第三章 「鎖に繋がれしもの」 1
集合場所に着いた時、森はすっかり夕焼け色に染まっていた。
先に到着していたイネコが俺を出迎える。
イネコの背後には整列した犬たちがおすわりをしている。無事、イヌエリアの奴らを仲間に出来たようだ。
「お待たせしました」
頭を下げると、イネコはかぶりをふって、
「いや、ワシもさっき着いたところじゃ。どうやらそっちも首尾よくいったようじゃな」
俺の背後の列を見てそう言った。
「ええ。ナナコが活躍してくれました。イネコさんの方もうまくいったみたいですね」
後はオヤジが揃えば準備完了だが……。辺りを見回しててもオヤジの姿はなかった。交渉が難航しているのだろうか? 相手は鳥だ。もしかすると、意思疎通が出来ず、そもそも交渉にすらなっていない可能性がある。とは言え、あのオヤジのことだ。きっと今回もうまくやってくれると確信している。だから、今は信じて待つしかない。
続々とネコ科の連中が到着し、しんがりにいたナナコとメスライオンも合流する。
朗らかに再会の挨拶を交わすイネコとナナコ。その一方で、なぜかイネコとメスライオンの間に不穏な空気が漂っている。
「なによ~」
「なんじゃ~」
二匹の間で火花が飛び交う。
どうやらナナコを取り合って争っているらしい。まぁ、二匹の気持ちも分からないではない。ナナコはどこか放っておけないキャラというか、何かと世話をしてあげたくなるからな。
これも犬猫の宿命というやつなのか? ケンカするほど仲がいいとも言うし、本気で仲違いしているようにも見えないし放っておいても問題ないだろう。と思っていたら、
「それくらいにしておけ」
ニーニがメスライオンをいさめた。
「なんだ? お前はこのメスイヌの味方か? ならばプレゼントはやれんな」
「プレゼントぉ~」
いぶかしげな声を上げるニーニをしり目に、メスライオンがナナコへと目で合図する。と、「はいっ」とナナコが俺に可憐な花を差し出してきた。
「さっき摘んでおいたんだ。この作戦が上手くいくように願掛けをしておいたぞ」
手のひらサイズの白い花びら。中心が黄色の花だ。
唐突な出来事に俺は思考停止し、身動きがとれずにいた。
「受け取ってやりなよ」
メスライオンが俺に頭突きをし、
「古来より、戦へと赴く男の無事を願って女は贈り物をするものだ」
ナナコの花の補足を付け加える。
そういうことかと納得し、俺はナナコにお礼を言って花を受け取る。
と、何故かナナコはホッとしたように顔をほころばせた。そう言えば、さっきまではナナコが緊張しているようにも見えた。何か緊張する要素でもあったのだろうか?
「ワシにはないのか~?」
羨ましそうな声を上げるイネコに「もちろん、あるぞ」とナナコは花を渡す。その花は俺と同じもので、続いてゴローにも同じものを渡していた。
期待の眼差しを向けるニーニに対して、
「お前はニーミにもらえ」
メスライオンを指差すナナコ。
「ニーミ?」
まさかと思い訊ねてみると、ナナコはメスライオンに『ニーミ』と名前を付けたそうだ。
その理由はもちろん、メスライオンが『23』番のナンバーズだから『ニーミ』らしい。また、ナナコもニーミにこの島の実情についても粗方話を聞いたとのことだ。




