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「主に対して無礼とか、本当に許せないよね。」


 ざわりと空気が揺れる。笑顔なのに笑っていない青目だけがぎらぎらと輝いている。苛立たし気にいじっていた袖から手を放して、椅子から立ち上がる。

 そのまま咲也子の前までローファーの音を響かせながら歩き、そのまま拝跪をとる。

 木造の店内がぎしりと鳴いた。


「僕の加護持ちが本当に失礼いたしました、我が主よ。このたびの失態については、相応の対処を僕の方からさせていただいても良いでしょうか」

「構わない、よ」

「ありがとうございます。……まったく。加護の取り消しができないのが惜しいことだけど、まあ。むこう500年は僕の加護持ちは生まれないってことで」


 深々と跪いていた時が嘘のように、態度を変える。にやにやとした笑みを口元に浮かべつつも、その顔は完全には笑っていなかった。

 本来加護とは才能へびたちが適性を持った者に対して芽吹くように働きかけることで開花するもので。才能へびたちの任意で行われるその行為は才能へびたちの気が向かなければ生まれないものだ。

 だからこそ愉快犯気質であるキイナの加護持ちは、同じ加護持ちの中でも比較的数が多い。


「やりすぎだめ、よー」

「仕方ないな、100年に変更するよ。……いくら我が主でもこれ以上の変更はしないからね」


 つまり、最低でも100年は‘暴食‘の加護持ちが生まれないということで。実質‘暴食‘の加護持ちを追い詰めてしまったあの青目持ちに対して、ティオヴァルトは若干の哀れみが浮かんできた。まあだからといってどうということもないが。


「ん」


 こっくりと咲也子が首を傾けたのを見て、キイナも満足げに頷く。自分の席に戻ると、にやにやとさっきまでの笑みを浮かべてさっそくヒイナに絡み始めた。


「じゃあ、そういうことで。……三弟みてい、そのチョコレートケーキよこしなよ」

「あんたは! 自分の皿があるんだから自分でとれよ!」

「なんで僕がそんな面倒くさいことしなきゃいけないのさ。君がよこせばいいんだよ」


 特徴的すぎる才能へびたちに会話に苦笑が浮かぶ。この濃い連中が神話にも出てくる創世の存在かと思うと、どこかおかしくてたまらなかった。

 

 こうして、お伽話にも描かれない小さな神様の冒険は終わったのだった。

 


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