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第8話

 暫くすると宿屋を発見。リアカーは見えない様にラスにしてもらい、受付をするのに中に入った。


 「いらっしゃい」


 女将さんみたいな人が、カウンターにいた。

 すごーいと、二人は目を輝かせて建物内を見渡している。


 「あの三名なんですけど……。あ、僕達冒険者で、二人は十五歳未満です」


 僕達は、冒険者カードを提示した。二人には、十五歳未満のマークがついていた。


 「おや、兄弟で冒険者かい? だったら三人で一つ部屋でも大丈夫かな?」

 「「うん。スラゼお兄ちゃんと一緒がいい!」」


 と二人揃って答えた。


 「安くあげるのに、二人部屋にするかい? 一人分おまけしてあげるよ」

 「いいんですか?」

 「いいとも。君達は、あれだろう? 施設の子――」


 ボソッと女将さんが言った。噂になってるんだやっぱり。


 「ありがとうございます」


 部屋は、ベッドが二つだけとシンプルだけど寝るだけだから問題ない。でも宿泊って思ったより高かった。

 通常料金は、一泊朝食付きで銅貨500枚。十五歳未満は、銅貨300枚だった。今回銅貨800枚で、三人分の朝食付きだ。

 アーズラッドが言った通りだった。

 食べ物の確保をしたいから、寝るのは野外にするしかないかも。


 「わーい。ベッドだぁ!!」


 二人は、ベッドの上に乗って喜んでいる。

 僕も嬉しい。施設に来る前はベッドで寝ていたと思うんだけど、ベッドがあった記憶はあるけど寝た記憶はないんだよね。

 だから初体験な気持ち。


 今までは、ほぼ一日一食だった。だから食べなくてもいいけど、ご飯どうしようかな?


 「ねえ、ご飯どうする?」

 「お腹すいたかも……」


 レンカが食べたいかもという顔をした。サツナも頷く。

 そうだよね。今までだってお腹がすいていなかったわけじゃないもんね。昼も食べてないし……。


 「じゃ、食べに行ってみようか? 今回だけ特別に!」

 「え? お店屋さんで食べるの?」

 「やったぁ!」


 レンカとサツナは大喜び。

 施設でそんな事した事なかったもんね。僕もないからドキドキする。

 宿屋の一階にある食堂で僕達は、食べる事にした。


 「あのさ、ラス……僕こういう所で食べた事ないんだけど、どうしたらいいの?」

 『え!? もう仕方ないわね。これも経験よ。その時々によるけど、ここは注文してそれがテーブルに運ばれてくるからそれを食べ終わったらお金を払うのよ』

 「ありがとう」


 二人の手前、何も知りませんって訳にはいかないからね。


 「えっとね、これから食べたい物を選んで注文するの」

 「え? これから? うーん。これって何?」


 レンカが指差したものは、ガイガイ鳥と薬草のソテーだった。

 ソテーってなんだろう? ガイガイ鳥ってモンスターだったような気がするんだけど……。それと薬草なの??


 「えーと……」

 「決まったかい?」

 「え? あ、じゃ……これ」

 「ガイガイ鳥と薬草のソテーね。他には? 量的にはもう一品ぐらいあった方がいいと思うけどね?」

 「えっと……じゃ、お、お任せで」

 「じゃ、特製雑炊でいいかい?」

 「はい。それでお願いします」


 緊張した~。


 「雑炊って何?」

 「え? あ~……」

 『穀物を煮込んだものよ』

 「穀物を煮込んだものよだよ」

 「すごい! 初めて食べるね!」

 「うん!」


 レンカが言うとサツナが大きく頷いた。

 ラスのお蔭で、僕のメンツが保たれた。


 「ありがとう、ラス」

 『よく考えたらあなた達、そう言うの食べた事ないどころか、見た事もなかったわね』


 そうだから、僕も凄く楽しみだ。

 取り皿を置いてから暫くすると、注文した食べ物がテーブルの上に置かれた。

 ガイガイ鳥のお肉の塊の横に薬草が添えてある。それをナイフで切って三等分して皿に分けて、雑炊も深めの皿に分けた。

 雑炊は、アツアツで少し冷まさないと食べれないかも。


 「わぁ……おいしい!」


 レンカが肉を頬張り満足顔だ。

 サツナは、雑炊をスプーンですくい、ふーふーと冷ましている。


 僕も肉を頬張る。肉汁が出て来て程よい弾力があるお肉。

 ガイガイ鳥を見つけたらラスに調理してもらおうかな……。

 雑炊も一口食べてみた。――これって、食べた事あるかも。微かな記憶。きっと、お母さんが作ってくれた事があったんだ。


 「スラゼお兄ちゃん、どうしたの? 熱かった?」

 「え?」


 レンカに言われて気がついた。僕の瞳からは、涙があふれていた。


 「か、感動しただけ! お、おいしいね」

 「「うん!」」


 二人は、声を揃えて返事をした。

 夕飯代は、銅貨250枚だった。


 部屋に戻った僕達は、ベッドに潜り込んだ。僕が一人で一つ使い、もう一つを二人で使う。初めは騒いでいた二人だけど、すーすーと二人の寝息が聞こえて来た。

 二人が居てよかった。寂しくない。今まで大人数だったからね。僕は、面倒をみるより、みてもらう方だったけど。

 僕は、備え付けのランプの火を消した。


 「おやすみ」


ベッドも何となく懐かしい気がした。

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