第三章 「鎖に繋がれしもの」 3
「なんにしろ、無事、鳥たちを仲間に出来たようで良かったよ。で、どう説得したんだよ?」
「シリたい?」と体をくねらせるオヤジをスルーして、俺はトリスタンに挨拶した。
「ヨロシク」と控え目に会釈するトリスタン。鳥ゆえに表情がないので、俺に対してどんな感情を抱いたのか分からない。
それにしても筋肉質ないい体つきをしている。
「あんたもナンバーズなのか?」
「ワシは62番だ」
迷いなく答えるトリスタン。
「どうやら武蔵ちゃんもこの島のことを色々と聞いたみたいね」
訳知り顔のオヤジに俺はうなずいてみせる。
「この島では、遺伝子操作で究極の生命体を創り出す実験をしているって言ってたけど、ナンバーズたちが究極生命体って認識でいいのか?」
「どうかしらね? それが目的かは分からないけれど、何か意味があるのは確かだと思うわ」
「そうか……」
オヤジもそこまで詳しい情報は持っていないようだ。
俺にはイネコが言っていた『人類リセット計画』が気になって仕方がなかった。この島はイネコがいた研究所と深く関わっているはずなので、何か情報が得られるかと思ったのだが……。
「まっ、それは、ここの人間を締めあげて教えてもらいましょ」
うつむきかけた俺に、オヤジは自らの尻を向けてキュッっと締めてみせる。
ったく、わざとやってるのか無意識なのか。オヤジの前向きさには頭が下がる。
「そうだな……。その方が早いな。で、どうこの壁を乗り越えるんだ?」
島の中心を囲むようにそそり立っている高い壁を示す。
「島の動物たちを集めて陽動作戦で施設に侵入するってのはいいんだけど、どう敷地内に入るんだ?」
研究施設らしき建物は壁でぐるりと囲まれている。出入りするための門はあるが、今は固く閉ざされている。
「もしかして、すでに内通者を送り込んでいて、インターホンを鳴らして開けてもらえるとか言うんじゃないよな?」
「まさか~。さすがにそこまで準備万端じゃないわよ~」
それじゃあどうするんだと言いかけた俺を制してオヤジは空を指差す。
「上から攻めるのよ」
たしかに高い壁で覆われているが、それ以外、特に障害物はない。しかし、この壁を飛び越えるのには世界新でも出す必要がありそうだ。となると……。
「なるほど。ハシゴか何かを使って壁を乗り越えようってつもりか?」
おあつらえ向きに辺りは森なので材料になりそうな材木の調達はそう難しくないはずだ。
「そうじゃないヨ」
不意に甲高い声が聴こえたと思うと、派手な色の鳥が空から舞い降りてオヤジの肩にとまった。




