流石に首を跳ね飛ばされて生きてはいられない。ランファーリが首を飛ばさなかったのも致命傷になるからと感じていたからだ。


「なぜ、冒険者を襲ってはいけないのだ?」


「あのね……私は人間なんだから、同族が殺されることを容認できないでしょ?」


「ふむ、そういうことか。まあ、傘下に入るのだから従うが……お前は本当に人間なのか?」


「えっ……」



 リッカは思わず口を閉ざしてしまった。自らが人間……? 最近の事象もあり、それはとても気になるところだったのだ。ランファーリと呼ばれる存在も気になるところだが……彼女は幼少期の記憶がない。


「私は過去の記憶がないのよ」


「そうだったのか。興味深い話だ」


「それは、私が戦争孤児か何かだと思っていたけれど……もしかしたら、全然違うのかもね」


「ふむ、確かに……。お前は記憶がないかもしれないが、確かにランファーリと名乗っていた。幻影素体という言葉も聞こえたな。その中では最強の存在だとも。手の甲に0という数字が見えたが」


「えっ? そんなのないけど……」



 リッカは驚きながら自分の手の甲を確認した。しかし、現在はその数字が消えている。レーグの作り話だという線もあったが、リッカは事実だと考えていた。レベルがはるかに高位なモンスターと普通に話せている段階で既におかしいのだから。自分がランファーリによって作り出され、操られていても不思議ではない。


 以前にも格上のミノタウロスを瞬殺したリッカだ。信じてもおかしくない現状だった。今の80レベルのリッカですら、レベル99のミノタウロスには勝てないのだから……。


「あ~、考えれば考えるほどおかしくなりそう! アーカーシャに戻って飲み明かしたいわね!」


「ならば私も同行しよう。人間の生活に興味があるしな」


「はあ? なに言ってんのあんた……?」



 タナトスレーグからの言葉に理解が出来ないリッカだった。しかし、ドクロの顔ではあるが真剣さが伝わってくる。不思議な印象だった。



「私はフィアゼスの作り出したタナトスの亜種として生まれたモンスターだ。創造主であるフィアゼスは私のことを知らないだろう。本来ならば生み出される理由のなかった存在……少しだけお前の気持ちが分かるような気がしてな」


「あんた……」


 タナトスレーグは生みの親にも認識されていなかった存在だ。それがどれほど虚しいことなのか……アテナやヘカーテ、タナトスやケルベロス、フェンリルとは全く違う存在だ。自分は生みだされたのにもかかわらず存在意義がない。


 その気持ちはリッカにも通ずるかもしれないものだったのだ。



「レーグがそんなこと言っても気持ち悪いだけなんだけど……ドクロ顔だし」


「お前……本当に殺すぞ」



 レーグは本気の波動を出すが、現在のリッカには通用しなかった。レーグが攻撃をしても防がれるだけだからだ。それが分かっている為にレーグも攻撃をしたりはしない。



「アーカーシャには帰りたいと思うけれど、あんたのドクロ顔はどうにかなるの?」


「その辺りは魔法で人間の顔に変装できる。モルドレッドと呼ばれる怪鳥が辺りを警戒しているようだが……」


「そうね。レナとルナによって召喚されたレベル75のモンスターよ。主に外敵の侵入を防いでいるわ」


「ほう、レベル75の怪鳥を複数呼べる存在か。なかなか興味深いが私の変装を破ることはできまい」


「なら、いいんだけれど……」



 リッカとしてはやや心配ではあったが、相手はレベル900にもなる存在だ。レベル75程度のモンスターの警戒を掻い潜ることは容易なのかもしれない。


「言っておくけど、中に入って皆殺しとか止めてよね?」


「そんなことはしない。心配するな」



 レーグはそういうが、つまりは彼の機嫌次第だ。レベル900のモンスターが暴れて防げるほど、今のアーカーシャは盤石ではない。リッカとしても自分に危害が及ばなければ、例の強さを発揮できないかもと思っているからだ。最悪な話をすれば、リッカ以外の人間を全滅させることもあるわけだ。レベル400の鉄巨人すら対応ができなかった時点で、レーグの進撃を阻止することなど不可能と言える。彼に勝てる存在は現状分かっているだけでは数人しか存在しないのだから。その中にはサキアと協力した春人も含まれてはいるが……彼は現在、アーカーシャには居ない。


「そういえば、先ほどグリーンドラゴン達が暴れていたが……あれは放っておいて良かったのか?」


「グリーンドラゴン?」


「ああ、5体ほどが居たが」



 レーグはまったく意識していないようだが、リッカのレベルからすれば大きな出来事だ。レベル110のグリーンドラゴン……以前の春人もそれなりに苦戦した相手。それが5体も同時に出現したのだから。ただごとではないと言える。


「それで……無視したの?」


「私に向かって来ることはなく、森から逃げ出したようだからな。放っておいたが」



 グリーンドラゴンは魔法生命体になるので食料には出来ない。そのあたりも分かってレーグは手放したのかもしれない。その気になれば余裕で全滅させられただろうが。


「はあ、レーグ……あんたって、色々と規格外だわ」


「何を言っている? 私を倒したのはお前なんだぞ? 意味が分からん」


 とても矛盾した会話が繰り広げられていたが、常人では理解出来ないというところは共通であった。




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「馬鹿な……レベル110のグリーンドラゴンが5体も現れるなど……!」


「奴らは何かから逃れているようにも見受けられます。なにかに脅えている雰囲気がありましたので!」



 カイエルとアンバートの二人は洞窟から出てグリーンドラゴンの対応に必死だった。しかし、相手は格上で5体も存在しているのだ。そう簡単にはいかない……。


 さらに部下から聞いた言葉が気になっていた。



「何かから脅えているだと……? そんなバカな……賢者の森から逃げて来たとでも言うのか?」



 カイエルとしても意味の分からない報告だ。しかし、目の前には興奮しているグリーンドラゴンが5体存在していることは間違いがなかった。それをどのように始末するのかに全力を尽くさなくてはならない。


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