たらこ流 短編小説の書き方!
突然ですが、短編小説の書き方をお伝えしたいと思います。
まぁ……人にものを教えるような立場の水産加工食品ではないのですが、なんとなく書きたくなったので、衝動的に。
短編小説といっても、長編小説を書くのとあまり変わりません。
意味のある文章を書き連ねればいいわけですから。
でもテンプレを用いて長編小説を書いている人は、短編小説は苦手って思っている人もいるのではないでしょうか。
その原因はおそらくネタとオチ。
この二つが思い浮かばないと、短編が書きにくいと感じるかもしれません。
今回はこの問題をさくっと解決して、短編小説を気軽に書けるようになれるかもしれない、たらこ流のメソッドを公開したいと思います!
よろしければ最後までご覧ください!
物語に必要なものを用意します。
とりあえず主人公を適当に作りましょう。
主人公の詳細は不要です。
適当にガワとざっくりした属性を与えればそれで完成。
他の物語から名前を変えて流用しても可です(ただし自作の作品に限る
主人公を用意したら、目的を与えます。
そうですね……今回は主人公はどこにでもいる普通の男子高校生にしましょうか。
目的は近所のコンビニに買い物に行く。
はい、ここで何を買いに行くのか考えましょう。
コンビニに置いてあるものと言えば、色々ありますよね。
ありきたりなものを買わせても面白くありません。
男子高校生が普通だったら買わない物を考えてみましょう。
食べ物や日用生活品だとありきたりです。
手堅く行くとしたら「ゴム」とかですかね。
これだけで物語が一つ書けてしまいそう。
男子高校生が「ゴム」を買う光景ってそれなりに物語性があると思うのです。
んまぁ……ゴムはゴムでも「輪ゴム」だったら、ただのおつかいでしかありませんが……。
他にも「煙草」とか「酒」とかを男子高校生が堂々と買おうとするだけで、ちょっとダーティーな雰囲気の物語になります(売ってもらえませんが
あるいは「毎日同じものを買いに来る男子高校生」というだけでも、ちょっと物語になると思います。
買いに来るのが弁当とか飲み物なら別に普通ですけど、「充電池」とか「ライターオイル」とかだと、うん? ってなりますし、「油」や「醤油」など大量に必要ない物でもうん? ってなります。
読者が感じるであろう疑問に「納得できる理由」を付けくわえれば、物語として成立するのではないでしょうか。
別にコンビニに売ってそうなものでなくてもいいのです。
「寿命」とか「人間」とか「超能力」とか。
そういうものを買いに行くだけでショートショートのネタになりそうです。
明確な「主人公の目的」をあらかじめ提示しておけば、読者はこのあと「どうなるのか」をより注目して読んでくれると思います。
例えば「一日のうちに1万カロリーを摂取する」ために「高カロリーの食べ物」をコンビニへ買いに行く。
という設定にすれば、読者は主人公がどんな食べ物を買うのか興味を持つかと思います。
このように、目的を明確に示した上で「コンビニに買い物に行く男子高校生」を主人公に据えば、それだけで「ネタ」になるわけです。
しかし、足りないものが一つ。
「目的」には「理由」が必要です。
何故、その目的を果たさなければならないのか、理由を明確に示しましょう。
先ほど例に挙げた「一日のうちに1万カロリーを摂取するために高カロリーの食べ物をコンビニへ買いに行く」ですが、この目的を果たさなければならない理由とはなんでしょうか。
「やせ過ぎた体形を友人にからかわれて悔しかったから」でしょうか?
それとも単純に「記録を作りたい」からでしょうか?
目的に対してその理由を明確に設定するのは、とても重要です。
勇者が魔王を倒すという陳腐すぎる物語でも「金」の為か「名声」の為か「復讐」の為かで、物語の方向性は大きく変わります。
複数あってもいいですよ。
「愛する人を救うために金が必要」だから「報奨金目当てに魔王を倒す」という目的でもいいですし、「誰にも愛されたことがないので金で愛を買いたい」から「報奨金目当てに魔王を倒す」でもいいと思います。
主人公の持つ目的とその理由。
この二つを設定するだけで、物語のなかに無限の可能性が生まれるのです。
さて……話を戻しましょうか。
今回は特にひねった設定を行わず「どこにでもいる普通の男子高校生君」には「お醤油」を買いに行ってもらいます。
理由は「お母さんからおつかいを頼まれた」から。
これで物語になるのかと疑問に思うかもしれませんが、コンビニに向かうまでの道のりにも物語の可能性はたくさん隠されています。
極端な話をすると「障害」を設けるだけで物語になるのです。
例えば世界観を「ゾンビパニック」の世界にすれば、男子高校生がゾンビに襲われないようにしながら「何故か普通に営業しているコンビニにお醤油を買いに行く」という物語になります。
「いつも通っているコンビニなのに何故かたどり着けない」という障害を設ければ、ちょっと不思議な物語になりますね。
また時間帯を「深夜」にするだけで、そんな時間に醤油を買いに行かなければならない主人公に、読者は違和感を覚えます。
後でその理由を説明すれば、その内容にもよりますが、純文学になったり、ホラーになったりします。
他にも「台風」や「変質者」や「交通事故」でも、物語性が生まれるかと思います。
今回は特に障害を設けず、問題なくコンビニにたどり着けたことにしましょう。
「主人公はお母さんに頼まれて、近所のコンビニへ醤油を買いに来た」
一行で説明できるシチュエーションです。
あとは醤油をレジに持って行くだけ。
これで物語になるのでしょうか?
ちょっと話は変わりますが、物語とは「始まる前」と「終わった後」で、主人公に変化が現れるものだと思っています。
長い旅を経て魔王を撃破して故郷に帰って来た勇者君は、旅立ちの前と後では、間違いなく変化が起きているでしょう。
また「一人の男性が長い年月、牢に閉じ込められた物語」では、10年間閉じ込められた前と後で身体面でも精神面でも大きな変化が起きていると思います。
このように物語とは主人公に変化をもたらすものですが、変わるのは主人公だけではありません。
もっとも大きく変わるのは他者との関係性でしょう。
恋愛小説であれば、好きな相手との関係が物語の始まりと終わりとでは変化が起きています(起きていなかったら恋愛小説ではない!
推理小説であれば、少なくとも殺されてしまった人とは今までと同じように関われないわけですから、変化が起きていると言えますね(死んだ後も同じように関われるという登場人物がいれば、それはそれで別の物語になる
物語はいかにキャラクター同士の関係性の変化を描けるかにかかっているので、関係性の変化があまり描かれていないと物足りなく感じてしまいます。
今回はこの「関係性の変化」に焦点を当ててみましょう。
主人公の男子高校生君がコンビニに醤油を買いに来た時、偶然にもクラスメイトの好きな子がいた。
というシチュエーションにしてみましょうか。
その好きな子も醤油を買いに来ていて在庫が残り一本だった、とかにすれば、その醤油を巡って二人の関係性の発展が望めます。
そして主人公君が恥ずかしがるあまりに「醤油ぅ拳」とか「醤油をshow you!」とか言い出したら爆笑間違いな――
…………。
あの……皆さん待って下さい。
これにはちゃんとしたわけがあるのです。
皆様は今、危機を感じたはずです。
すなわちこのエッセイの危機です。
今までずっと真面目に話をしてきたのに、語り部であるエッセイ主がイキナリくだらないことを言い出したわけですから、ここまで読んだ時間が無駄になったと思われたかもしれません。
実はこれが物語性を感じさせる要素。
すなわち、「谷」の部分です。
物語には必ず「谷」が必要になります。
そこから「山」に繋がることで盛り上がるわけですね。
なのでここらでちょっと「谷を入れよう」という前振りみたいなものですね……あはは。
……おほん。
状況を整理しましょうか。
醤油を買いにコンビニへ来た主人公君。
そこには彼が好きなクラスメイトがいた。
そのクラスメイトも醤油を買いに来ていた。
在庫は醤油が一つだけ。
この状況において谷となるのは「醤油が一本しかない」ということでしょう。
では主人公君はいかにしてこの谷を乗り越えるでしょうか?
そう難しく考えなくてもいいです。
何事も直感が大切ですので、あなたが真っ先に思いついたアイディアが、実は正解だったりするのです。
思いつきましたか?
思いつかなかった人のために、たらこが例を示してみましょう。
《例》主人公がお金を忘れたと言って、クラスメイトに醤油を譲る。
ちょっとありきたりですねぇ……。
では、その後にこんなイベントを入れておきましょうか。
「クラスメイトにお金を忘れたという嘘を見抜かれてしまう」です。
こうすることで、二人の関係が変化します。
クラスメイトから見た主人公は物語が終わった後に「機転を利かせて不利な状況をチャンスに繋げようとする男」という印象に変わるかと思います。
また主人公の側からも「ちょっとした嘘を鋭く見抜く子」としてクラスメイトの印象が変化すると思います。
人間関係って、理解を深め合って初めて仲良くなれたと感じるものだと思います。
こんな風にお互いの意外な一面を知ることで、距離が縮まるのではないでしょうか?
もちろん、読者様によってはそう思わない方もいらっしゃるかと思いますが。
……え?
まだ物足りないって?
もうちょっと面白くするコツを教えて欲しい?
仕方ないにゃぁ。
あとちょっとだけだよ?
人の感情は出来事によって大きく左右されます。
良い出来事が起こると嬉しい。
悪い出来事が起こると悲しい。
あたりまえですよね。
でも……悪い出来事の後に良い出来事が起こるのと、良い出来事の後に悪い出来事が起こるのとでは、感じ方が違うのです。
例えば
『家が火事になった→宝くじに当選した』
と
『宝くじに当選した→家が火事になった』
とでは感じ方が違います。
ちょっと想像してみて欲しいのですが、あなたが偶然買った宝くじが100万円に当選したとしましょう。
その少し後に家が火事になったとしたら、ショックですよね?
当たり前のことなんですけど、家が火事になった時点で物語が終わったらバッドエンドです。
ですが……その順序が逆。
家が火事になったところから物語がスタートして、たまたま買った宝くじが100万円当選したら、ちょっとだけ救われた気持ちになるのではないでしょうか?
無論、このまま終わってもハッピーエンドとは言えませんが、前者よりはマシでしょう。
100万円が一億だと、もっと印象が変わると思います。
一億円当たった(∩´∀`)∩→家が火事になった( ;∀;)
と
家が火事になった( ;∀;)→一億円当たった(∩´∀`)∩
とで。
どちらが物語として良い印象を読者に与えるでしょうか?
人によって回答は異なると思いますが、後者の方が良い印象を与える場合が多いと思います。
基本的に人は低いところから高い所へと向かう物語を好む傾向にあります。
例えば「成り上がり」とか「成長」とか「大成功」とかですね。
実はその逆も然りなのです。
悪いやつが「失墜」あるいは「失脚」ないしは「失敗」する話は「ざまぁ展開」として好まれる傾向にあります。
なろうで人気の「婚約破棄」や、少し前に流行った「追放」もその効果をうまく利用した物語のテンプレートと言えるのではないでしょうか。
この法則を利用すると、物語に面白みを付けくわえることができます。
『コンビニに醤油を買いに行った主人公。
クラスメイトに最後の一本を譲ってしまう』
このまま終わったら気持ちの良い物語とは言えません。
ですが……。
『しかし、その翌日。
学校でクラスメイトから昨晩作った肉じゃがを御馳走してもらった』
という結果に繋がれば、主人公の取った行動はよい結果につながったと言えるのではないでしょうか。
ラブコメとしたらまぁまぁな終わり方かもしれません。
でも……まだ物足りない。
そんな風に思うあなたに、さならる禁じ手を。
時間を吹っ飛ばします。
数年後、そこにはクラスメイトと結ばれた主人公君の姿が!
二人は結婚して末永く幸せに暮らしました!
めでたし、めでたし!
かなり強引なオチですが、一応はハッピーエンドになったと言えるでしょう。
とまぁ、こんな感じで語ったわけですが、いかがでしたでしょうか?
なんとなくですが短編小説の書き方が伝わったかと思います。
短編小説を書くことで、自分の得意、不得意な分野が分かるかと思います。
たらこもエッセイや短編小説を書くことで自分の強みに気づくことができました。
物語の作り方は一通りではないので、これはあくまでたらこ流のメソッドということでお願いします。
他にも創作論を書いている人はたくさんいるので、そちらも参考にしてはいかがでしょうか。
長くなりましたが、今回はこんな感じで締めさせていただきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。