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楽しいお家の作り方  作者: なっぱ(偽者)
6/10

知らない世界にて

 その日の夜、私は同期に呼び出されてとあるカフェバーに来ていた。呼び出しの理由は「掃除のお礼」。先日同期の晴野日向の汚部屋掃除を手伝ったことのお礼だそうだ。

 「あ! 天崎さーん、こっちこっちー」

 「遅くなってしまってすみません」

 「ううん、忙しいときに声かけちゃってごめんね」

 先に席についていた晴野さんは笑顔でこちらに向かって手を振る。

 「落ち着いた雰囲気のお店ですね」

 「そうでしょ。前になんかで来たんだけど、こういう静かな感じが天崎さん好きそうだなって思ったんだ」

 晴野さんはそう言ってメニューを差し出す。カフェっぽい軽食もあればカクテルやちょっとしたおつまみもある。昼ごはんをゆっくり食べられなかったためお腹がすいていて、なににしようか悩ましい。

 「これと、これがお勧めかな。あとはこの辺りのサラダも意外とがっつりしてて美味しいよ」

 そういう晴野さんの勧めに従っていくつかメニューを頼んだ。

 「あれから部屋はきれいに保てていますか?」

 「うんもうばっちり!」

 そりゃあもういい笑顔で晴野さんは答えた。

 「きれいな部屋だと気分が滅入らないしのんびりだらだらしてるよ。明日から何をしようかとか、新しいことを始めようかとか考えるのすごく楽しいんだ」

 「それは良かったです」

 生き生きと話す晴野さんに手伝って良かったと思う。元々私と晴野さんは同期というだけでそこまで仲が良かったわけではない。でも酔いつぶれた彼女を一晩自宅に泊めたことがきっかけで掃除を手伝うこととなり今に至る。

 正直に言えば晴野さん宅は本当に汚かった。虫が湧いてなかったことが奇跡的だ。食べ物がゴミ山に含まれていなかったからだろう。私がしたことはとにかく物を捨てただけだ。それでも彼女がこれだけ喜んでくれているのはそれが彼女にとって必要なことだったのだろう。それが提供できたのだから言うことはない。

 「そういうわけだから山に登ろう」

 「……すみません、どういうわけですか?」

 少し考え事をしていたら話がとんでもない方向へ向いていた。

 「だから、御朱印をもらいに山の上の神社に行こうって」

 「御朱印?」

 「うん。ちょっと前に流行ったでしょ。最近の御朱印帳っておしゃれですっごい可愛いんだよ。御朱印自体も可愛いいものや不思議な文様があっておもしろいからたまに御朱印目的でお参りしてたんだ。それでさっき言った山の上の神社がそろそろお花見の時期でね。その時期限定の御朱印があるから一緒にもらいに行こう」

 なるほど、話の流れはわかった。しかし私に登山を敢行するような体力はない。

 「お一人で行かれては?」

 「拒絶が早い! 山に登るって行っても散歩レベルでせいぜいハイキング? くらいだから大丈夫だよ」

 「言っておきますが、私は体力のなさには自信がありますよ」

 「一日掃除できるんなら大丈夫だと思うよ」

 そうこう問答しているうちに押し切られて行くことになってしまった。なんていうか私は晴野さんの押しに弱いようだ。

 というか晴野さんの行動力とか思いつきにびっくりしている間に押し切られている気がする。

 そのことを嫌だと思っていないことが押し切られる最大の原因なんでしょうけどね。


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