337 乾酪
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「お、おぉん まさかここでもチエさん顔パスとか、どんだけ顔広いんすか?」
香ばしい匂いが辺りを包み
焼き立てのフランスパン、、よりも長物が刺さった紙袋を抱え三十路がしっくりこない表情をしている
「あはははは、単純に王都で商売する為に間借りしてただけだよ~」
「あ~確かにそっか 王都内で間借りはありっスね? でも、いやうんそれだけじゃなくさ、、って~あ~はいはい ほれ、あっちぃから気を付けろよ?」
幾つか別のパンも入った袋から適当な物を手に取り
足元の幼女へと手渡してから続ける
「差別とかそういうんじゃないんスけど~何って言うか こっちにも色んな人いるんだな~って思っt」
「ジン!これじゃない これじゃないのが欲しいのよ、外がカリカリのやつ」
「え~? カリカリの? あ、これ?こっちね」
ゴソゴソと漁る二人を見て
皆の分までお土産として奢ってくれた魔女は財布を仕舞い込む
「あぁそっか そうだよねーあはは、最初はちょっと戸惑っちゃうよね」
いつも通りの温度でにこにこと笑いながら
俺達は窯焼き店を出て今から聖堂へと向かう所だ
実際ちょっとビックリした
社会経験は豊富な方だし元々言葉の通り結構『決め付けない』性格なのだが
(此処に来て見た目系は特に磨きがかかったし)
パン屋の亭主が
所謂オネエだった
いや、ただのオネエなんじゃなくて
普通にイケメン
なんならシフの様な中性的な感じでも無ければ可愛い系でも無く
バルの様に主人公です!ってな感じのやつでもないガチのイケメン
しかもチエさん曰く
「普通に女の子が好きらしいよ?」って
・・・
狙いが分からん!
気を取り直し、馬に荷を積み
さぁ出発という所で赤鬼が騎士に声を掛けられた
復興が本日付けで無事終わったので丁度今から宴会をするんだとか
カセンは少し悩んだが
「お~ん、じゃあそろそろあっしも大臣を見ておこうかの? 夕過ぎにゃ戻るからジンらは先向かっとくと良い、シエルも酒いるじゃろうしのぉ」
とか言い訳の様な事を吐き出し付いて行ってしまった
(ってかあの娘お金持って無いけど良いのか?)
「とりあえずどうしましょうか、チエさんはもう帰っておきます?」
「そうだね~用事は済ませたしケイちゃん一人でみんなの準備ってのも可哀想だから帰ろっかな?」
「おっふ、なんかすんません あ、すんませんついでにこの荷物らなんですけど、、」
三十路は苦笑いを浮かべ寸胴らを横目で見る
「あっはっは、良いよ良いよ 着いたらオルカ辺りに降ろしてもらうし~」
「サーセンっす」
(本当にこの人とのやり取りは楽だなぁ)
とか平和にやってたのに腰元を引かれた
「んー!んー!! にん!! みえみへ! こへ、むごぉいの ほあ!もみむー」
「え、なんて!? !!? ってすげぇな 凄いけど待って!早速汚してんの!? 用途は合ってる、合ってんだけどさぁ! はぁマジかぁ」
どうするのが正しいのか分からずに溜息が漏れる
それもその筈だ
お嬢が一杯に遠ざけた腕、その手に持つパンから口にかけて伸びているのは自慢だという濃厚なチーズだ
びろんと勢い良く伸びてから弾力を失ったソレは顎から胸元にしっかりと、べったりと、、
新品のエプロンに張り付いている
「ぬあああもぉ~あ~どうすっかな~」
「あら~やっちゃったね~、すぐそこに公園あるからシミにならない様にだけ軽く濯いどこっかぁ」
流石ラフィの育ての親だ
これくらいの事では動じないらしい
「ごめんなさい」
「え? あ、良い良い!大丈夫っぽいし気にすんなって あーしっかし窯、良かったな!? レンガオーブンとか簡単なのリッツに言ったら作れたりしないもんかな~ぁ?」
溜息なんか吐いてしまったもんだから素直な謝罪をされるとこちらが気まずい
からついつい話を逸らしてしまう
「あ、良いねぇ 帰ったらスティルに言って見るよ、朝みたいな薄いパイみたいのじゃなくしっかりしたの作れるしね~」
「マジっすか」
言って見るもんだ
何から何まで便利、、基 有能なエルフ一家だ
自分の分を齧り終え
ふと中央の人集りに目がいった
公園の噴水は止まっている
まだ寒いからだろう
にも関わらず
露出度の高い少女が踊っている
サンドイッチ、ぬいぐるみを買った公園




