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第三章 「鎖に繋がれしもの」 7

「そうネ。世界は広い。むな志にもシンパシーを感じちゃったけど、またすぐに、こんないいオトコと出会えるとは思わなかったヨ」

 スリスリとオームが俺の体にすり寄ってくる。

「似たもの親子だから、武蔵がいいオトコなのは当然かもネ」

 オームにジッと見つめられ、

「似てないだろ? オヤジと俺は、血が繋がっていないんだからさ」

 照れくさくて、ついそんなことを口走る。

「でも、親子ネ」

「そりゃ、まあ、そうなんだけど……」

 所在なく俺は指先で頬をかいた。

「少なくとも、アタシは似ていると思うヨ。武蔵はむな志と似ていることが恥ずかしいネ?」

「いや、そうじゃないけど……」

「なら、堂々と胸を張ればいいネ。むな志は素敵な父親ヨ」

 俺だって心の中ではそう思ってはいるが、他人から言われると素直にそう認められない自分がいる。

「この島のみんなはチチなき子だから、武蔵が羨ましいネ」

「羨ましい? 俺が?」

「アタシたちは親を知らない。おそらく、この先もそれを知る機会もないはず。この身ひとつで生まれてきたヨ。カラっぽで、まっさらだから、いいように誰かの意思おもわくを教え込まれ、知らないカラーに染まってしまう。島の外へ出ようと思わなければ、あのまま意のままに操られる人形に仕立て上げられる所だったネ」

 オームは羽根を広げ、わずかに羽ばたき俺の肩にとまった。

「親ってのは、いわば止まり木のような存在ネ。自分というもののはじまりであり、進むべき道に迷った時に帰れる場所でもあるワ。自分が自分でいられる存在が武蔵にはいるのヨ。だから、羨ましいネ」

 不意にオームの爪が肩に食い込む。

「アタシにとって、アイツは止まり木だった……。何ものにも染まることのない、吸い込まれるようなブラックに憧れていた。その背中をずっと追いかけていたかった……。でも、もうアタシの止まり木は存在しない。帰るべき場所はないノ。だから、力尽きるまで飛び続けて、せめてアイツが言った『自由』という言葉の意味だけは見つけてみせるワ」

 そう言うと、オームは俺の肩から降りて背中を向けた。

「オームちゃん、お前、死ぬ気じゃないだろうな?」

 その背中がすすけて見えた。

「まさかぁ~。アタシはこの島を出て、いいオトコを見つけるまで死なないワ。イキがいを見つけたのヨ。だから、大丈夫ネ」

 振り返ったオームが澱みなくそう答えたので、俺は安堵のため息を漏らした。

 腕時計が『ピピ』と鳴り、作戦開始の合図を告げた。




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