122 狼狽
本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい
8/29 17:45
「コヤツで間違いないか?」
赤毛のメイドは巨漢の亡骸に近づき小柄の男を前に出す
「うっわ!あぁ ブッチャーだ間違いねぇよ お、俺はどうなる?」
「知らぬ、死体と共に騎士団にでも突き出すからしっかり説明するんじゃの ラフィ、こんなやつらゴブリンや魔物などと変わらんショックなんぞ受けなくて良いと思うぞ?」
カセンは近くに転がる大剣を拾いエルフの傍に持って来る
「ぁ、、あぁ、いや 違うんだ」
ラフィはゆっくりと自分の両手を確認してから
その、大きな剣に目線を移す
聞けばここの上には巨漢の店があり、地獄絵の様な酷い有様になっているとの事
なので、「魔族では無かった」為「悔い改めさせようと思った」らしい
ラフィは巨漢に追い着くと大剣を鞘のままぶちかました
吹き飛ばし、気絶させたと思った所を飛びつかれ 咄嗟に腰元の短剣で突き刺した
これには
「正当防衛じゃの」
と赤鬼がフォローを入れるのだが
「違うんだ!」
エルフは大きな声を出し、両手を開く
「手が、勝手に 動いたんだ」
「そんなもん反応じゃからしゃ~ないじゃろ?」
「し、しかし!」
「あっしだって寝ながらゴブリンを殴り殺してた経験があるぞ? その爺さんが言ってた事だからって気にし過ぎじゃろ? そんな事より上にロリ巫女はおらんかったんか?」
カセンは早々に話を畳むと上へと続いている梯子を見上げる
「あ、あぁ そうだ、うむ そうだな、、まずは 巫女殿を探さなくてはだ」
両の手で自分の頬をバチバチと二発程強めに叩き立ち上がる
「あっしはこのチビ連れて一度上を見て来る、ジン! さっきのT字路、あっち側だけ捜索して無いからラフィを連れて先に行っててくれ」
「うあああ、いてえいて~よ」
メイドは雑に潰れた肩を掴み軽快に上がって行く
カセンは言わなかった
勿論、早くシエルを見つけて落ち着きたかったのもある
少し、注意して見ておかないといけないのかもしれない
『咄嗟に刺した』
遺体の顔を上げまじまじと傷口を見た訳では無い
だが、ラフィを染めていた量の返り血
(滅多刺し もしくは刺してから横に引いた?)
殺すつもりで無いとそうは動かないだろう
(嫌な予感がするのぉ)
上の部屋へと登り、目を背けたくなる光景にすぐ小柄の男は嘔吐を始めた
騎士団には死体と共に此処を調べてもらえば事件はすぐに解決へと向かうだろう
赤鬼は強張った顔で異質過ぎるケースや作業台の上を確認して行く
そして
とあるモノを目にし、眼を見開き
一気に青ざめる
「この鉄壁、シャッターか?」
ジンとラフィは目の前の大きな扉の周りを捜索している所だ
「なんか開ける為の装置的なのがあると思うんだよね~」
「装置、、む? ぅ、う~む」
エルフは以前勝手に押したボタン、火災報知器を思い出す
「あ、ラフィは良いよ 少し休んでな? ん? ってかはっやいな」
血相を変え
何かを抱えた赤鬼が血相を変え駆け寄って来た
「ジン、、、」
「な、何、どうし、、」
カセンが大事そうに抱えているモノに目が行き
言葉を失う
「ま、さか?」
エルフもジン達の表情から、最悪の事態を想像する
「コレだけじゃった まだ 分からんぞ」
そう呟くとカセンは両の手で鉄壁を掴み
バギャン! ガキキキ
ベキベキベギン!!
ぶち破る!
いや、破ると言うよりも
引っ剝がすと言う表現の方が正しいのかもしれない
引っ剝がした奥の部屋に光が入る
そこですぐ目についたのは
首の無い死体が二つ 転がっている
その奥には
「み、巫女殿!」
エルフが一番最初に声を出した
「しっかりせぇ! 意識は?息はあるか!」
カセンは繋がれた鎖を一つ一つ握り潰し、引きちぎっていく
「シ、シエル?」
ジンは不安げに
「おい、、嘘だ、ダメだろ おい!シエル!」
大きな声で
「ダメだよ、、お前 お前が 死んじゃ、、ダメだろぉシエルウウ」
裸の少女の名前を叫び続ける
焼き爛れた跡のある小さな右腕を抱えながら
三章 完の予定でしたがもうちょっとだけ流れを来週書きます




