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105話 作戦会議 その2


「しかし、アルカディア島というのはその程度なのか?」

「どういうことですか?」


 オードリーの村を離れて1時間ほどが経過していた。近くの森の中でレヴィンとランファーリの二人は会話をしている。


「お前は、あの忌まわしき噂のある島を統べる者であると言っていたが……嘘だったのか?」


 レヴィンの言葉は相手を侮辱する言葉だ。同時に確信をついたものでもある。


「いいえ、嘘を付く意味合いはないと感じます。私が統べていることに間違いはありません」

「そうか……ならば、アルカディア島の実力の底はわかってしまったということだな」




 レヴィンは冷静にランファーリに語り掛ける。挑発しているようにも聞こえるが、レヴィンの態度は真面目だ。本気でそのように思っているのだ。


「意外ですね、レヴィン。私の戦力が足りていないというのですか?」

「そうではない。お前の実力は認めているつもりだ。だが、思ったほどでもないというのが正直な感想だな」

「そうですか……」


 レヴィンの厳しい言葉は続く。ランファーリは相変わらず無機質な言葉を述べ、仮面の下の表情も読み取ることはできない。


 レヴィンの言動は、アルカディア島からの使者であり、その島全体を統べる者として考えた場合の戦力を言っているのだ。その先入観を省けば、むしろランファーリの強さは恐ろしいと言える。


「どうだ、ランファーリ。高宮春人と名乗る人物……おそらく、あの中では最強の人物であると推察できるが……勝てそうか?」

「いいえ、どうでしょうか……おそらく難しいかと」


 ランファーリは冷静に答える。彼女も春人と同じ意見を持っていたのだ。自分では春人の相手は厳しい。


「……場合によっては、別の素体を使う必要がありそうですね」

「なにか言ったか?」

「……いいえ」


 レヴィンは聞き取れない言葉に反応をしたが、ランファーリは返答することはなかった。ただ、彼女の右手の甲に刻まれた「4」という数字をレヴィンは見逃していなかった。さすがの彼も意味がわかっていなかったので、それ以上質問することはなかったが。


「さて、今後の方針だが」

「ええ」

「……三天衆を呼んである。今日は退散するが、後日一気に攻めるしようか」


 三天衆……ランファーリとしても、レヴィンの言葉でしか聞いたことのない者たちだ。実際の面識はない。



「直属の側近ですか?」

「まあ、そんなところだ。安心しろ、実力は本物の連中だ。おそらくお前が思っているよりもな」

「……それは楽しみですね」


 ランファーリは仮面越しに笑みを浮かべたようだ。それは彼女の柔らかくなった言葉からも感じられた。不敵な笑みということだろうか。彼ら二人はその後、森からも姿を消し、オードリーの村からはさらに離れて行った。




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「……敵の状況が掴めない。レヴィンとランファーリ……名前などはわかったけど、正確な強さも不明のまま」

「そうですわね。これからの作戦と言っても、結局は正面突破以外に有効な戦術が思い浮かびませんね」

「……レナのいう通り。相手の情報が少なすぎる」


 作戦会議が始まり、しばらくが経過していたが、早くも暗礁に乗り上げていた。そう、闇の軍勢の能力も含め、情報が少なすぎるのだ。可能性として考えられるのは、連中がアルカディア島から来たということくらいだ。もちろんそれも、正体不明の蒼い獣の徘徊という不確定なものだが。


「アルカディア島からの使者というのは、新情報になるかもしれませんが……どうやって裏付けを取るんですか?」


 春人もその情報については、半信半疑だ。なにより証拠がないのだから。ナラクノハナもその質問についての答えは用意していなかった。


「……ミルドレアなら、なにか知っているかも。アルトクリファ神聖国なら、アルカディア島のことに関する情報があっても不思議じゃないし」


 そんな時、提案をしたのはアメリアだ。ミルドレア・スタンアークに今回の闇の軍勢についての情報を渡すというのが、彼女の案であった。


「確かに、フィアゼス信仰のアルトクリファ神聖国なら、文献なども含めて、800年前の人工島のことは知っているかも」

「うん、春人。神聖国は知らない関係じゃないし、ミルドレアなら協力してくれるでしょ」


 ミルドレア・スタンアークとは親しい間柄ではないが、アテナ達との抗争では共に戦地に赴いた経験がある。他の神官長などよりは信頼できるというのが、アメリアの考えだ。


 さらに情報を隠蔽したがっている神聖国ではあるが、ミルドレア自体は悪い人物ではない。隠し扉を開放したことで、間接的に死者を増やしたという罪はあるが、彼は任務に忠実な善人の立場でもある。アーカーシャを襲った鉄巨人を始末したことからもそれは伺えた。


「一度、アルトクリファ神聖国に行ってみた方がいいかな?」

「そうね、善は急げって言うし。私と春人、あとはサキアの3人で訪問してみない?」

「わかりました。以前はそれどころではありませんでしたし。私としても、創造主の信奉者の国というのは興味があります」


 アメリアの提案に春人やサキアも断る理由はなかった。今後の闇の軍勢との戦争を考えても重要になる予感もしているのだ。その提案はナラクノハナのメンバーも同意していた。


「なら、君たちが神聖国に行っている間は、警戒を強めるようにマシュマト王国に忠告しておこう。他国の君たちよりも、俺達の方が聞き入れられるだろうしね」

「お願いするわね。私たちが神聖国に行っている間に滅ぼされたなんてなったら、後味悪いし」


 リグドの言葉にアメリアは軽く返す。マシュマト王国は故郷でもなんでもない国家ではあるが、滅びても良いなどとは微塵も感じていない。


「そもそも、マシュマト王国の軍隊は消極的な印象があるんですが……どうなんでしょうか?」


 春人の率直な意見が出された。普通であれば誰もが疑問に思うことでもある。


「マシュマト王国自体は、忙しい時期だからね。東のアルカディア大陸の調査船……公式で行うのは100年以上ぶりくらいかな? 今回は最高戦力で出向くみたいだからね、そちらで忙しいらしい」

「アルカディア島への調査船……?」

「ああ、もちろん今回の闇の軍勢の一件とは関係はない。もっと以前から計画されている任務だからね」


 春人としては耳を疑うリグドの言葉ではあったが、彼の表情は真剣であった、決して嘘ではないようだ。アメリアやレナたちも内容を理解しているのか、それほど驚いている様子はない。


 春人は転生者である為、知らないことも多い。そんな彼の為の話が開始されることになった。


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