288 説法
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
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「多分なんだけど、さ クローン技術ってやつなんだと思う」
研究されているらしいけどもちろん専門なんかじゃない
アニメや漫画、ネットでの情報だ
元の個体、生物の遺伝子やら細胞から創られた、、コピーの様なモノ
そんな知識でしかない
簡単にだけ話を始め
たどたどしく、またも少し空気を暗くした癖に締めくくれない感じの所で寸胴にぶち込んでおいた野菜達がボコボコ言い出した
「あっ! そうだった、ちょ、ちょ待ってて」
「カレーか?」
「んなもん昨日食っちまっただろがぃ! ってかもしカレーだったら焦げちまってるわ」
前のめりに鍋を覗く銀髪少女?を一回退けて厨房内へと急いで戻った
(いやってかさっきまで何もツッコんで来なかった癖になんで今反応したよ! そもそも食っちゃったトコにいたじゃん、、あ~マジで減りが早過ぎて最近二日目のカレーとか食ってないなぁ、もっとデカめの器具も買って来ないとか)
そんな事を思いながら椀に野菜スープを注ぎ
とりあえずとばかりにラフィの獲って来た肉を焼いただけの物を調味料と共にトレイに乗せていく
ツインテールが「タイミングぅ~」とかブーたれながらカウンターの方へと足を向けると幼女が「私がやるのよ!」とドヤ顔で駆けて来た
結構な量があるので他にもいないものか、と探していたら中性的な従者もアルの前に出て手を出していたので安心だ
、、と、しばらく黙っていたもう一人、行商人も困り顔で手伝いに来てくれた
「あの~全然分からないんですけど、、悪者っぽいのってもしかしなくてもレイ様ですよね? あと、この声ってキーロさん?」
・・・
そうだった
俺と一番近しい一般人、リッツの存在
ポジジョンとしてもどうだとか、何も考えて無かった
今更説明しない訳にもいかないんだが、、どっから喋れば良いものか
「そ、そうだよな~!? 急にこんなん見せられても困っちゃうよな?」
誤魔化す訳では無かったのだが咄嗟に出たのはこんな台詞だけ
なのだが、やはり賢い青年だ
「、、それに、グングニルって」
事の重大さだって理解している
それなのに俺は
やっぱり
馬鹿だ
「私が運んだ商品、ですよね」
考えてやれてなかった
理解出来て無かった
ソノ兵器の経由先
それどころか
持ち込んでしまったのが誰だったか、、なんて
「 はぁ」
逸早く汁に口を付けている巫女が小さく溜息を吐いた
と思ったら
「めんどくせぇ、なんかある度しんみりしやがって 乙女かよ」
「ぁ え? 俺!?」
「てめぇがとかじゃねぇ、此処はお通夜の会場かっつうの? 良いじゃねーかてめぇは知ってるソッチ側の話をしただけ、リッツは仕事しただけだろが!」
「確かに、まぁ、そうですけど、、」
「アルもそっちの、ぁ~、お前、番号って結局どんななんだよ」
「えっと k-0210 だったかと」
「じゃあ、お前は今日からケイな」
「は、はいぃ」
巫女は不機嫌そうに続ける
「コイツらがクローンだろうがなんだろうが、ソコの生首だってそうだ! 造られただ?んなもん産まれ方が違うだけだろ、なんも変わりゃしねぇ てめぇらは全員悪くねぇだろ!」
捲くし立てる様に、表情は何処か悲しそうに
だがソレは圧巻と言うか何と言うか
あまりにも清々しい
だけど本当に その通りだ
同情も
被害妄想だって甚だしい
こんな啖呵の様な、、いや、啖呵とは本来そういう事か
実に不器用な
優しい説法だ
・・・
「けっ、そっちの赤鬼の方がよっぽど正体不明だろうが」
残りの汁を一気に飲み干し、しっかりと照れ隠しの様な毒も忘れない
「カカカカ、むしろあっしが気になっとるくらいじゃからのぉ」
「、、シエル」
「っつかなぁ、恐らく私も 似た様なもんなんだろう?」
最後は小さく呟き、少女?は一点を睨みつける
「 え、え? どういう事」
感激していたツインテールは何度か瞬きをするとその目線の先
ウエイターの方へと首を向ける
「、、このお話は逸れてしまいそうなので後に回しましょうか、映像時間に制限があるらしいですからまずは食べながら、進めましょう?」
上手くはぐらかしたかの様に見えたのだが今は舌打ちだけみたいなので引き続き再生する事にする
完全にウジウジタイムが終わりました




