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豊穣神の異世界食いしんぼう旅  作者: アジュガ
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第6話 レベッカの過去とネフィエの街

 

 皆が寝静まった後もフレイはひとり、ぼんやりとテントの天井を眺めていた。


 色んな思いがぐるぐると胸の中を駆け巡って寝付けなかったのだ。


 こんな時は煙草でも吸えれば良いのだが、生憎こちらの世界に来てすぐに吸い終えてしまった。

 ーー残っていた所で、元の世界の煙草などバッシュ達のいる側で吸う事などできないのだが。



 自分はこの世界でどうしていきたいのだろう。

 魔法やスキルという便利な能力がある代わりに、魔物という恐ろしい存在がいる世界。

 バッシュたちのように誰かの命を守れるほど強いわけでもない。

 ジェラルドの様に動じない心があるわけでもない。


 そんな世界で、自分に何ができるというのだろうか。


 元の世界と同じく畑でもしてのんびり暮らしていくのか?

 それとも、好きな料理を仕事にしてどこかの街で暮らしていくのだろうか。



 それとも⋯⋯


 いくら考えても出口の見えない迷路の中にいるようで、なんだか居心地が悪い。


(眠れねぇ。外の風に当たろう⋯⋯)


 フレイは寝ている皆を起こさないように、静かにテントを出た。


 テントを出たそ小林、満点の星空が輝いている。





「どうしたの?」


 テントから少し離れた場所。大きな木に寄りかかるようにレベッカが座っていた。


「見張りお疲れ様です。ちょっと、寝付けなくて」


「そう⋯⋯ここに座らない?」


 レベッカに誘われるまま、隣に腰を下ろす。



「ーーレベッカさんはどうして冒険者になったんですか?」


 夜空を眺めながら、ふと、浮かんだ疑問をそのままレベッカに尋ねた。


「それしか生きる道がなかったから、かしら」


 夜風に銀色の髪を靡かせながらレベッカがふっと微笑んだ。月明かりに照らされた彼女は息を飲むほど美しかったが、どこか哀しげな目をしている。


「それしか⋯⋯ですか?」


「そう。私ね。戦争孤児なの」


 彼女は空を見上げながら、ぽつりぽつりと話し始めた。


「10年以上前にね。私の暮らしてた国は戦争で滅んだの。その時に親も兄弟も友達もみんな死んじゃって……この国に逃げてきたのよ」


 少しだけ苦しそうに言葉を紡ぐ彼女の話を、フレイは黙って耳を傾けた。




 13年前。


 レベッカが戦禍を逃れ、命からがらたどり着いたアドリア王国は当時、近隣の国々から逃げてきた戦争孤児で溢れ返り、何処の孤児院もパンク寸前だった。

 当時12歳だったレベッカはスキル持ちで年齢も上だったという事もあり、孤児院には入れてもらえず働く事になったのだ。


 だが、いくら戦闘スキル持ちとはいえ、全くの実践経験もなない者が騎士団や衛兵などで簡単に雇ってもらえる訳はない。


 しかも、戦争から逃げてきたのは何も子供達だけではなかった。大人たちも多く亡命していて、街は人で溢れていた。

 人が居るということは、それだけ働き手がいるということ。

 小間使いでもさせてもらえればよかったのだが、ガリガリで痩せっぽっちだったレベッカに仕事を任せてくれる者などいる筈もなく。

 途方に暮れている時にバッシュに出会ったのだ。



 "俺と一緒に冒険者にならないか?"



 既にソロ冒険者として活動していたバッシュに戦闘を教えて貰い、薬草摘みなど簡単な依頼からこなしていった。最初のうちは宿代など払えるはずもなく、街の隅っこで2人縮こまって夜を明かしたことも多々あった。

 魔物とも闘えるようになってからも、大怪我も何度もしたし死にそうな目にあった事もあったそうだ。




「ーー何年もお金を貯めて、やっと魔導具を手に入れて、初めて魔法が使えるようななった時は嬉しかったなぁ」


 そう言うと、レベッカは懐かしそうに笑った。そこに先程の愁はない。


「でもね。最初は生きるためになった冒険者だけど、今はとっても楽しいのよ!誰かの役に立てるのも嬉しいし!素敵な出会いもあるし!そりゃあ、大変なことも悲しい事もたくさんあるけどね!」


「⋯⋯そうだったんですか」


 自分に話すには辛い記憶だってあっただろう。「話してくれてありがとうございます」とフレイが呟くと、レベッカの表情がふわりと緩んだ。


「いいえ。だってフレイ、悩んでるんでしょ?これからどうするか?」


「えっ!?なんでわかったんですか!?」


「だってーー」


 レベッカは真っ直ぐとフレイの瞳を見つめた。見つめられて気恥ずかしいはずなのに、心を覗き込むような澄み切った彼女の眼差しからフレイは目を逸らせない。


「だって、あの時の私と同じ顔をしてたから」


 そう言うと彼女は、えへへっとすぐに可憐な少女の様に笑って見せた。

 フレイの心に、ぼんやりとだが真っ暗な闇の中に一筋の光が見えた気がした。








□□□□□□□□□□












「着いたぁー!!」


 ネフィエの街の門の近くで、フレイは両手を高く挙げ歓喜に震えていた。

 早朝から野営地を出発して歩き続け、なんとか夕方になる前にネフィエの街にたどり着いたのだ。




 街に入る門の手前で、モリスはペコペコと何度も頭を下げる。


「フレイさん。荷車を持って頂いて本当に助かりました!」


 肩を痛めたモリスが荷車を引くことができなかったので、先程までフレイが(バク)の中に荷車ごと荷物を収納していたのだ。


「バッシュさん達も。貴方達の様な有名冒険者に護衛してもらえるなんて本当に助かりました。この護衛のお代は、お金を手に入れたら必ずお支払いしますので!!」


 モリスの言葉を聞いてフレイはハッとする。

 それもそうだ。バッシュたちはジェラルドに雇われて護衛の任務をしていたのだ。彼等だって生活のために仕事をしてるのに、まさか自分だけ代金を払わないなんてわけにはいかない。


 フレイが「俺もーー」と言いかけた言葉を、バッシュが首を横に振って止めた。


「2人とも。金のことなら気にしないでくれ。俺たちが勝手に言い出したことだ」


「でも、ジェラルドさんはちゃんとお金を払って依頼してますし!!」


 慌てるフレイに、ジェラルドも同じく首を振った。


「フレイさん。私はあの時構わないと言いました。それに彼等が代金はいらないと言っているんだから、それでいいんですよ」


 ジェラルドが最初に出会った時のような、人の良さそうな笑みを浮かべてフレイとモリスを宥めた。


「その代わり・。」


 ジェラルドが言葉を続ける。


「フレイさん!その服、本当に譲って下さいね!!?お約束した通り、明日!必ずうちのお店に遊びに来てくださいね!!か!な!ら!ず!ですからね!?」


「は!はいぃぃッ!!!」


 断りでもしたら夢に化けて出てきそうな勢いのジェラルドに、フレイは思わず背筋をぴーんと伸ばして返事をする。


「よろしくお願いしますね!モリスさんは今日は一泊して明日マルシェで販売するんでしたっけ?妻と必ず野菜を買いに行きますから!」


「はい。是非お待ちしてます。もちろんオマケするんで!」


「おや!それは楽しみですね!」


 モリスは何度も何度も頭を下げながら、門を潜って行った。





「あの⋯⋯」


 フレイが急に心配になりバッシュに声を掛ける。


「俺、身分を証明するものとか何にも持ってないんですけど、大丈夫ですかね?」


「あぁ。身分を証明できるものがない者はあちらの列に並ぶんだが、私が君の身元引き受け人になろう」


 聞けばギルドに登録していない者が街に入るには保証金が必要らしいが、身元のしっかりした引受人がいれば一緒に街に入ることも出来るそうなのだ。


 ジェラルドは門番の元に近づいていく。門番は彼の姿を確認すると慌てて敬礼をしていた。

 門番と暫く話をしていたジェラルドがフレイを呼ぶ。


「フレイ。ついてきてくれ」


 身体検査と(バク)の中身の確認だけされると、呆気ないほどすんなりと門を通された。


「ユーリス。ジェラルドさんの店まで荷馬車を回してくれるか?俺とレベッカは先にギルドに行って報告をしてくる」


「わかった」


「それじゃあ、フレイさんまた明日!!待ってますからね!!」


 ユーリスが荷馬車をゆっくりと出発させる。再度荷馬車に乗り込んだジェラルドは、手をぶんぶん振りながらユーリス共に去っていった。



「行こう。ギルドはこっちだ」



 ネフィエの街の門を潜ると、その幻想的な美しさにフレイは息を呑んだ。

 白い塗壁の古い家が建ち並び、敷石がアーチを描くように敷き詰められた道を馬車が行き交う。

広場のような場所では、樹木が植栽された日陰にエキゾチックな噴水があり、子供たちがびしょ濡れになりながら、楽しそうに水遊びをしていた。

 

 初めて見るその景色に、フレイは目を見開きながらキョロキョロと辺りを見回していた。

 通りを歩く人々は、肌の色も、髪も目も様々な色をしていた。獣人(セリアーヌ)と呼ばれる人々も見受けられる。


 通りの反対を歩いているのは猫の獣人(セリアーヌ)の女性だろうか。いわゆるネコ耳というものが頭の上に生えていて、腰からは長い尻尾がゆらゆらと揺れている。スリットの深いスカートからは下半身に生えたふわふわの毛が見えており、足も猫や虎のような形で鋭い爪が生えていた。


 整備された石畳の道を暫く歩くと、一つの通りの前でバッシュが足を止めた。


「ここがギルドだ。さぁ、入ろうか」


 そこには、意匠を凝らした三角屋根の建物が何棟も立ち並ぶ通りだった。

 その内の一つの建物のドアを開け、中に入って行くバッシュに続いた。





 ギルドの中は大勢の人で賑わっていた。

 入ってすぐ場所にはテーブル席が設置され、そこで休む人たちの姿があった。討伐したのであろう大きな魔物を持ち込んでいる冒険者らしき姿もある。

 奥に進むと、首元に大きなリボンの付いた白のブラウスに、胸下から腰までがコルセット状になったハイウエストの黒のロングスカートを履いた女性達が慌ただしたく働いていた。皆が揃いの服を着ているので彼女たちがギルドの女性職員なのだろう。


「ここでギルド登録ができる。ついでにスキルと魔法適性のチェックをしてもらうといい」


「あの⋯⋯ここで果物の買取だけってやって貰えないんですかね?」


「ギルド登録しなければ買い取って貰えないんだ。だが、登録してギルドカードを作ればこれからの身分証代わりになる。ここの街に残るにしろ、旅に出るにしろこれから必ず必要になるぞ?」


 なんと言おうかフレイが考えているうちに、バッシュは無言を了承と取ったのかギルドの受付に行ってしまった。


(とうとう来てしまったぁーッ!!!!!)


 フレイは心の中で絶叫しながら、自分のスキルを思い出す。


(やっぱり、俺のスキル《鑑定(プラス)》って大騒ぎになるんじゃないか!?いや、その前にの種族のとこって異邦人とかもチェックするとバレちまうんじゃないのか!?選ばれし異邦人とかいって祀り上げられたりしないだろうな!?)


 この世界でどう生きていくかはまだ完全には決めていなかったが、バクの事もあるので派手に目立つことだけは勘弁願いたい。


「ーーレベッカさん?俺みたいなどこの誰かもわからないやつが、本当にギルドに登録できるんですかね?」


 フレイは隣で一緒に待っていてくれたレベッカにそれとなく確認する。


「心配しないで。親に捨てられた子や戦争孤児の子。他国から亡命してきた人。そういった戸籍のない人でも、ギルドに登録してちゃんと仕事を得ることが出来るように戸籍の有無は問わないのよ。もちろん前科があれば別だけど」


(スキルチェックを避ける口実が思いつかない!!)


 どんなに唸っても解決策が見つからない。そうこうしているうちに、受付にいるバッシュから声が掛かった。



「フレイ!こっちにきてくれ。スキルと魔法適性のチェックの準備ができた」


「ーーッ!!」


 名前を呼ばれて心臓がどきんと跳ねた。


 ぎぎぎぎっ…と、まるで油の差していない機械みたいな動きで、バッシュの方を振り向く。

 フレイはゆっくり歩き出すが、よく見ると左右の手足が揃っている。


「そんなに緊張しなくて大丈夫だ。ここに手を置いてくれ」


 いっその事、腹でも痛いと言って逃げ出そうかとも思ったがこの世界で生きて行く以上、後々の事を考えるのであればバッシュの言う通りギルドに登録しておいた方がいいだろう。


 フレイはごくりと唾を飲み込むと、大きな台座の前に立った。


 台座には魔法陣のような模様が掘られていて、円柱の天辺の真ん中には七色に輝く大きな宝石が埋め込まれていた。

 その物々しい雰囲気のそれに圧倒されながらも、フレイは覚悟を決めた。



(ええい!!!ままよ!!)



 大きく息を吐くとフレイは勢いよく台座に手を置いた。

































「はーい。チェック完了でーす!!スキルと魔法適性は……ふむふむ。じゃあ、説明するんでこちらにどうぞ〜!」


「⋯⋯へ?」


 あの物々しい台座から光が放たれる訳でもない。

 スキルを見た、ギルド職員が大騒ぎするわけでもない。


 あまりに呆気ない終わり方に、フレイはポカンとしたまま動けずにいた。


「ほら?フレイ!チェック終わったわよ?」


 レベッカに肩を叩かれて、ようやくハッと気がつく。レベッカとバッシュに付き添われてフレイはギルド職員に呼ばれた場所に移動した。


「じゃあ、説明しますね!」


 カウンター越しに活発そうなふわふわした赤毛の小柄な女性が、フレイのチェック結果を話始めた。


「えーと。フレイさんの魔法適性は水・土・木です。人間(ヒューマ)にしては魔法適性が多い方ですね!珍しい木魔法も持ってますし。あと、スキルですけどぉ・・。」


「⋯⋯ ⋯⋯!」


 フレイがごくりと固唾を飲む。


「こちらは2つあって《栽培》スキルと《()()》スキルをお持ちでしたぁ!」


「え?《()()》スキル⋯⋯ですか?」


(《鑑定(プラス)》じゃなくて?)


 対応していた受付職員は、透明なガラスの周りに美しい装飾の施されたタブレットの様な魔導具をフレイに見せた。



【名前】フレイ

【スキル】栽培、鑑定

【魔法適性】土魔法、水魔法、木魔法


 そこにはフレイ自身で鑑定したものよりも、簡素な情報だけが映し出されていた。


(本当に《()()》になってる⋯⋯?どうなってんだ?)


 どうしてこんな事になっているのか皆目検討もつかないが、とりあえず大騒ぎにならず良かったと、フレイはほっと胸を撫で下ろした。


「凄いじゃない!鑑定スキル持ってたのね!」


「きっと、今まで意識してなかったから使えなかったんだな」


「アハハ⋯⋯」


 自分のことの様に喜んでくれる2人に「いや!めっちゃくちゃ使ってました!」とは口が裂けても言えないなと苦笑いする。そうこうしている内に、2人はギルドマスターに会いにいくと言ってその場を離れていった。



 2人が離れると、「ところで」と受付職員がフレイに切り出す。


「フレイさんはこれからどういったご職業に就かれるかお決まりですか?」


「えと、まだ決めてないです」


 フレイの返事を聞いた受付職員の可愛らしい目が、まるで獲物を見つけた鷹のようにキラリと光った。


「フレイさんと同じ栽培スキルをお持ちの方ですと、育てた野菜をマルシェで販売されている方が多いです!ですが!!!鑑定スキル持ちなら断然ギルド職員がオススメですよぉ!」


 快活な受付職員は、ばーーん!!と勢いよくカウンターに両手を付いて身を乗り出す。


「ギ、ギルド職員ですか?」


 あまりの勢いにたじろぐフレイに、受付職員はさらにたたみたける。


「そうでぇーす!ギルド職員は高収入職で人気なんです!鑑定スキル持ちの方は、ギルドに持ち込まれた物の鑑定買取担当職員として重宝されてるんですよ!しかも!最近はこの辺りも魔物の出現報告が多くて、買取担当職員の手が足りないため当ギルドも絶賛募集中なのです!ーーと、いうことでいかがですか!?!?ギルド職員!!」


 カウンターに身を乗り出しながら、フレイの答えを待つ彼女の目が爛々と輝いている。若干鼻息まで荒くなっているのは気のせいだろうか。


「か、考えときます⋯⋯」


 受付職員のあまりの熱の入りように気圧されそうになりながら、フレイがそう答えると、彼女はがっくりと肩を落としてカウンターの中に収まった。

 きっと、人材不足で今すぐ猫の手も借りたいほどの忙しさなんだろう。


「⋯⋯そうですか。是非、ご検討ください」


「とりあえずギルド登録だけお願いします」


「かしこまりました!ギルド登録には登録料がかかります。また職業が未選択ですと仮登録になりますが宜しいですか?」


 気を取り直した受付職員は、テキパキと作業を進め始める。


「わかりました。登録料のことですけど、道中で見つけた果実の買取をしていただきたくて。その買取代金の中から、ギルド登録料を引いてもらうことってできますか?実は今、お金を全く持っていなくて⋯⋯」


「どういった果実でしょうか?」


一日果(イチニチカ)です。あと、他にもいくつか」


 (バク)の中から果実取り出してカウンターに乗せた。もちろん、自分の食糧分を取っておくのを忘れない。

 思わぬ量に受付職員は驚いたのか、目をぱちくりさせた。


「随分たくさんありますね!わかりました!これだけあるのでしたら、ギルド登録料も問題なく払っていただける数ですので、買取代金から差引させていただきますね!では、こちらの果物はお預かりします。鑑定して参りますので、少々お待ちください!」


 そう言い残し、受付職員は果実を奥に運んで行った。すると別の職員がフレイの対面に立ち、カードのようなものを差し出した。


 それは先程見たタブレット型の魔導具をカードサイズにしたものような物だった。

 中の透明なガラス板には金色で文字が表示されている。


【名前】フレイ 【職業】なし


「では、こちらがギルドカードになります。職業登録が完了しましたら、大きな街や他国に入る際の身分証としてもお使い頂けます」


「随分シンプルなんですね。もっと、こう、使えるスキルとか魔法とか書いてあるのかと思いました」


「ギルドメンバーの身の安全を守るためです。レアスキルをお持ちの方は狙われる事も多いですので、カード文面では確認できないようになっております。カード内に使用出来るスキルや魔法、また冒険者の方であれば、達成した依頼内容や討伐した魔物などの情報が記録されるようになっています。記録はギルドで行いますので、魔物を討伐した際は必ず討伐証明部位をお持ちください。また、カード内の情報は各ギルドに共有されるようになっております。さらに注意点ですが、もし犯罪を犯した場合は、ギルド登録が即刻抹消されますのでご注意ください」


 先程の職員とは違い、彼女は水色の長い髪を耳に掛け淡々と説明を続ける。


「街に入る時などカードを使用する際は名前と共にカードをご提示ください。最後に注意点ですが、不正使用防止のためカード所有者以外がカードを使用したり、ギルド登録を抹消されたにも関わらずギルドカードを使用した場合は、カードが赤く光るようになっております。ーーでは使用者の登録をいたしますので、こちらに人差し指を置いてください」


 職員に指定された箇所を見ると、カードの右端に小さな魔法陣が描かれた箇所がある。まるで、指紋認証みたいだなと思いながら、フレイはそこに人差し指を置いた。


「ありがとうございました。これで仮登録完了となります。本登録のためご職業が決定しましたら、必ずギルドまでお越し下さい」


 ペコリと丁寧なお辞儀をすると、ギルド職員は早足で別の人の対応に向かっていった。

 入れ替わりで先程の受付職員が走ってやって来る。


「フレイさん!お待たせしました!買取代金の説明をさせていただきますね!」


 先程のタブレットの様な魔導具を差し出すと、フレイと共に買取価格の確認作業を始めた。




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