第3話 《鬼神》ドアルゴ
馬車から降りてきた女性のことを僕は知っていた。
燃えるような真っ赤な瞳と髪、着物のような服装を着崩し両肩をさらけ出すファッション、そして気が強そうだがとても整った顔に、着崩すことにより強調される大きな胸、服の上からでもわかるスタイルの良さ。
僕の知っている女性はもっと全体的にとげとげしい雰囲気をしていたり、額から2本の角が生えていたりと今の姿と少し違っているが間違いなく目の前にいる女性は僕の知る女性だ。
女性の名は十二魔将の1人《鬼神》ドアルゴ。
そう、今僕の目の前にいる女性こそSランクパーティー5つが協力しようやく倒すことが出来た魔王軍の幹部だ。
倒したはずのドアルゴが生きていたのも驚きだがそんなことよりもその化け物じみた強さを持つドアルゴが今僕の目の前にいるのが一番の問題だ。
Sランクのパーティー5つでもやっとだった相手、それを僕一人でどうにかできるのか?
そんなの無理だ。せめて逃げる時間を稼ぐことが出来ればいいのだが僕はソロだとほとんど何もすることが出来ないうえに今は装備も魔術を強化する指輪、普段持ち歩いている護身用のナイフさえもグリスにとられ持っていない。
「別にそこまで警戒しなくてもいいよ、私はスバル様のことを探していたけど闘うために探してたわけじゃないから」
絶望的状況をどう切り抜けるか考えているとドアルゴの方から話を切り出してきた。
ドアルゴの声色は本当に闘う気はなさそうな軽い感じなため一安心はしたが、死んだと思っていたドアルゴは生きていて、なぜか僕のことを探していて、いきなり様付けで呼ばれて。なんだか色々分からなくなってきた。
「あ、あのドアルゴさん?僕のことはスバルって呼び捨てで構いませんよ。」
「そっか、そっか。ならスバルって呼ばせてもらうね!それと私のことはアルって呼んでもらってもいいかな?ドアルゴって名前あまり好きじゃないから。」
僕が呼び捨てで構わないというとドアルゴはけらけらと笑いながらアルと呼んでくれと言ってきた
「アルさん、闘いに来たわけじゃなければなんで僕を探していたんですか?」
「さん、もいらないんだけどとりあえず今はいいわ。
それで私はスバルを魔王軍に勧誘とまではいわなくても魔王様にあってもらうために探していたんでけど、てか少なからず魔王様には会ってもらわないと私が困るから、とりあえず馬車に乗ろうか!」
僕はドアルゴの指示に従うことにした。
だって先ほどまでと違い、断った時点で力ずくの行動に移らせてもらうとドアルゴの瞳が訴えかけていたため僕の選べる選択肢は無く。僕はおとなしく馬車へと乗り込んだ。
「スバルがおとなしく馬車に乗ってくれて私も助かったよ。
それじゃあ、魔王城まではまだまだ時間がかかるから少しお話でもしようか」
それからしばらく僕はドアルゴと会話を続けた。
ドアルゴの話は僕にとってとても面白い話ばかりでいままで魔族=悪という認識しかなかったが僕にとってドアルゴの話に登場する魔族たちは僕たち人間とほとんど変わらない人たちでとても新鮮で驚きが多いい話でドアルゴ自身がいい人だということも話していくうちに伝わってきた。
ちなみに話の流れで僕たちと闘ったときドアルゴは死んだと思っていたことを伝えたら、スバルを見つけて初めはまさかと思ったけどスバルが魔王様が探している人物だと確信してから君を殺さないよう手加減をして闘ってたらスバルの強化と弱化の魔術のせいで思ったよりやられてしまったけど最後の爆発魔術が放たれるときギリギリ逃げれたと言っていた。
でもその爆発魔術のせいで私の家は無くなって私は十二魔将から降格されてしまったけどね。となんだか申し訳ないという罪悪感などにより僕の胃がキリキリとしたが基本的にドアルゴは少しでも僕が気にしないようになのか笑って話してくれた。でも爆破魔法を放ったのは『白銀の乙女』のメンバーの人だから僕は関係ないよね!?
それと魔王様がなぜ僕を探していたのかも聞いたがそこは魔王様と会ってからのお楽しみとはぐらかされてしまった。
「スバル、もうすぐ着くぞ!」
馬車に乗ってから4日経ち、ようやく僕たちは魔王城がある国、僕たち人間からは死の国や地獄の国などとも呼ばれる国、魔帝国へと到着した。
『Sランクパーティーを追放された回復魔術師は魔王軍として生きていく』を読んでいただきありがとうございます。
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