プロローグ①
「亨哉、貴様は今日14歳の誕生日を受けて成人になった。私が宣言したとおり、貴様には今日をもってこの家から出て行ってもらう。理由はわかっているな?」
「はい、父上。魔法適性がない僕に価値は無いとわかっております。今日この日まで、僕を育ててありがとうございました。感謝しています。」
「確かに貴様には魔法の適正はないが、だからと言って貴様を診断の日の後に追放をする訳にはいかなかった。これでも貴様は私の息子だ。貴様が成人するまで育てるのが親としての義務だ。だから感謝される筋合いはない。」
「それでも、ありがとうございました。」
「もう良い。餞別だ。額はそれなりに多いが、だからと言って無駄遣いするんじゃない。有効活用するんだ。」
「何から何までありがとうございました。準備はすでに済ませているので、ここから出ます。では。」
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「亨哉、お前は今日家を出るんだな。」
「兄さんか。そうだよ、僕は今日出る。」
「そうか...俺はお前がうらやましい。あの家は俺にとって窮屈すぎる。俺も家から出たいが、父上は許してくれないだろうな。俺もお前と同じ魔法不適合者がよかったと思う日は今日だけだろうな。」
「確かにあの家は窮屈だけど...外と比べて危険が無く、安全に暮らせるんだ。それと、魔法適合者は家から追放される分自由にはなれるだろうけど、生きるだけでも難しいはずだよ。それじゃあ、僕はもう行くよ。さよなら兄さん、頑張ってね。」
「ああ。達者でな、亨哉。」
この日、白藤亨哉は家から出ることとなり、彼は名字を剥奪された。
外の世界で亨哉に何が待っているのか、それは誰も知りえないことだ。