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第9話

 「色々お世話になりました」

 「いやぁ。リアカー引いている冒険者なんて初めてみたよ。気を付けておいきよ。これ、ちゃんと張っておくからね」

 「お願いします」

 「「バイバイ」」


 朝食を食べ終わった僕は、どうせだからとチラシを張ってもらう事にして一枚渡した。

 レンカとサツナをリアカーに乗せ、朝早く出発した。


 親切な人だったなぁ。領土を出てチラシを配ると言うと、地図をくれた。しかもこれ、宿屋協会が発行している宿屋の人が持っている地図。昨年のだけどとくれたんだ。

 地図といっても冊子になっていて、領地ごとに協会に入会している宿屋が記されている。なんていいものをくれたんだ。これなら全個所を周れるかもしれない。


 「これがあったら全部周れそうだよね」

 『全部は無理でしょうね』

 「え? なんで?」

 『一年では、周れないって事よ』

 「あ、そっか!!」


 徒歩では確かに無理かも。だったらルートを決めないとな。

 あ、そういえば、ホロつけたいから何かシート買っておこうかな。


 「ねえ、二人共雑貨屋によっていい?」

 「雑貨屋?」

 「これに屋根を付けようかと思って」

 「「屋根!?」」


 って、二人は驚いた後大喜びした。


 『どこまで改造する気なのかしら……』

 「最初提案したのはラスだよね?」

 『まあいいわ。夜はそこで寝れる様に考えましょう』

 「じゃ、雑貨屋に行こう」



 リヤカーは、ラスに見えないようにしてもらって、僕達は建物の中で買い物をする為に入った。

 ここは普通の雑貨屋さんらしい。

 冒険者ではない人達が、普通に買い物をしている。


 「かわいいね」

 「うん」


 二人が何かを見ていると覗くと、髪を留めるピンだ。


 「別に買ってもいいんだよ」

 「「いいの?」」

 「うん。でも考えて買わないとお金なくなっちゃうからね」

 「はい!」


 二人は嬉しそうに選んでいる。贅沢っていうわけでもないが、今まで出来なかった事だ。


 『あなたは何か、欲しい物はないの?』

 「うーん。特には。ラスにもらったしね」

 『あんなのでいいの?』


 あんなのって。高価な物に変えてくれたんだよね?


 「僕の宝物だよ」

 『大事にしてくれるのね、ありがとう』


 ラスは嬉しそうだ。

 そうだ。ラスにも何か買ってあげたいけど、実態がないから買ってもムリなのかな?


 「ラスは、何かほしいものないの?」

 『え? 私!? あなた変わってるわね。妖精に買い与えようなんて』

 「え? そう? お礼がしたいなぁって。でもここに売っている物はあげられないんだよね?」

 『まあね。気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとう』


 やっぱり、物体じゃ無理か。でも命令とはいえ、命の恩人だしなぁ。何か方法を見つけて、元の世界に帰る前に恩返しができたらいいなぁ。


 と、そうだった。シートを買いにきたんだった。


 当たり前だけど、きれいなシートだ。施設にあったのはどれもよれよれだったからなぁ。

 あ、透明なシートもある。雨の日に、僕の方にもつけたいなって思っていたからこれも欲しいけど、透明って他のと比べて高いんだね。


 うん? 半値のシートがある。しかも大量に?? 何故だろう?


 「あの、すみません。なぜあれだけ半値なんですか?」

 「あれかい? どうやら色あせてしまった様に見える色みたいでね。売れ筋悪かったやつなんだよ。新商品がでるから売り切る為に半値なんだよ。もしかして買うかい? 買うなら何かおまけするから全部どうだい?」

 「え? 全部? そ、それはさすがに……」

 「場所を取ってね。買うなら全部売ってしまいたいんだよ」


 気持ちはわかるけど……。そんなにあってもなぁ……。


 『たくさんあってもリアカーには乗せられるわよ。安いのなら買っておいたら?』

 「え?」


 そうえいば、チラシもそうだったけど凄い収納になってるよね。

 だったら。


 「あの、だったらこのシートも半値にしてくれますか?」


 そう交渉を持ちかけると、っぷっと笑い出した。


 「え……僕変な事いいました? あ、無理ですよね……」

 「いやそうではなくてね。普通ならそれをおまけにしてって言うだろう。まさか半値でいいだなんてね」


 そういうものだったのか!


 「いいよ。半値にしてあげよう。それと、彼女達にこれなんてどうだい? 一個だけだけどね」


 手に取ったのは、木製手鏡だ。鏡の後ろには、何か花の模様が掘ってある。


 「わぁ。かわいいね」


 レンカが手鏡を見て言った。

 そういえば、手鏡なんてものなかったよな。


 「わかりました。そうします」

 「本当かい? いやぁ、悪いね。押し付けたみたいで。模様が何種類かあるから選ぶといいよ」

 「「はーい」」

 『みたいって、押し付けてるじゃん。もうお人好しなんだから』

 「手鏡に惹かれたんだ」


 僕はボソッとラスに返す。

 それにしても色んな小物がある。ちょっと高めみたいだけど、模様も一つずつ違う。一点もの?


 「これって一点ものの商品なんですか?」

 『これかい。ハンドメイドさ。商業協会にハンドメイド部って言うのがあってね、そこに登録した人達のモノさ。まあ趣味で作った物を売っている感じかな』

 「え? 趣味で? 凄いですね」

 『スラゼもしてみたら? なんてね』

 「あはは。ムリムリ」

 「うん? 何がだい?」

 「え? いえなんでも。あ、先にお会計を……」

 「そうだね。ちょっとお待ちください」


 あぁー。びっくりした。つい普通の声で返したちゃったよ。気をつけないとな。変な人だ。


 「これ~!!」


 ヒマワリが描かれた手鏡だった。そう言えば二人共、ヒマワリが好きだったっけ。


 「いやぁ。ありがとうね」


 お会計をすませ僕達は店を出た。

 買ったシートをリアカーに積んだ。

 二人は、リアカーに乗り込み買ったばかりの手鏡を二人で覗き込んでいる。


 そうだ。ここにもチラシ貼ってもらおう。


 「すみません。これ貼ってもらっていいですか?」


 もう一度、店を訪ねお願いする。


 「おやこれは。気が早いねぇ。わかった。貼っておくよ」

 「ありがとうございます」


 思ったけど、全部の地域を周れないなら、雑貨屋に貼るだけでもいいからって周るかな。


 「あの~お伺いしますが、雑貨屋協会みたいなのがあって、それの地図みたいのってありますか?」

 「え? これまたいきなりだね。商業協会に雑貨部って言うのがあってそれになるかな? うーん。地図はないけどリストはあるが、部外者にはねぇ。もしほしいならハンドメイド部に登録して売り手になれば、もらえると思うわよ」

 「そうですか。親切にありがとうございます」

 「気を付けておいきよ」

 「はい」


 よく考えればそうだよね。

 でも売り手かぁ……。冒険者をやめてそういう商売もいいかも。って儲けってあるのかな?

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