40 病気
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
8/15 11:00
行列の先頭にはまるで笏を持たない閻魔の様な佇まいで巫女が腕組をしている
「10番地区の石橋が壊れちゃいまして」
「役場に申請して直してもらえ ここじゃねえ」
「南門の先で最近魔物が多くて」
「分かった、私も城に用があるから伝えて早急に対応させる」
「自分らの地域の貴族様達が収拾つかないくらいモメてて」
「あとでジジィに一筆書かせて送らせる、それでダメならもっかい来い多分直接向かうだろう」
「幾つかの団体とトラブっちゃって、働き口が無くなっちゃいまして」
「他紹介してもどうせモメんだろ?謝るか自分でなんか立ち上げろ」
「嫁と喧嘩しちゃって」
「知らん帰れ」
「シエルちゃん来るんだったらもっと卵持ってきたのに~」
「一回帰って持って来い」
多種多様
話がしたい、話を聞いてもらたい連中も大量にいたが鬼の形相で話を切り捨てられる
そしていつもの事の様に庭園で井戸端会議を始めている
そういう場所なのだ
「クソが、いちいち聞いてるからこんな行列出来んだろが」
隣で丁寧に話を聞いて頷く神父を睨む
「シエル様~、この子達で最後です」
従者が最後尾を知らせ
前には先程の姉弟が並ぶ
「あぁ、お前らか」
「あの、さっきは その、、ごめんなさい」
「い~い~、、んで、要件は?」
面倒そうな表情でひらひらと手をやる
「、、、姉ちゃん ほら」
弟に押され姉が前に出る
「いえ、私は 別に」
「ぁ?」
「違うんだ!姉ちゃん病気なんだ 多分、重い、、病気 なんです」
「医者に行け」
「まぁまぁ~シエル様~ う~ん、詳しく教えてくれるかな~」
女子供にも容赦が無いので咄嗟に従者が声を出す
「いえ、もう 良いん」
「良くないよ! 手首だってこんななんだ」
弟が言葉を遮り姉の袖をまくる
「、、、これは」
従者は他の者から見えぬ様に壁となる
自傷の跡だ
何度切ったのか分からない程の線があり
治る前に別の傷が増え、化膿し手首から10センチ程が酷く腫れている
「これを治したいのか?」
巫女は彼女の瞳を深く、しっかりと見つめる
のだが
「べつに、、いいんです」
その視線に巫女の姿は映らない
「治してもらおうよ! 綺麗にしてもらったら気分も良くなるって」
「もう いいから」
「姉ちゃん!」
「、、あ~、腹減った」
!?
巫女の一言は一瞬だけ時を止めた
「腹減った、もう昼だ 卵ばあさんが庭でくっちゃべってるから多分今日は持って来ない」
「え? え?」
「結局ジンも弁当を作らなかったから今日、今のままじゃ何も食べられない、お前ら治して欲しいって来てんだからいくらか持ってんだろ? いくぞ」
巫女は立ち上がりスカートを軽くはたくと先陣を切る
「あ、えぇ」
『大聖堂に仕える偉い巫女様』の奇行は姉弟を圧倒した
「え! え~、と い、行こうか?」
(あれ、行こうかで良いのか!?)
小さな子達にさらっとカツアゲする主に従者も戸惑うがとりあえず二人の背中を優しく押す
四人は王都中央の広場に到着した
「あ、あの、すいません 俺達、じつはその 貧乏で そんなに持って無いんです」
「ぁ? じゃあ、あそこのサンドイッチ買って来い」
「え、あ それくらいなら」
「ダッシュ!」
「は、はい~」
いじめっ子のソレである
(シエル様、、本気で子供から奢ってもらう気なんですか!?)
「んで? 姉よ 原因は解決出来そうにないのか?」
「いいんです 私 命に嫌われてますし」
「 は?」
眉を寄せる巫女の方をゆっくりと向くのだが視線が合わない
、、光が無く、心ここにあらず
文字にするのなら『波長』が合っていないという感じだ
「嫌なんです もう 何も かも」
「はぁ、命に嫌われている? 何を言ってんだか意味が分からないんだが? クソが浸ってんじゃねえよ気持ち悪い、10代ソコソコで何が分かったんだ?」
巫女は無表情のままに問答する
「シエル様!?」
「た、沢山 足掻いたんです!!」
反応でピントが合った、その拍子に大きな声が出る
「ね、姉ちゃん!? どうしたの」
驚いた弟が急いで駆け寄る
「大丈夫? ほら! 姉ちゃんも食べなよ」
「もう!放っておいてよ!!」
払う手の平でパンが飛ぶ
宙を舞ったソレは無残にも砂利の上へと巻き散らかった
「あ、、」
「あ、、、ご、ごめ」
広場の賑やかさが
噴水のせせらぎが
煩く響く
この子達の話を下書きでバリバリ書いたら長い上にかなりの鬱展開になったので機会があれば後でだす?かな? どうしようかな




