表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/62

第三章 「鎖に繋がれしもの」 16

 激しさを増した手刀が俺達に襲い掛かる。

「オレはエリートだ。計算し作り出された、選ばれし生命体なんだ。お前たちのような、その辺に生えている雑草に負ける道理なんてないんだよ!」

 口では強がってはいるが、シロクマも3対1になり焦っているのか、先ほどよりもかなり動きが大きく激しくなっている。

「それにしては、わたしには一発も攻撃が当たっていないじゃないか?」

 不敵な笑みで挑発するナナコを執拗に追いかけるシロクマ。しかし、ナナコのトリッキーな動きに翻弄され、ついにシロクマの両の前足が地に着いた。

 今、奴は全体重を四本足に委ねている。それゆえ、すぐにはあの巨体を自由には動かせないはずだ。

 ――ここだ!

 俺は意を決し、シロクマの正面へと飛び出した。

 が、ナナコを追っていたはずの目が、確実に渾身の飛び蹴りを放った俺の姿を捉えている。

「そうくると思ったぜ」

 見ると、シロクマの前足に力が込められている。

 マズイと直感したが、俺はすでに飛び上がっているので、軌道修正出来ず、どうあがいてもシロクマと正面衝突するしかない。奴の方は、アゴを引いて、弱点の鼻も眼も視界から消えている。これでは相打ち覚悟の攻撃も不可能だ。

 もはやシロクマの攻撃を受けるしか選択肢がない。俺は奥歯を噛みしめ、瞬時に腕と足でガード姿勢を取る。

 直後、シロクマの頭突きが飛んで来た。

 凄まじい衝撃が肉を貫通し、骨にまで伝わる。互いの全力がぶつかり合った結果、俺は吹き飛ばされ、視界がグルグルと高速で何回転かする。

 やがて視界が定まり、頬に冷たい地面を感じる。そこで、俺は自分が地面に横たわっているのだと気付く。

 かなりのダメージを覚悟していたので何とか意識は保てているが、手足がしびれて動かない。

 ドスン、ドスンと足音を立て、背後からシロクマが迫ってくるのを感じる。本能的にその場から逃げ出そうとするも、全身がバキバキに痛んでいてはそれは叶わぬ望みだった。

 俺はなすすべなく、上着を掴まれ宙吊りにされる。首回りが絞めつけられ、声が出ない。

「油断大敵ってやつだ」

 二本足で直立したシロクマが楽しそうに笑う。

「お前ごときがこのオレを出し抜けるとでも思ったか? お前の考えなんてとっくにお見通しなんだよなぉ~」

 臭い息が顔にかかり、俺は顔をしかめた。

「貴様はオレの弱点を『見つけた』と思い込んでいたようだが、本当は自身の非力さ、決定力のなさから、オレにダメージを与えられる唯一の弱点を『狙わなければ』いけないと心理誘導されていたんだよ」

「なん――だと――」

 首筋から流れる冷や汗が背筋を冷たく凍らす。

「お前は、選ばされていたのさ……。それが落とし穴へと続く、楽な道だと知らずにな」

 こいつには最初から全部分かっていた? 俺が弱点を狙おうとしているのも、四つん這いになるのを待っているのも。そして、俺が好機だと判断とした瞬間、捨て身の攻撃を仕掛けることも……。そして、逆にそれを利用し、俺を叩きのめすことに成功した?

 全てがシロクマの手のひらの上の出来事だったと言うのか……。

「まったく、笑いをこらえるのが大変だったぜ。ずっと待っていたんだろ? 滑稽じゃないか。お前が一生懸命考えたとっておきの作戦が、こちらにバレているとも知らずにな~」

 その通りだ。こいつは肉体的優位性だけじゃなく、知能さえ俺を大きくうわまっているというのか……。

 完敗だ……。

 こいつには勝てない……。

 俺は全身から力が抜けていくのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ