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この映画が見終わるまでに死ねればよかったのに

作者: 犬っち

『映画研究会卒業製作』

なんだ、今更。卒業した時には送ってこなかったくせに。卒業製作にも卒業式も出れずに病室で過ごした青春。


『何も感じない。この映画が見終わるまでには死ねれば、良いのに。何も感じないまま。』



再生ボタンを押す。

ナレーションが流れた。


-----------------------------------------

卒業を控えた中、私だけが進路が決まっていなかった。


『あーあ、浪人かなあ。』


今日も自習室に向かう。誰もいない自習室。

窓が開かれていた。


『まだ少し寒いわ。』

窓を閉めようとすると、誰かの手がふれる。

『あ、、、ごめんなさい。』


見慣れない男子生徒。

サラサラの髪に、着こなされたブレザー。後輩かな。


『あのー』


『あ、ごめんなさい!』


手を離す。


『あ、あの、、、その、先輩ですかね、、、?』


『3年生よ。進路が決まってないの。嫌になっちゃう。医学部だし覚悟してたけど。』


自虐的に笑う。



『僕も医学部志望です。』


『じゃあ、ライバルね。』


髪を手で肩の後ろへ払う。

『そ、その!来年また受験勉強するなら、一緒に医学部目指しませんか?』


『の、望むところよ。』


『ところで、なんで医学部に?』



『それはね、、、』



-----------------------------------------


ここで、フィルムは止まる。

あれ?壊れたか?

不自然な終わり方だ。











病室に2人医師が入ってくる。

大人になった、映画に出ていた女の子と男の子がいた。



白衣を着て、名札には医師と書いてある。


『DVD、渡すの遅くなってごめん。』


セリフの続きを。


『先輩、なんで医学部に?』


『キミと一緒に目の前の友人の病気を治すためだよ。』


私は手術室に運ばれていく。



医師になった女の子は私に微笑みかける。

見たことの無い向日葵のような笑顔で。




『手術が終わったら、物語の続きを撮りましょ?卒業製作完成させないと。』




私は絶望していたのに。

この映画を見終えるまでに死ねれば、良かったのに。灰色の心のまま、何も感じず死ねたのに。そう思ってたのに。



私の脚本は始まってもなかった。

私の物語はこれからだ。



生きたい。


生きていれば、どんな物語だって紡げるから。


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― 新着の感想 ―
[一言] 胸にグッときました! 元気になぁれ!
2021/12/09 19:37 退会済み
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