441 寓話
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「真実 真実 ねぇ」
ソレは今の『私』が知っている事?
もしくは語れる話? いえ、覚えている部分、、と言う意味合いなのだろうか?
それ以外にも様々な憶測が浮かぶ中
時間を持て余していたという事もあるのだけれど
「そういった話は貴女の方が詳しいのでは無いのかしら?」
先に答えを貰えるかどうかを問いてみただけ
ちょっとした遊び心で愛でてみただけ
だったのに
とても意外だった
「っっ! 貴女が!あんな!? いえ 違う、恐らく 貴女では無いのでしょう、失礼しました」
本心を抉られたかの様
瞳孔を一気に広げてから泣き出しそうな表情を見せ
喉と歯が鳴る程に感情を殺したまま
「聞き方を変えます 貴女の、本当に望む世界は どんな風景で、、どう したいのですか 」
脳へと訴えかけて来た
少し、意地悪をしてしまったかしら
でもね
気が付いたのは此処最近とか、貴女が何かをしたとかでも無くて
言うのなら「初めまして」から
貴女の振る舞いは違和感でしか無く、、とても不思議だった
それはそうでしょう?
与えられた業務だけでなく、細かく枝分かれする一つ一つを繋ぐ事柄までを調べ上げてからの報告
かと思えば興味の無い人の話は上の空だったり
なのに周りへの気配りを忘れない
と言うよりも
何かに追われているのか見張っているのか、と思う程に敏感で
通常のルーティン、所謂定型業務であれば愛想だって抜群に良い笑顔
全てを完璧にこなしていた
だからこそ
浮いて見えた
明らかだったのは第一印象関係無しに、、重要人物? そう、恐らく貴女の中のキーマン
それらの話題についての事柄は割ってでも入って来た事
勿論トップである私へと強く向けられているという事も直ぐに分かった
だって
私は貴女の上司なのよ?
何年も見て来た
そんな娘が今回、文字通り命をかけて必死になっているのだもの
否が応でも脳裏では仮説を巡ってしまうというものでしょう
「やっぱり 面白いわね貴女との対話」
だから私達は
両者互いに
知ってか知らずか
正しいのかも分からない『それらしいもの』に繋がる言葉を羅列した
まず、私と言う個体はキメラやキマイラといった、所謂ハーフでは無いと言う事
まぁこれは何十年も羨ましく思っていた魔法とかそういった力が使えないのだから 確定なのでしょうね
そして
理論上可能だが作り出さなかった、、機械人形でも無い
こうやって輸血が可能であるのだから一番分かり易いでしょう?
しかしそれでも
『創られた者』なのかもしれない
なんて
そんな事
常日頃から思考していた
当たり前よね
単純に、こんなにも貴重な素体、私でも一番先に保存と複製を優先するでしょう
手っ取り早く考えるのなら人造人間
もしくはクローンの類
狙いはこの血か脳の為なのだからより確実なものを選ぶ
願わくば是非その経過を拝見したいものだったわ?
、、それと
どうしても思い出せない、何度も夢に見る風景があってね
これは脳波に異常がある訳では無く
あぁ いえ 夢 でも無いのよね
今ならしっくりと来る風景
確信ではないのだけれど
記憶の書き換えが行われているのなら
あの忌々しい、なんて言うのはエゴなのでしょうけど
機械の国が滅んだのも想定出来るもの
もし私なら と
何万、何億通りも思考したのだから
真実なのでしょうね
「さて、ハル? 貴女も 少しだけで良いから、面白い話をしてくれないのかしら」
一旦の輸血が完了し
彼女は青白い顔で口を開いた
「、、私の正体とかそういう話でしょうか?」
「ふふ、なんで聞かれたら口にしちゃうのかしら」
「相手は選んでいます 多分 一応」
「そう、本心かもしれないけど十分薬は効いていそうね 良かったわ?殆どの事は教えたつもりだし、我ながら理解度の幅に溜息が零れるけど」
「え?」
だからやっぱり
全てを知りたい
知りたいから
「あなた達に任せる事にするわ?」
その言葉に
僕は薄っすらと目覚め
確認しようとするもはっきりしない脳は、まだ血液が辿り着いていないのだろう
だが恐らくは室長の声だ
そんな自分にも語る言葉を忘れない様
懸命にぼやける瞳を開けようとしてそのまま、近くで虚ろ気にしているフェリスの横顔が映った
途端
「許しませんっ!!こんな こんなぁぁああ」
教え子か、助手?
女性の叫び声が耳に響いた
答え合わせと含ませと




