第三章 「鎖に繋がれしもの」 2
それにしても、ナナコと同じネーミングセンスとはな……。自らの思考の単純さにため息をつきつつ天を仰ぐ。
と、空が一瞬キラリと光った。一番星かと思ったそれは丸い黒点になり、徐々に大きくなっていく。
そう。それは俺のいる場所へと加速度を上げ、落ちてきていた。
「――っ!」
咄嗟に俺は横っ飛びして落下物をかわす。その直後、それは土煙を上げ地上へと舞い降りた。
敵襲か!? その場にいた全員が身構える。だが、俺は地面にめり込んだ黒い物体に冷静に声をかけた。
「オヤジ……。あんた、一体どこから登場するんだよ?」
「お、ま、た♪」
ガニ股で大地を踏みしめているオヤジがニヤリと顔を上げる。
「おまたじゃないよ。一歩間違えれば、死んでたぞ」
「大丈夫よ。落下時の耐久テストは十分してるから」
「いや、オヤジじゃなくて俺が死ぬってことだよ」
呆れ顔を向ける俺の肩をポンポンと叩いてオヤジが立ち上がる。
「それはないわよ。アタシはそんなヘマは絶対にしないから」
「ヘマもなにも自由落下しているのに、オヤジにはどうしようもないだろ?」
「まあ、そこは気合と根性で何とでもなるわよ」
自信満々で答えるオヤジ。まっ、この人がそう言うならそうなんだろうと俺は納得する。
「んで、どうしてわざわざ空から降って来たんだ? オヤジのことだから何か理由があるんだろ?」
「まあね」と口角を上げるとオヤジは指笛を吹いた。
と、バサバサと大きな羽をはばたかせて鷲が舞い降りて来た。
身の丈2メートルはありそうなワシだ。全身は褐色なのに対し、頭部が真っ白で精悍な顔つきをしている。
「ハクトウワシのトリスタンよ」
ワシを示してオヤジが告げる。
「トリ――スタン?」
「そっ、この子の名前よ」
「その名前、もしかして、オヤジがつけたのか?」
「ええ。もろちんよ。聞いて驚きなさい。何と、この子は人の言葉が理解出来るだけじゃなくて、お喋りも出来るのよ。オウム返しじゃなくて、自分の意思でお話するのよ。だったら、名前くらい必要よね~ってことで、アタシがお名前をつけさせてもらったの」
いい名前でしょ? とウィンクしてみせるオヤジに素直にうなずく。確かに俺には思いつかない洒落た名前だ。




