356 繚乱
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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辺りが暗くなり、町中にはいつもよりも多めの明かりが灯り始めた
東西南北と王都全体的に騎士が配置され、未だに警戒体制は解けていない
だが緊急事態の為、関所付近から城内にかけて幾つかのフロアが一般開放され、簡易的にではあるが避難所兼野営場が設置された
貴族からの心遣い、、という体だが恐らく民に愛される神父の娘が口利きしたのだろう
巫女はそのまま騎士団の幹部等を捕まえ循環のサイクルを提案、それに伴ったローテーションを組むと直ちに伝達までが行われた
即座に確定された様な事案に反対する者は居らず、スムーズに話が進んだかと思えば怪我人の治療、、
中には助からなかった者もいたらしく 供養は明日まとめて執り行われるんだとか
一通りの体制が整った所で今度は被害の少なかった者達への対応
ここまでの間も二次被害の報告が無かった為、希望者次第では自宅への帰宅も許可が下りた
完全に自己責任だが正直
「国中に兵が居る状態だ、コレで襲われてるんじゃ何処居ようが同じだろ」
との事だ
暫くは様子を伺っていた住民達も帰れる者達だけがぱらりぱらりと帰路へと向かう
大聖堂に集まっていた付近の人間も同様、巫女達の帰りを待てず、、いや、少し違う
待つ者と『朝から来る者』とが分かれ、話し合いが行われ、各自ばらけて行った
年配者が多いのに逞しいったらありゃしない
そんな
かなり人の減った
大聖堂の庭先
「待て待て~」
幼女と
「はぁ はぁ 何でこんな時間に はぁ 何でこうなっちゃったかなー」
初老の男が駆け回っている
「、、えっと、これは? えーと?キウエさん でしたっけ?何やってんスか?」
三十路が本日四杯目の寸胴を抱え外へと出て来た
「知らないよぉ って言いたいけどー玉子屋のバァさんがさ~」
指す方向には今しがた到着したであろう馬車が止まっている
「お嬢ちゃん!捕まえてくれるのは助かるんだけどねぇ、踏んづけちゃったりしない様にしてね!? 大事な大事な商品なんだから」
「大丈夫なのよ!そのくらい分かってるわ? 待つのよ~ コカトリスー」
とか言っているが
只のニワトリである
どうやら頑張ってる巫女の為に「産み立てを」とか言って何十羽と運んで来たらしいのだが、、到着と同時に全部逃げ出したんだとか
うん、まぁ、当の本人が居たら本体の方目掛けて行きそうだし防衛本能でも働いたんじゃあなかろうか
流石に面倒臭そうなので
「と、とりあえず最後の芋汁此処置いとくんで一段落したら残りの皆で分けて下さい 俺はえ~っと、前の分とかの洗い物やら明日の仕込みやらやっちゃうんで」
逃げてみた
仕込みは同時進行で進めたし洗い物など今分を煮込みながら終えている
しかしこの時間から再び走り回るとかはアクティブにも程があるってもんだ、少しばかり休憩させてもらう事にする
現状
チエさんはいつの間にやら引率してくれると言う爺、、基、騎士様と共にギルドへ帰ったらしいしカセンは屋上で酒を呷りながら見張りをしてくれている
(急な静けさって感じがしないでもないな)
表では今もバタバタしているであろう事を棚に置き
三十路は建物の裏
ゼブラの墓前で手を合わせる
大物が眠っている割には些か質素な造り
、、っと言うか全体的に、シンプルとかそう言うレベルでは無い
柵やら囲い等はある筈も無く
その場所は裏門から入った者達から即こんにちは
看板替わりの様に、正に「見ろ!」とばかりの晒し放題な訳だ
通常ならこんな扱い許されないのだろうけど、誰が提案したかなんて分かり切っている
何なら本来「正門前に埋めろ」とか真面目に言ってたらしいから怖いったら無い
「此処の顔だもんなぁ? 敷居の無い所も らしいっスね ん?」
ふと目に入った
ごっそりと、、だが綺麗に供えられた花達の中
神父には似合わない物を手に取る
「煙草?」
線香代わりとしては不謹慎な
二本だけが抜かれた新品同然の物
・・・
ジンは少しだけ考えたが元の場所へと戻し
「さてっと~ 電話、してみっか」
伸びをしながら再び厨房の方へと向かった
無許可に三本目を頂き
口に咥えながら
吸いたいから持ってった訳じゃないですからね?




