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第三章 「鎖に繋がれしもの」 8

「きたネ」

 オームの言葉に、俺は雲一つない夜空を見上げる。

 うまく視認出来ないが、確かに月をバックに小さな豆粒のようなものが地上に向かって落ちてきていた。

 島のセキュリティもそれに気付いたのか、施設内に重苦しい警告音が鳴り響く。監視塔からサーチライトが上空に向け放たれる。そこに映し出されるシルエット。それは、まさにオカマのものだった。

 頭を地上に向け、腰に手を当てている。表情までは判別出来ないが、俺にはオヤジがニヤケ面をしているんだろうなと理解していた。

 何発か狙撃音らしいものが聴こえたが、オヤジに変わった様子はない。

 サーチライトに照らされ、狙い撃ちされてもおかしくないオヤジがなぜ無事なのか不思議だったが、その理由はオヤジが地面に着地する時に分かった。

 地面が迫る中、オヤジは着地に備えて体育座りの姿勢で両膝を抱えた。それから、体を縦に180度回転させたと思ったら――。

 ブウウウ!!!!

 闇を切り裂くほどの爆音が島に響く。ビリビリと大気が震えるのを肌で感じた。

 オヤジの尻が、空気のクッションにでもぶつかったように宙でバウンドする。次の瞬間、オヤジが着地すると思われた場所に弾丸が着弾した。

 オヤジを中心に砂煙が舞い上がり、その姿を隠す。

「毒ガスだー!」

 誰かが叫び声を上げ、壁内が慌ただしくなる。それで俺は、オヤジが何をしたかを理解した。

「オヤジの奴、最終兵器を使ったな」

「サイシューヘイキ?」

 首を傾げるオームに、

「ああ。オヤジの最も得意とする必殺技、最臭兵器だ」

 俺は得意げに答える。

「おそらく、オヤジは落下中は小刻みに放屁をして落下速度と軌道を変えてうまく狙撃を回避していたんだろう。わずかなズレだが正確な狙撃には有効な手段だ。そして、もっとも狙撃されやすい着地の瞬間、最大の放屁を放ち、着地の衝撃を和らげると共に、狙撃を回避したんだよ」

「へー」とオームがうなずいたのと同時に、パリンと小気味いい音がし、オヤジを追っていたサーチライトの光が消えた。続いて、複数の断末魔と共にスナイパーらしき者が狙撃ポイントから落下するのが見えた。

 どうやら作戦通り、鳥たちがスナイパーを無力化してくれたようだ。これで壁内に侵入しても一方的に狙撃される心配はなくなった。

 地上では砂煙の中、大きな影がゲートの管理室へと飛び込んだ。いくつかの打撃音が聞こえた後、

『トビラガ、ヒラキマス』

 機械的な音声と共にゆっくりと施設のゲートが開いていく。それを確認すると、俺はオームと顔を見合わせうなずいた。


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