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「相変わらずきれい、ねー」
「まぶしくて戦いづらいけどな」
きらきらと色の濃い結晶が光るここは結晶塔の迷宮最深部だ。馬車に乗っている最中にティオヴァルトがこの結晶塔の迷宮を踏破していることを思い出し、入った後はとりあえず転移陣にのり、あっという間に最深部である。
2人しかいないしと咲也子被っていたフードをさっさと脱ぐ。別に被っていて不快なわけじゃないが、被っていなくても見るものがいないなら問題はないからだ。
「採取完了です、よー」
「ん、お疲れ」
転移陣から少し離れたところにある赤い湧き水にギルドで配布された瓶の口をつけ、8分目までいれると同時にコルクをしめた。きゅっと軽快な音をさせて、依頼終了である。
初依頼の完了に喜んでいるとティオヴァルトからの労いがあったが、転移後にすぐに襲いかかった魔物に対応したのはティオヴァルトなため、本来労われるべきはそちらである。面倒くさそうに危なげなくあっさりと片付けていくティオヴァルトに。
「ティオ、ありがとう、ね」
「気にすんな」
さっそくお礼を言ってみたが反応は良くなかった。しかし、咲也子はお礼を言われた瞬間ティオヴァルトが照れたようにそっぽを向いたのを見逃さなかった。照れているのが丸わかりだった。
そんな小さなやり取りすら邪魔するように魔物たちが襲いかかってきた。本当に空気が読めないのかと思い咲也子は目を青くさせ石化していく。ティオヴァルトの前で、もう自重はしなかった。それをティオヴァルトが剣で砕くため、周りには石の塊が散らばっていた。
「5階層の、ね。涙のしずくも見てみたい、な。7色にも見えるんだっ、てー」
採取したばかりの赤い水越しにきらきらと輝く水晶を見ながら、咲也子が期待を込めた目でティオヴァルトを見上げた瞬間、次にする行動は決まった。
咲也子は取り払ったフードをもう1度被る。飽きてしまったのか転移陣に乗る前に【アイテムボックス】に採取した小瓶を放り込む。
「割れちゃったら、大変だもの、ね」
「そうだな」
飽きたのではなく小瓶の安全性を考えてのことだったらしい。
ちょこちょこと小さい歩幅で歩く咲也子の後ろに続いて、四方を結晶に囲まれた場所に設置された転移陣の上に乗る。周囲が結晶に囲まれていることによって、転移したときに魔物に殺されることを防ぐためという目的らしい。
2人で転移陣に乗った瞬間ぐらりとめまいのような、三半規管を揺さぶられるような不快感とともに陣外の景色が変わる。変わると言っても、1階層とそう大差はなかったが。せいぜいが結晶の突出場所が変わっていたり、色味が若干濃くなったかと思われる程度だった。
「きれい、ね」
「どこも変わんねえような結晶ばっかだけどな」
「色が違、う」
「もともとは大きな水晶に迷宮の核が埋め込まれ出来たらしいからな」
「それ、も?」
「スクールで習う」
「すごい、な」
スクールは本当にいろんなことを教えてくれるらしいと咲也子はフードの奥で、目を‘暴食‘に輝かせる。一瞬だけだが青く光る瞳に気付いたティオヴァルトは、ほかに違いはないかとあたりを見まわしている咲也子にため息をついた。
どうやらこの小さな神様はいつも知識に飢えているらしい。せっかく行った冒険者スクールでもあんなことがあったのにのんきなものだと思う一方で、あの赤髪の冒険者は今後どうなるのだろうかと考えかけたが、知ったことではないとその思考をぶった切った。




