表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
楽しいお家の作り方  作者: なっぱ(偽者)
8/10

やりたいこと、やれないこと

 ついにやってきました。山です。晴野さんに連れられててくてくと山を登っている。最初は緩やかな坂道だったのが気が付いたら舗装がなくなっていて、さらに気が付いたらうっそうとした山の中だった。でもたしかにそこまで急勾配なわけではなく、誘われたときに言われた通りのんびりしたハイキングくらいの道だ。

 「天崎さん大丈夫?」

 「はい、問題ありません」

 「もう少し行った先に公園があるからそこで休もう」

 「わかりました」

 晴野さんに言われた通りすぐに公園に到着した。小さな池とベンチが並んでいて同じようにハイキングをしていたと思しき人々が休憩している。聞けば公園に神社が隣接しているそうで、そこで一つ目の御朱印をいただくそうだ。

 「はいこれ」

 「御朱印帳ですか?」

 「そう。これが天崎さんの分」

 そう言って晴野さんが差し出した御朱印帳は表紙に華やかな桜が刺繍されたとても可愛らしいものだった。

 「えっとおいくらですか」

 「いいよ。それは今日付き合ってくれたお礼にあげる。だからまた別のところに行くときも付き合ってよ」

 「……仕方ないですね」

 やっぱり晴野さんの押しの強さには勝てないみたいだ。晴野さんについて神社に向かいお参りをする。その後社務所で御朱印をいただく。

 「天崎さんの御朱印見せて」

 「晴野さんのものと同じなのでは?」

 そう言いながらも御朱印帳を広げてみせると晴野さんのものとは全然違った。同じものが書いてある……? わけではない??

 「書いた人が違うんだよ」

 「それでこんなにも違うのですか?」

 「違うよー。人によって癖があるの。だから2人で来たかったんだ」

 そういうわけか。本当に同じものが書いてあるとは思えないくらいに違う書き方でびっくりした。同じなのは紋のハンコだけでは?

 その後また山を歩いて違う神社に向かう。次の御朱印をいただいた後で小さなカフェでお昼ごはんを食べて、また違う神社へ。そうこうして予定の社寺をすべて回ったときには閉門ぎりぎりの時間だった。

 「全部もらえた! 良かった!!」

 「結構回れるものですね。さすがに疲れました」

 「お疲れ様! 付き合ってくれてありがとう」

 「どういたしまして。夕ごはんの予定は決まっているのですか?」

 「もちろん。さあ行こうか」

 晴野さんと並んで夕ごはんを食べに向かう。なんだか普通に一緒に歩いているけどよく考えると不思議なことだ。私はもともととてもインドアで、休みの日はできる限り家で過ごしたいタイプだ。なのにこうして会社の同期と御朱印帳片手にハイキングをしている。どうやら私のアンテナはずいぶん鈍っていたようで。やりたいと思うこと。面白そうだと思うことをキャッチできずにいたらしい。

 「ここなんだけどどうかな?」

 「おいしそうですね。入りましょう」

 もう少し晴野さんと話してみよう。なにかもっと楽しいことが見つかるかもしれない。 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ