3
絞り袋に苺パウダーでピンク色に染まっている生地とノーマルな生地を交互に入れる。ココア生地も同じように袋に入れて、調理台の上に持ってきた天板の上。そこにひいたクッキングシートに円を作るように絞り出し、中も生地で埋める。
ティオヴァルトにココア生地の方を任せてすべて絞り出した後、とんとんと天板を軽く調理台にたたきつけて生地の中の空気を抜いた。
「あとは、少し置くの、よー」
「大変なんだな、菓子作りって」
「楽しい、の」
「好きなやつにとってはな」
「ティオ嫌な、の?」
「……別に。悪くはねえよ」
「よかっ、た-」
ほわほわと花を飛ばしながら咲也子は先ほど冷凍庫に入れたクッキー生地を取り出す。ざ、くざ、くと切っていく。体重をかけながら、若干ぷるぷると震えつつ切っている様子に心配になったティオヴァルトが交換を申し出た。
自分の時とは違い、さくさく切っていくティオヴァルトにオーブンを予熱しつつも咲也子は無表情ながらも目を輝かせた気がした。
「ティオすごいの、ねー」
「普通だっての」
咲也子はティオヴァルトが切ったそれを次々に調理台に持ってきた天板の上にクッキングシートを敷いてそこに載せていき全て載せきると、予熱が終わったオーブンで焼いていった。
大きな天板いっぱいに並べられたクッキー生地に嬉しそうに目を細めると咲也子は時間がたってしぼんできたマカロン生地も上下それぞれのオーブンに入れて焼き始める。
換気扇をまわしてはいるものの、甘い良い匂いがキッチンルームに広がる。
「お茶にしま、しょー」
「おう」
咲也子が備え付けのティーポッドに一度お湯を入れて温めた後、【アイテムボックス】から出した茶葉を入れ、紅茶を淹れる。
甘い香りの中で飲む紅茶は砂糖を入れていないのにも関わらずほんのりと甘く感じられるから不思議だ。幸福感にやわらかくほどけるように空気を和ませていく、ノーマル派の咲也子とは対照的に、ティオヴァルトが砂糖とミルクを入れる手は止まらなかった。白百合のシュガーポッドから角砂糖を5つ入れたところで満足したようだったが。
その光景を見て、この大陸の人は皆砂糖が好きなんだろうかと咲也子は首をひねった。
「手慣れてんだな」
「なに、が?」
「菓子作り」
「お母さんと作ったことあるの、よー」
「ふーん……母親?」
「ん。お母さんが、オーブンぴってやったらお家が燃えた、の。どーんっ、て」
「何作ってたんだよ!?」
「……クッキー?」
時々オーブンの温度調節をしながらもまったりと流れる時間に身をゆだね、平坦な声で話される内容にティオヴァルトはドン引きした。温度差はあるものの紅茶を嗜み待っている2人にチーンとクッキーが焼けたこと示す音が鳴り、続くかたちでマカロンの方も鳴る。
咲也子がオーブンを開けると、ぶわりと熱気と一緒に甘いココアの香りと苺の甘酸っぱい香り、クッキーの方は甘い匂いと香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「いい匂い、ね」
「そうだな」
「えっと、中に詰め中に詰めるクリームつくる、の」
「……火使うのか?」
「ちょっとだ、け」
「そっちは俺がやる」
「ん。ありがと、う?」
ティオヴァルトが取り出したそれぞれの天板をケーキクーラーの上に置き冷ましながら、咲也子はチョコクリームとバタークリームを作ることにした。




