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326 扇動

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい

3/6 2:10


「シエル様もソレ飲んだら寝ておいて下さいね?」

こんな時間にもかかわらず従者は外行きの準備を整えている

念の為にと主の方を向き注意をうながすのだが


「わ~ってるっつの」

台詞とは裏腹に、まだ半分以上残っているグラスに並々と追加で注ぐ


頓智とんちじゃないんですから~適度にお願いしますよ?  はぁ、ではリッツさん そろそろ向かいましょうか」


「あ、はい   あの、本当に すみません」

行商人は深々と少女?に頭を下げる


「ぁ? 別に普通の事だろうが 命は大事にするもんだろ、むしろ良い判断じゃね~の?」


「、、その上、シフさんに警護までしてもらっちゃうなんて  申し訳御座いません」


「いえいえついでですから全然気にしないで、ほら 顔を上げて下さい  シエル様からしたら褒めてる方ですよ?あの口調は」


「照れ隠しってヤツじゃのっ! くふふふ、まぁリッツも他言なんかせんじゃろうし、こっちは気にせんで思うままにすると良い」


「けっ、だがむしろそっちの方が後々都合良いまであるしな」


「え?」


「あー気にすんな、どっちにしろテメェの人生だ  とりあえずコレ持ってけ」

少女?は一枚の紙を差し出す


「は、はぁ、、コレは?」


「全員が喜ぶお手紙だ、良いからテメェから渡せ」


「ですが」

「うぜぇ」

「さっ、行きましょうね~」

埒の明かない問答に従者が背中を押す



一般人ながら、覚悟の足りなさからの離脱という訳では無い


これは生きて行くのに当たり前の話


そんな都合良く

何でもかんでも協力出来る筈が無いのだ



やれ

『魔王が出たから勇者が倒す』

やら

『悪の組織をヒーローがやっつける』


きっと巫女様はそっち側の考えが出来る人


だが、そんな事だけでは



利にならない訳で



ましてや今後はどう転んでもディーン王国とはやり合う訳だ

文字通り、殺り合いになるかもしれない

それは魔族を一体相手にするのとは訳が違い


国を敵に回す事になる訳で、、


借りは返した

好きな人が関わっていようがそんなの、一括りに出来る程割り切れるものでも無くて

やれてサポートに徹するのが関の山

善意だけで戦争に身を投じるなんてあり得ない


優秀な判断だろう


黍団子きびだんご一つで鬼と戦う気力なんて生まれる筈が無い


当たり前


当たり前の  話なんだ



従者は隣で馬車の手綱を握り、歯を食いしばる青年に敬意を払い


見て見ぬ振りをした











3/6 5:00


「良かった良かったまだいらっしゃいましたね、間に合いましたよ~ いや~飛ばした甲斐がありましたね~」

中性的な青年がニコニコと

この時間にはまだ迷惑な声量で後方に声を上げる


「あ、あぁん?なんでシフがこんな時間にこんなトコいんだよ? ははっ、癒しでも求めに来たか?」

丁度店を閉め終えた亭主が裏口で煙をくゆらせている


「いえいえ毎日癒しは頂いてますので、お店に貢献出来ず申し訳無いのですが自分は今回護衛でして」


「護衛? ってリッツさんもいるのかい あ~でも店もう締めちゃうんだけど?」

後方を眺めるが変わらず急ぐ様子は無い


「はぁ、はぁ いえ、今日は飲みに来た訳では無くて  はぁ コレ、巫女様からのお手紙です」


「シエルから? なんでリッツさんが?訳分かんないなぁ手紙だけならシフからで も、、、、、あ~、そういう事ね ふ、ふっはは きったねぇなぁ着払いってか?」


「シエル様ですからね~」


「って事は何か? リッツさんはただの運び屋って事か?」


「、、はい」


「はっ、アイツは一石何鳥取るつもりで書いたんだよ」


「回りくどいとは思いますがシエル様のやる事です、、率直に、引き受けて頂ける様でs」

「あーはいはい、やるよやる! ってか断れ無いでしょうよこんなの」


「でしょうね!」


「でしょうね! っじゃねぇよ、、けどそんな状況になってんだったらリッツさんの護衛までは責任取れ無いから着払いの報酬は別で渡すわ」


「え?」


「え?じゃねえっよ! いや、無理だって! この救出ってのだけでも先が見えないのにどんだけよ!? そもそも手紙一枚を着払いでその報酬が持って来た者の護衛ってなんだよ!ヤの者じゃん!強制詐欺じゃん」


「シエル様怒りますよ~?」


「シフ、お前なぁ?」


「ですが恐らく、彼が生きているのなら然程さほど危険な目に合う場所では無いと思うので借りを返すのには良い機会なのかなぁと」


「おい  言い方気を付けろよ? テメェが言う事じゃねぇだろうが」


「流石に出過ぎた真似でしたね あ、そろそろ自分はゼブラ様に報告がてら仮眠を取りますので  何かあればそちらで、宜しければ一緒に向かいませんか?」



「ちっ、嫌味かよ  お前本当に良い性格してるよな」

消したばかりの灰皿を揺らし

直ぐに次の一本に火を灯してから続ける

「けど言った通りだ、無理はしたく無い、リッツさんを護衛しておろそかになったら本末転倒だろ?  『守れない』かもしれないって事はしたくないんだ」


「、、失礼しました   ですがゼブラ様への顔見せくらいはいい加減お願いしますね? では」


行商人もペコリと一礼してからその場を後にする





「はぁ  こちとら悪党だぞ? 今更  どの面下げて神父様に手向しろってんだ」


男は三本目の煙草を咥えたまま


店の中へと戻った


コレも分ければ良かったかなぁ、、最近詰め過ぎちゃってバランスが悪い

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