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286 逢魔

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい

3/5 18:30


「ウ˝ゥ  ガルゥゥヴヴヴ」


大きな尾を揺らし、痩せた犬耳が勢い良く肉をむさぼっている


「ブグゥ   グルゥァ」

何処かへ運ぶ訳でも無く、その場で殺した猪の様な生物をそのまま、何の処理もせず口へと運ぶ


知識がある訳では無い、それに賢い方でも無い

その為これは本能的な動きなのだろう

獲物の四肢を腕力に任せ、力尽くで引き千切って齧り付く

飲み込むと同時に次は腹を開け、零れた臓物の中へ顔を突っ込む




血が足りない



血が足りない



血が足りない




狼の体にはあえて変化せず、ひたすらに血をすす


菌処理もしていないし勿論体毛などもそのままだ

兎にも角にも極度の摂取

胃に入れたかと思えばすぐに嘔吐を繰り返す


賢くは無い

されど馬鹿では無い

生きて行く為、それと



次の動きの為



どれくらいの間寝ていたかも分からない、それどころか此処が何処なのかすら、、

今も体は高熱に伴いもれなく激痛が止む事は無い


飛び出したままに一週間程が経った

固定された手首もそろそろ衛生上最悪だが剥がさない

単純にそのまま取れてしまうのではないかと感じているからだ

内面だって焦りで限界、やられそうだ、、



それでも



「ウゥ イ˝テェ イテェヨー  キーローキーロー」



希望の名を口に出し


血塗れの子供は雨の森を彷徨う
















「すまねぇジンさん、俺らのせいだ」


上映会の前にチャラ男と白黒が揃って倉庫の方へと付いて来た


「え?何!? ナニナニナニ?」

とか軽くキョドってたら


「帝国内でキーロって子の情報も調査していて、、それで擦り合わせてたらアルちゃんに聞かれちゃってて、迂闊うかつでした」

「配慮が足りず、すみません、軽率でした」

双子が同時に頭を下げた


どうやらアルがスマホの存在を嗅ぎつけたきっかけはエルフ達にあるらしい

あの子もあの子で勘が鋭いのとしつこく聞いちゃう方だ、安易に想像がつく


「まぁまぁいずれ知る事にはなるんだしさ、ほら!頭上げてよ」

双子の肩に触れ、覗き込む様にしてから愛想笑いを振り撒く


「本当に、すみませんでした」


「あ~、途中とかさ、空気読んでフォローとかは頼むね?」


適当な慰め

自分の事を棚に上げておいて良くそんな言葉が出たと自分でも思う


いや

だからこそ、頭なんか下げて欲しくない訳で、、



上映中、俺は調理とドリンクの提供に精を出すと決めている


ズルいよなぁ、本当に


アルの事は勿論フォローしてあげたいから音声やみんなのリアクションに合わせて様子は伺うしエバには見てもらって色々な事をそのまま聞こうと思ってる

一番機械や電気に精通しているしグングニルの事だって何か今後のヒントになる筈だし



けど  正直キツイんだ



あの蟷螂かまきり達が映ってる


俺を殺そうとしたヤツが映ってる


キーロの安否だって不安になるだけだ


、、だから


そう何度も気軽に『見れる物』じゃ無い訳で





(くそ、情けねぇ   世のなろう系主人公のメンタル少しでもくれよ)





皆に一声かけてからスマホをセットし

胸の痛みを誤魔化す様に駆け付け一杯強めの酒を飲み干した


「じゃあ適当に作って持って来るから」

と逃げる様に厨房へと向かう




のだが




「マスター? いえ、違う、あれは違う、あれは  マスターは、、私は、」


ドールの様子がおかしい


「え、エバ?」

「エバちゃん!」


「あ  あああ  ああ、、E、ve、私はEve  Eve、私はEve」


「エバ!? エバ!!」

ツインテールと猫忍の声がしたので戻ってすぐに直接触れる

「うあっつ くっ落ち着けエバ!」


チリッチリだ、高温になりキューキューキュルキュルといった異音を発しながら目を回している


「Eve、私はEve、オーケー 私は私は対話が大好きです、私は平和が大好きです 私は、、私は」


「、、良い!分かった、見なくて良いから ゆっくりで良い、落ち着けって、あっちで冷やしてやるから な?」

目を塞ぐ様に、囲う様に優しく生首を抱きしめた


「私は平和が、、私はEveこの世界を世界を、世界を   私はマスターがマスター  マスター  マスター  マスター・・・」



情報源としては残念なのだが

何故かオーバーヒートしてしまったドールは上映早々に離脱


今日も早めに瞳を閉じる事となった



ヤバい忙し過ぎてペースダウンっす

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