394 明滅
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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『早朝から』途切れる事無く空を舞う煙
それに伴い、ここ最近では胃を刺激する香りまで立ち込める
だが本日ソレが漂い始めたのはつい先程の事だ
「おああ!先に汁だけでも出すか? あ~でも芋蒸かすのに使うんだから~ちょい後のが良いな?」
二度寝をかました三十路が『一人』
「でも場繋ぎにとりあえず煮た根菜でも齧っといてもらって~ その汁だけでもおぉ?」
厨房を行ったり来たり
「ん!?待てよ?、、いやいやいや駄目だ、あっぶ、コレは炊き込みに使うんだったわ」
ああでもないこうでもないと
「おあぁ!!そうだ!漬けといた卵があったじゃああん でえええ、これをお供にすれば! どうだってんだあああ」
狂喜乱舞
いや
ただ喜んでいるってだけでも無い為、言い回し的には少し違うのかもしれないのだが
寝起きで飛んで来たニュースが
涙が止まらないくらいには嬉し過ぎて
厨房で声を出すってだけでも衛生面上は申し訳無い!
だけど今のテンションはしょうがないってもんだ
たかだか寝坊がなんだってくらいにはテンション高く
「うおおおお」
引き続き懸命に鍋を振る
そしてまだまだ止まれずに
「あれ?あっれれぇ?おっかしぃな~」
某少年探偵が訪れた訳では無いのだが
「臭みは取れてんだけど、なんだぁ? 油分?は十分過ぎるし コクぅ?」
似合わない表情で口を尖らせ
「ちょっと味見してくんない?」
すぐ隣
両手が塞がっている青年へと小皿を差し出す
「え、今ですか? ふふ、と言うか情緒何処に置いて来たんですか」
普段は無茶ぶりする側では無い為、不思議なものだ
「あぁ情緒ならさっき火力が足りなかったかったから一緒に放っちまったかも 多分、今完全に不安定だわ あははははさぁ!味を見てくれやす~」
こんな面倒なやり取りに対応してくれているのは
跳ね髪の中性的な青年だ
壊れた扉を自らの靴先に立て乗せ
「あ~でもジンさん、見たら分かる通りこういう状態ですしもう少しだけ待って下さいね~」
器用に片手で傾けてから薪で一度固定し
角度の決めへと入る
うん
赤鬼が早朝破損させた裏口行きの扉です
それを修理しながらも苦い顔一つせずに相手をしてくれている
ほんっと男性陣はなんって良い子揃いなのでしょう!
「アーンする?」
変な意味じゃなく自然と言葉が出たのはこのテンションのせいもあるのだろう
スプーンを手に持ち
「ぁ、でもこれは流石に なんかn」
小皿の汁を掬ってから自分の気持ち悪さに気が付いた
考え無しに救ってくれたのは
「ジーン」
勢い良く幕を潜った幼女だ
「ぬぉおう 何?!ありがとうどうしたー?」
とか意味不明な台詞を
構う筈無く
「えっとね?なんかコレが美味しくないんだって~」
両手で木製のボウルを差し出す
「 え? はぁ?材料提供者以外はタダ飯だっつのに文句まで出始めたってか? 慣れって怖ぇな~文句あんなら食うなっつぅのに」
「怒らないの!」
「 はい、サセン んで?どれだって!?」
「このお野菜!これだけ味が薄いって言ってるのだわ?」
「薄い? って、ソレ 茹でただけの野菜よ?」
「うん、お野菜にはドレッシングが欲しいって」
本当は手を止めてる時間なんて無いのだが
・・・
一瞬だけ
「ohfun?」
何かがバグった
だって
今までンな事言って来たヤツが居ただろうか
いいや居ないね!俺の料理の腕がどうのじゃない!!ましてや今は後ろにシフ先生が居るんだぜ?
天下の巫女様だって厨房の向こうに居るって訳なんだよ
帰って来てるから
だからこそ飯を大急ぎで、、
いや
待てよ?
「ロゼ、それってさ」
実はこう見えて
「誰が言ってたの?」
意外と冷静ではあるんだ
今は怖い者が無いくらいにハッピーだったし
「え、あぁ! そう!」
皆の美味そうな表情だって浮かんでた
その筈だったんだが
「あの娘が来てるのよ」
一気に脳内が巻き戻し機能を動かす
【キドナっちがお兄さんをお呼びらしいんスわ】
俺は一度思い切りに息を呑み
ボウルを受け取ってから厨房を出た
久々過ぎて書き方を忘れてた訳じゃないですよ?




