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オーデナリージャンプ  作者: 市丸 時化人
3/3

憧れの部活

下校時間になり、僕は興奮気味の友達の間をすり抜け上靴からスニーカーに履き替え、学校の正門を小走りで駆け抜け外に出た。

ワイワイと聞こえる声が小さくなっていく。



あ~自由を感じる!

そう僕の選んだ部活は帰宅部。


何の縛りもない放課後の時間

僕はその時間を自由に使えるのだ。


団地の階段を5階まで駆け上がり

鍵を開ける。

持っていたカバンをいつのもの場所に置き、うがい手洗いをしてから

ポテトチップスと読もうと思っていた

漫画を脇に挟みソファーへドスンと座る。


あっとオレンジジュースを忘れていた。

僕はポテトチップスの袋を開けた。

この時の音がたまらない。


左手はポテトチップスの袋と口への往復を休むことなく動いているが、

意識は漫画の中へ引き込まれている。


僕はポテトチップスの袋の中をガサゴソとしてもう中身がなくなったと気づいてふと顔を上げると薫生がテーブルでおやつの菓子パンを食べていた。


誰でも経験があると思うが、漫画の中へと入ったら周りの音も気配も消し去っていものだ。


「帰ってたんか。」


「うん。」


僕には2歳下の弟がいる。それがこの薫生(かおる)だ。

彼も小学校に入るとサッカーを始めたが、人が怒られるのも嫌だし、自分が怒られるのはもっと嫌で早々とサッカーを辞めた。


見た目と違い頑固なところがある

薫生は辞めると言ってスパッと辞めた。

まぁスポーツが好きでは事が大きいが。


父もなぜかすんなりとOKを出した。僕が続けているからだったのかもしれない。

僕はその時辞めるタイミングを逃していたのだろうがその時はまだ気づかなかった。


薫生は見ためが女の子のようで、

みんなに好かれている。そう女の子にも。

なので仲のいい友達は女の子が多い。


母が「薫生がそっちならそっちでも私は構わない。」と言っていたが僕にはそっちがよくわからかった。


しかし薫生はそっちではないようだ。


「薫生、食べ終わった?」


「うん、まだ。」


「まだならうんっていうなよ。」


「うん、じゃぁまだ。」


「ふんっ」


薫生はゴクゴクと牛乳を飲んで

牛乳ヒゲをつけたまま食べ終わった事を僕に告げた。


僕と薫生は仕事に取り掛かった。

干してある洗濯の物を入れ、食器を片付ける。

そして二人で洗濯物をたたむ。薫生はたたむというより丸めている。


働いてくれている父と母への少しだけの手伝い。


「よし、終わった。」


「セイくん、やろっか!」


「うん、やろう。」


僕達二人の今の楽しみはゲームをする事。ゲームとはD()S()の事だ。

うちは母が絶対にゲームはダメな家庭だった。


僕が六年生の時に小学校のバザーで

この本体を見つけた。

父と僕と薫生とで来ていて二人で

このD()S()をおねだりした。

バザーで安いこともあって、父は買ってくれて、中古ショップでゲームも買ってくれた。


ある日、近くに住む母の姉、伯母さん家に遊びに行き嬉しくていとこのお兄ちゃんにそれを見せた。


「ははははっ誠それはDSじゃないぞ、ゲームボーイだよ。懐かしいなぁ。」


「ゲームボーイ?」


「誰がDSって言った?」


「お父さん。」


「あははははっ騙されたな」


そう僕と薫生はゲーム自体をあまり知らなかったので父に騙されていた。

「お~よく、バザーにD()S()があったなぁ」と言った顔がニヤついていたの僕は思い出した。隠しておかないといけない状況もあり僕らのD()S()はずっと

父に騙されていたのでる。


僕は顔が真っ赤になった。

いとこのお兄ちゃんは困った顔しながらもう使っていないゲームボーイの本体と多くのゲームをくれた。これでゲームボーイが2台になり兄弟で取り合いをする事もなくなった。


ゲーム機は古いが僕と薫生が楽しむには十分だ。

友達にD()S()を持っていると言いふらさなかったのが助かった。


空から太陽がサヨナラを告げ始めると部屋の中は少し暗みを帯びてくる。

黄昏は心にスッと入り込む瞬間でもある。


薫生がいる事がありがたいと思う時間帯だ。


ほのかな外の香りと少し冷たい風が

入って来たが、この一言で家中に光が灯る。


「ただいま~ちょっと遅くなったね。」母が帰ってきた。


おかえり~と言いながら、薫生が駆け寄っていく。


僕も小走りで近寄り

「おかえり、きつくなかった?」と声をかけるが薫生が今日の晩御飯は何かと僕の声をかき消す。


母は薫生に今日は餃子と教えながら

僕にありがとうの顔をする。


お風呂を済ませ、夕食の準備の終盤に父が帰宅した。

家族が揃ったて夕食が始まった。


僕の憧れの部活が始まった。




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