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第三章 「鎖に繋がれしもの」 12

 こんな時、オヤジならどうするだろうか……。

 そんな思考が頭に浮かび、俺はほんの一瞬、シロクマから目を離していた。それを見逃すほど相手は甘くなかった。

「ナニをほうけているネ!」

 オームの声にとっさに防御態勢に入ったがもう遅い。シロクマの頭突きがガードを弾き飛ばし、俺は尻もちをついた。

 立ち上がろうとする俺の両肩をシロクマの前足が押さえつける。

 完全にマウントを取られて身動きが出来ない。見上げるシロクマの口からよだれがしたたり落ちる。ゴクリと喉を鳴らすシロクマ。そして、その黒々とした目が語り掛けていた――お前を食わせろ――と。

 やられる! そう覚悟した瞬間、真紅の翼が俺とシロクマの間に割り込む。

「やらせないヨ! 武蔵はアタシが守るネ」

「こいつ! 離れろ!」

 顔に絡みつくオームを前足で払いのけながら後退するシロクマ。

 俺はすかさず立ち上がり態勢を整えた。なおもシロクマの頭部に攻撃を続けるオームに「もういい。そいつから離れるんだ」と叫ぶ。

「まだ、まだヨ! アタシだって、みんなの仲間ネ。役に立ってみせるヨ」

 オームはシロクマの頭部を口ばしで突いているが、あまり効果がないようだ。しかし、シロクマは何が気に入らないのか必死にオームを叩き落とそうとしている。と、シロクマの爪先がオームの羽根をかすめた。体勢を崩したオームは偶然にも、シロクマの鼻先をかぎ爪で掴んだ。

 突如、シロクマが悶絶し動きを止めた。

「いまネ」

 オームは怯んだシロクマの目を突いた。これには堪えられなかったのか、シロクマは膝を付き全身を震わせた。

「ヤッタ、ヤッタわ! これでしばらくこいつの視界は制限されるヨ」

 こちらへ振り返り歓喜の声を上げるオーム。俺は素直にその功績を称えるように、親指を立ててみせる。

「この……ゴミ……虫が……」

 地獄の底から声がしたと思ったら、オームの背後で巨大な白い影がゆらりとうごめく。

「オーム、うしろだ!」

 警告むなしく地面に叩きつけられるオーム。

「馬鹿が。お前が攻撃したのはまぶただ。目はきちんと見えている」

 シロクマは全身の毛を逆立たせ、鼻息荒く怒りに震えている。

「ナナコ!」

「分かってる」

 俺の意図を即座に理解したのか、ナナコとイネコがシロクマに攻撃を仕掛けてオームから注意を逸らした。

 俺はその隙にボロボロのオームを拾い上げた。手が血で赤く染まる。人からすればわずかな出血だが、鳥にしてみれば十分に致命傷になりかねない量だ。

「誰か……。来てくれ!」

 震え声で叫ぶと、空からハクトウワシのトリスタンが舞い降りてきた。

 綺麗な布でオームの止血をし、「オームの手当てをしてやってくれ」と壁の外に待機しているサルたち医療班の所へ運ぶようにトリスタンに頼む。

「ウム」とうなずき羽根を広げるトリスタンに、オーム自身が待ったをかける。

「アタシはみんなの役に立てたネ?」

「ああ。オームちゃんがいなければ俺はシロクマにやられていた所だ。助かったよ」

 感謝を伝えるために微笑むと、オームの表情も少し和らいだような気がした。

「なら、よかったワ……。やっとこの翼が役に立ったのネ。これで、アタシも自由に――なれたのカナ?」

「自由? こんな時に何を言っているんだ?」


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