第三章 「鎖に繋がれしもの」 10
俺たちを観察しながらシロクマはじりじりと距離を縮めてくる。
喋れるのに何も話しをしてこないってのはかなり不気味だ。
「気を付けて、こいつ門番ネ」
シロクマの鼻息が届くくらいの間合いになった時、オームが真面目な声色で呟いた。
「施設の警備にあたっている多くの動物と違って、戦闘力の高いエリートが重要施設を守っていると聞いたことがあるワ」
ならばイネコの言う通り、ここに犬山博士が捕らえられている可能性が高い。
「よく喋るオウムだな~。焼き鳥にしてやろうか?」
やおらシロクマが二本足で立ち上がりオームを一瞥した。
「門番ってことは、お前を倒すと入り口が開くってわけか?」
またも質問には答えず、直立不動の姿勢でシロクマは俺を見降ろした。
間近で見るとその大きさに圧倒される。ゆうに2メートルは越えている。ただ突っ立っているだけなのに強いプレッシャーを感じる。
と、シロクマが二本の前足を空へ掲げた。
「お手上げ……か? 降参するなら入り口のシャッターを開けて――」
俺の軽口を遮るようにシロクマの手刀が飛んで来た。すんでの所でそれをかわすと、間髪を入れずに二撃が飛んで来る。
左、右と両の前足を交互に振り回し、都合、六連撃を放った。それから、前足を地面に着き、四つん這いの姿勢に戻ると再びこちらを睨んだ。
「いきなり何しやがる」
みんなの無事を確かめてシロクマへと言い放つ。
イネコとナナコはいつの間に移動したのか、それぞれ、シロクマの背後の左右に移動して『いつでも攻撃できる』と目で合図を送っていた。
先に手を出したのは向こうなので、こちらも武力行使でいくのも手だが無駄に血を流すのは賢いやり方とは思えない。
「今のはあいさつ代わりと思っておくよ。にしても、3対1だ。大人しくここを通す気はないか?」
俺の提案を拒絶するように無言で立ち上がるシロクマ。
「こいつ、聞こえてないのか? もしかすると、俺の言葉が分からないのか?」
いや、さっきはオームの言葉に反応していたな……。
「まっ、人間の言葉はシロクマには少し難しかったかな?」
シロクマもこれにはカチンときたのか、口の端を上げた。




