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111 父親

本作品は群像劇です、目線、日時にご注意下さい

8/29 15:00


「うんうん、美味いな~ジィ様よ」

金髪ショートの娘は頬張り、咀嚼そしゃくをしながら老人の顔を覗き込む


白く長いひげを蓄え黒いローブを着た老人はつばの広い帽子を被り

ラフィが覗いたその顔面、片目は潰れている



「・・・」



「こういう物にはやはりお酒が欲しくなるなぁ」



「・・・」



男は黙々とエルフから受け取ったイカ焼きを齧る


「ふむ、確かにジィ様、少し臭うな、しっかりと水浴びもしないとだぞ?」



「・・・」



「声が出せないとかだったらすまないな、しかしあれでは何も前に進まないと思わないか?」



「・・・」



「コレを捕って来るのにも、運んで来るのも美味しく焼くのにも努力し時間を使っている  もしジイ様よ、行く所が無いのなら私の森へ招待するが?」



「・・・」



「ここの国でする事があるのか?」



何度も問いかける言葉に返答は無く、虚しく消える


しばらくラフィは手に持つ串を見つめ、その場には咀嚼音そしゃくおんだけが響く


そして最後の一口を飲み込むと



思い出した



「ほああぁあああ!」

エルフは奇声を上げ

勢い良く立ち上がり、目を見開く


「はわわわわ、人前に~出してしまった、、これはもしや、みみ巫女殿に怒られるのではないのか!?」



もはや大分手遅れである



武器を持つ者を誰が誘拐するだろうか


ましてや見ろ!とばかりにいかつい形をした背中の大剣

もれなく今なら「すぐに抜かない様に」とツインテールの少女がベルトで固定し装飾を付け加え


軽くデコられている


そりゃ~目立つ事目立つ事


「ば! ばば、ばばばば  バレなければ?もう一度綺麗に、、いやそもそも場所! そう場所だ」

いつもの一人祭りである



そんな中、隣からボソボソとしゃがれた声が聞こえた



「その剣」


!?


「ふお!おぉぉお?なんだ喋れるのだな、良かった良かった コレか! これは」











「ダーインスレイヴ」











「え?」

ラフィの口から間の抜けた声が漏れる


「血を求める魔剣、ダーインスレイヴ  だろう」

男は食べ終えた串を備え付けのゴミ箱へと放る


「だ?だあいん?」


「あんた、あいつの血族か」


その言葉でエルフの脳が、目付きが変わる

「  父を、知っているのか?」


「そんな物騒な物持って何しに来た? また国を一つ無くすのか?」


「私は誘拐犯をだな  いや、、今 なんて?」



相手が悪いのか本人も悪いのか、対話としてはいささかズレているやりとりだ


何度か瞬きをして自分の頭を整理すると自然と口から言葉が出る



「父が! そんな事するハズないだろう!?」

珍しくエルフが声を荒げる



露出の高いエルフと汚らしい年配者のベンチはそれで無くとも目に入るだろう

ガヤガヤと先程行列を作っていた者達が集まって来る



エルフは周りの気配を察知し


「いや!   何でも無い」

ぎゅっと歯を食いしばる


野次馬と言う者は自分と関係が無いから騒ぐモノで、深く関わる事をとても嫌がる


だからこそ、相手が悪かったと言う事だろう


「皆!すまない!大きな声を出した、だが大丈夫だ  問題無い」

ラフィは短い言葉で安心させる様にと一人一人を『しっかり』見つめる


本人としてはいつも通りの事なのだがその堂々とした行為自体が目立つ

ましてや、、この服装だ

彼らはそそくさと「見てませんよ」とばかりにその場を立ち去って行く




「ジィ様も、すまなかったな」

ベンチに腰を掛け直し、一度両手で自分の頬を覆う

「その、、ゆっくりで良いので教えてもらえないだろうか」


困った様に眉を下げ、先程の様に男の顔を覗き込む




だが


その後もしばらく年配の男は口を閉ざしてしまう









20分程が経っただろうか



「北街区の路地裏、古びた肉屋の地下   行けば答えが出るだろう」


それだけを言うともはやラフィの言葉には反応せず

ゆっくりとまた賑やかな通りへと歩き出し、姿を消す



ラフィは少しだけ考えてから救難信号を


弓矢を



空へと構える


武器の名称が出たのはやっと3つ目ですね~

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