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第三章 「鎖に繋がれしもの」 9

 ゲートをくぐり施設内に足を踏み入れると、すぐにナナコとイネコが合流した。

「犬山博士はどこにいるか分かりますか?」

 俺はイネコに確認する。壁内が混乱している今、目標を確保するチャンスだ。 だが、何の情報もない状態なのでイネコの嗅覚だけが頼りだ。

「うむ。この匂いじゃ。少し時間がかかるかもしれぬ」

 それも仕方がないだろう。オヤジが最臭兵器を使ったのだ。イネコの鼻が正常に機能するはずがない。まあ、俺たちは直撃を受けていないだけまだマシだろう。その威力の凄まじさを物語るように、壁内にいた警備の動物たちが倒れている。

「死んだカ?」

 オームの質問に俺はかぶりを振って答える。

「いや、気絶しているだけだ。環境にも無害な天然ガスだから。しばらくすれば目を覚ますよ」

「鼻が利くワシたちには絶対に食らいたくない攻撃じゃな。しかも、この匂いのおかげで警備の索敵能力を無効化している優れものでもある。じゃが、私にとっては都合が良かったようじゃ。他の匂いが判別できない分、ご主人の匂いをより感じることが出来たぞ」

「それじゃあ……」

 大きくうなずくと、イネコは背の高い建物の1つを指差した。

「あそこにご主人が捕らえられているのは、まず間違いなかろう」

 壁の内側ではすでに警備の奴らと仲間たちの交戦が始まっていたので、露払いは必要最小限ですむ。俺たちは一直線でその建物を目指した。

 ビルの入り口が見えたところで、突如ガラガラとシャッターが閉まった。

「ミンナ、よけて!」

 いち早く危険を察知し、オームが叫んだ。

 ビルの脇から、こちらへ向かって白い大玉が猛スピードで転がってきた。俺とイネコはそれぞれ左と右に、しんがりのナナコは上空へジャンプして大玉を踏みつけてそれをかわした。

 速度を落とし停止する球体。丸い塊だったものが白くて大きなケモノに形を変えていく。

「うまく避けたなぁ~。まったく、チビだと的が絞りにくくて参るなぁ~」

 おっとりとした喋り口調。ケモノがむっくりと立ち上がり、こちらへ振りきざまにニヤリと笑った。

 二本足で立つそのケモノは、シロクマだった。

 正式名称ホッキョクグマと言われる、北極圏に生息しているシロクマがなぜこんな場所にいるのか? 言葉を話しているから、おそらくこいつもここで生まれたんだろう。

「お前、何者だ?」

 シロクマは俺の問いかけには答えなかった。代わりにドスンと前足を地に着き、四つん這いの姿勢になるとこちらへと歩を進めてきた。


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