183 銃声
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
2/13 10:30
「えっと~?お肉持って来たらこの前の丸焼きでも良いって言ってたし、肉団子も予備があるから~ソースか!」
キッチンから独り言が聞こえる
今日はいつもより高めに結ばれたツインテールがランチタイムの下準備をしている
「エバ~お米炊いておいてくれる~?」
「、、お店は開けなくても良いと言われていたのだけれど?」
乾いた食器を棚に移していた手を止め、ドールは小首を傾げている
「うん、けどほら!にゃんこ~ずだけは今日もお昼に来るって言ってたし」
「言っていたわね、きび?だったかしら」
「そうそうきびちゃん、来るのはきびちゃんだけかもしれないけど分かんないから多めに炊いておいて、残ったら残ったであたし食べるし冷まして冷凍しちゃうから」
「、、そう、分かったわ 水を汲み終えたら始めるわね?」
ドールは大きめの桶と土鍋を抱え表へと歩き出す
(エバ、随分と変わったな~)
「さてっと、あたしは肉用ソース作りだ、いっぱい作っておいても大丈夫だよね?冬だし」
火を焚き、フライパンを熱し、直接いくつかの調味料を流しながらおたまを探す
「おたまおたま~、、ヘラでもいっか?」
先に目に付いた木べらを手に取り焦がさない様ぐるぐると手を動かす
カランカランカラン
ドアベルが鳴る
「あれ エバ~?」
入口へと目を向けると同時に
「ごは~ん」
「こんにちは~」
一番小さい猫忍と話題に出ていた中間管理職だ
「はや!ごめん、まだご飯も炊けてないんだけど」
「あぁ大丈夫です、早めに終わっちゃっただけなので 今日はコレで、あれ?」
カウンターに腰かけた二匹の猫が袋を差し出し首を傾げる
「料理の上手なあの兄ちゃんはどこ行ったの~?」
「亭主のジンさんは、トイレですか?」
嫌な予感を感じ取りながら苦笑いを浮かべている
「あ~、ジンは出かけちゃっててね~でも大丈夫だから! あたしが美味しいのを作るから!」
グッっと腕まくりをするツインテールだが力強く握られている木べらの先端はすでに黒い
「え、ソレ食べ物?」
「外で焼きます!コレ、外で焼くので」
「だいじょぶだって、焼くだけなんだから~」
袋を下げようとしたきびよりも早くアルが中身を取り出す
「にゃ、にゃあ」
「って!? 魚、、か~」
アルは少し考えてから閃いた様な顔をする
・・・・・・
この後、手作りソースで煮込まれた鱗及び内臓付きの魚と美味しい美味しいミートボールが猫忍二人の前に並んだ
同時刻
「私はディーン王国、皇族の息子バルです、館の調査及び主へ交渉の為参じました」
目の前の数人に向け高らかに名乗るのは偽王子だ
地下での収穫は何も無く、東館側から階段を上り一階を捜索中に鉢合わせた
「な、交渉?」
「王子だと、聞いてないぞ」
「例の、噂の王子だよな、じゃあ味方なんじゃないのか?」
確認出来ているのは5人
軽装の者が3人、重装備の者が2人
帯剣している2人を見て王国側の騎士であると踏んだバルはゆっくりと距離を詰め、『試して』みたのだ
「騎士団には直接討伐依頼を出していないと思ったのですが、懸賞金目当てですか?」
(この数だ、騎士団全体での動きでは無いだろう)
人数、顔ぶれを見て嘘八百を並べてみせる
「あ、え、えぇ あの ど、どうしますか?」
重装備の騎士が先頭にいる軽装の男に小声で何かを言っている
「ここが吸血鬼の館だと分かっていますか? そんな人数ではどうにもなりません、貴方達の目的はなんでしょう、どなたかからの命でしょうか」
動揺しているのを見逃さず、バルは優しい口調で情報を吸おうと試みる
「ふむ、例の王子もどうせ偽物だと思っていましたが、その腕輪 本当に王子なのですか?」
先頭の男が前に出る
(腕輪の事を知っている? 内部の人間か、だとしたら何処まで繋げる?)
「、、えぇ、水面下で動いているのですが最近街中では少々目立ってしまっているらしいですね」
形見の腕輪を擦る
「そうですかそうですか、、だとしたら」
男は後ろの従者に目を向ける
「何故あの様な者と共にいるのですか、王子?」
「え?」
「まさかあの状態から生き伸びたとは驚きだ、その女の様な面構え、忘れもしないぞ?」
「えぇ、その節はどうも、自分も忘れてなんかいませんよ?」
シフがバルを後ろへ引き、前に出る
「王子もあの場にいらっしゃったじゃないですか」
男は胸元から何かを取り出す
「王殺しの新兵が!」
タァン タァン!
シフに向けた短筒から
銃声が響く
CMの様に使われるアル
嫌いじゃない




