金髪王子の一目惚れ(レオン視点)
リリアとレオンの出会い編です!
「お前の婚約者決まったから」
「は?」
6歳の誕生日に国王である父に自室にてそう告げられた。普段いい加減な父だとは思っていたが、まさか自分の婚約をなんの相談もなしに決めてくるとは。いや、まぁ相談されても結局は父に決定権がある訳だが。
「は?ってなんだよ。喜べよ。可愛くない息子だな〜。」
大げさなリアクションで拗ねたように口を尖らせるが、中年が可愛こぶってもキモイだけだからな。
「……すみません陛下。突然だったもので。あと、相手も分からないのに喜べませんよ。」
「陛下じゃなくて父上って呼んでいいんだぞ〜。」
「で、誰なんですか、陛下。」
「ほんっと可愛くねぇなぁ。まだ6歳のくせに。ヘンドリーんとこの長女のリリアだ。」
ヘンドリーって親バカで有名なあのヘンドリーか。娘は見た事ないが舞踏会などでいつも娘がいかに素晴らしいかを語っていた記憶がある。
あれだけ愛されているなら世間知らずな箱入り娘に違いない。すごく面倒くさそうだ。
「あ、お前そんな嫌そうな顔するなよ。すげー可愛んだぞ。」
「それはそれは。大変嬉しいです。」
「……嘘つけ。目が笑ってねぇぞ。とりあえず1回会ってみろよ。」
はぁ、本格的に面倒くさい。ここはとりあえず頷いておくか。
「わかりました。では、予定が空いている日に。」
「早めに会いにいけよ。」
「はい。」
その時は当分会いには行かないつもりだった。だけど、所詮6歳の子ども。なんだかんだで自分の婚約者がどんな子か気になりだしたのだ。
……ちょっとだけ見に行ってみよう。王子として行ったら素顔は見れそうにないからお忍びで。
目的の家に着き、どうやって入ろうか悩んでいると、塀の外に大きな木があった。
あれに登って中を見てみようかな。
木の下に行き登ろうと上を見上げたら、もうすでに誰かが上の方の太い枝に座っていた。
「あら。こんにちは。どちら様?」
「…………。」
びっくりして声が出せずに、木の上の先客を見つめた。同じ歳くらいの女の子。それもとても綺麗な。
木漏れ日に銀色の髪が宝石の様にきらきらと揺れ、透き通る白い肌はさらに眩しく、まるで天使にでも会ってしまったような感覚。
……天使って!俺の思考恥ずかしすぎだろ!
我に返り、動揺を隠しきれずにいると。
「ねぇってば。挨拶くらい返して。」
女の子から声がかかる。
「こ、こんにちは。」
「ふふ、やっとしゃべった。あなたもこっちにくる?お話しましょうよ!退屈してたの!」
そもそもなぜ女の子が木の上になんかいるのか。登ったのか、こんな高い木を?スカートを履いて?
信じられない。とんだお転婆な子だ。
疑問が尽きずまた返事を返さないでいると、女の子が焦れたように言う。
「くるの?こないの?」
「い、行く!」
急いで、女の子のいる枝まで登る。
すると彼女が満面の笑みを見せた。
「あなたなかなかやるわね!ここまで登れる子は滅多にいないのよ!」
……?なんだこれ。なんか動悸してきた。胸が痛い。
近くで見る彼女はさらに綺麗だった。長い睫毛にくりっと丸い目、ふっくらと柔らかそうな唇。
「く、訓練してるから。」
「へー!あ、私リリア!あなたは?」
この子が俺の婚約者。大人しく気弱な箱入り娘のイメージが一気に消し飛ぶ。快活でお転婆、でもどこか品のある女の子。
「……レオン。」
「いい名前ね。あ、そういえば、私の婚約者と同じ名前ね!」
ぎくっ。
「そ、そうなんだ。」
「うん。」
特に気にしなかったのか、リリアはそのまま会話を始めた。
「ところで、あなたとっても綺麗な髪ね。きらきらして、まるでお月様みたい!」
「そ、そんなことないよ。」
君の方がよっぽど綺麗なのに。なんて言葉は何故か恥ずかしくて口に出せなかった。
「触ってもいい?」
「え!?」
「だめ?」
こてっ首を傾けてこちらを見る彼女に思わず
「いいけど……。」
と言ってしまったが、これは大変まずかった。
小さくて柔らかい手が髪に触れる。顔もさらに近くなり、何やらいい匂いもする。
「あ、サラサラ。気持ちいいわね。」
「あ、う、え。」
ドキドキドキドキドキドキ
やばいやばいやばい何がやばいか分からないがとにかくやばい。
離れなければ!
そう思い勢いよく後ろに下がる。
「あ、そんな急に動いたら危ないわ!」
「え?」
バランスを崩してしまった俺はそのまま下へ落ちる。
「だめ!」
リリアが咄嗟に手を伸ばすが、間に合わず。だが、その少し下の枝に俺は必死に手を伸ばししがみついた。
「……あぶね。」
ぼそっと俺が言うと少し放心していたリリアが声を荒らげた。
「……あぶね。じゃない!このバカ!」
「バカ!?」
「えぇバカよ!急に動くなんて何考えてるの!死んじゃってたかもしれないのよ!」
ここで俺もムッとなる。
「……君こそ落ちたら死ぬってわかってるのになんで木になんか登るんだ!最初に登ってた君もバカだろ!」
「私は落ちないよう気をつけてるもの!!あなたと違うわ!」
「落ちないかどうかはわからないだろ!」
「わかるわよ!」
「わからないだろ!」
「もう!誘った私も悪いけどあなたはもう登っちゃだめだから!早く降りなさい!」
「なら君も降りるんだ!」
「なんで私が!」
「危ないからだろ!」
「私は大丈夫なの!」
そんな調子でぎゃぎゃ怒鳴りあっていると、いつの間にか夕焼けになっていた。
お互い声が少し枯れて勢いがなくなっていた。
「…………降りるか。」
「……うん。」
ようやく2人で地面降り、顔を見合わせる。
「ぷ。」
「ふ。」
何故かおかしくなって2人とも吹き出した。
「あはははあなたって意地っ張りなのね!」
「君には負けるよ!」
ひとしきり笑ったあと、近くのベンチに座る。
「……驚かせてすまなかった。」
「本当よ。落ちるなんてびっくりしたわ。でも、私もごめんなさい。髪、触られるの嫌だったのでしょ?」
「いや、それは……俺もいいっていったから。」
「……ならいいけど。」
「じゃあ俺そろそろ帰るよ。」
「……うん。」
ベンチを立ち、帰路につこうとリリアに背を向けると
「ねぇ!レオン!また遊びにきてね!」
「!あぁ!また来るから!」
お互い大きく手を振って別れた。
あまりに長い時間出ていたせいで、勉強や剣の稽古をサボって家を抜け出したことがバレ、母には散々説教された。しかも今までにも何度もサボっていたこともバレた。
本当は直ぐにでも、今度は婚約者として挨拶に行きたかったが、その日以来、「こんな不良息子にお嫁さんなんてあげられないわ!反省しなさい!」と、教育が激しくなりなかなか会いに行けず、俺は死ぬ気で頑張った。母の許しが出るまで4年かかった。
やっとリリアに会える。そう思い、婚約者として会いに行くと、
「はじめまして、リリアといいますわ。」
さらに綺麗になっていたリリアは俺のことを忘れていた。
まぁしょうがない。1度あっただけ、しかも4年経ってる。
そう思うが、俺だけが会いたいと思ってたのが、めちゃくちゃ腹が立つんだが。
ほぼ八つ当たりだがそれから一緒に勉強する時や遊ぶ時はきつくあってしまった。
それから八つ当たりしない為にはどうしたらいいかと考えた。考えた結果第三者を入れてみれば良いのではと思った。俺が八つ当たりしそうになったら止めてくれるようなやつがいい。
直ぐに思い当たる人物がいた。親の仕事の関係でよく親にくっついて来ていたルイスという女の子だ。
「……一目惚れした子に八つ当たりしちゃうから、一緒にいて止めて欲しい、と?」
「……あぁ。」
「はぁ……情けない男。」
ハッキリものを言う彼女は、サバサバしていて男友達的な存在だった。
「まぁいいです。わかりました。まかせて下さい。」
「!!ありがとう。」
「お礼なんて言わないで下さい。気持ち悪い。」
「……お前本当口悪いな。」
こうしてその日から3人で遊び様になった。
……勉強する時はどうしても2人きりだから、抑えがいなかったわけだが……。
そして現在。
俺は今のところ恋愛対象外だからがっついて怖がらせちゃいけない。結婚は決まっていることなんだがら焦らずじっくり落としていこう。
とか考えてたが、もう遠慮しないからな。よく考えたら攻めなければ、男として意識してもらえない。今まで悠長に構え過ぎたのだ。
そう思い、リリアの紛らわしいごっこ遊び発言に頭に血が上って怒鳴りながら追いかけてしまった。そして低い声で追い詰めるような言葉でトドメをさした。
ドアと俺の間で意識をなくしているリリアを腕に抱いて、リリアの部屋のベッドに寝かす。
「気絶するくらい、俺が怖かったのか。」
自分は成長していない。今回はリリアも悪いが、気絶するまで追い詰めるとは。好きな子に八つ当たりするあの頃のままなのか……。
ますます嫌われたんじゃないかと落ち込む。
でも後には引けない。婚約破棄なんか絶対しない。
「俺の婚約者はリリア、お前しか考えられないんだ…。」
少しリリアの髪を撫ぜその場を後にし、自宅でリリアをオトす為の作戦を練るのだった。