第2話 旅立ち
あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか
真っ白だった頭はしだいに冴えていき、今ここが『鉄火の牙』の名義で借りている宿屋の一室、男子部屋として借りた部屋だということを理解した。
男子部屋と言っても『鉄火の牙』には僕とグリスしか男はおらず5人パーティーの内、残りの3人は女だ。
部屋にある時計を見るとちょうど打ち上げが開始され30分ほど経過したと思われる時間だったが打ち上げどころか今の僕にはこの宿にもいる資格がないためこの宿を出るため荷造りを開始する。
たがすでにグリスによって手持ちの所持金や装備はすべて取られているため大した荷物はなく、他の荷物は普段からこまめに整理していたためすぐ荷造りはすぐに終わった。
幸いグリスにとられたお金と別に何かあったときように少しのお金を宿においてあった荷物に忍ばせていたため節約していけば少しは生きていける。
まだ気持ちの整理は付いていないが、今夜はここではない他の格安の宿に一泊泊まり明日の早朝にでもこの街をたち、出来るだけ早く彼らとの縁を切るべきなのだろう。
そうしなければ次にグリスやシズカ、『鉄火の牙』のメンバーと会ったらなにを口走ってしまうかわからないし、どんな顔していいのかもわからないため『鉄火の牙』のメンバーと鉢合わないようこの宿からは早めに出たほうがいいだろう。
そうと決まれば早速行動だ。この街にはすでに《鬼神》ドアルゴを倒すために1ヶ月ほど滞在していたためある程度なら安い宿の場所も把握しているためそこを目指し今いる宿を出て歩き出した。
もう夜なため部屋が空いているか不安だったが格安の宿はまだ何室か空きがありそのまま泊まることが出来た。
格安な宿と言うこともあり食事はなく、シャワーもない完全に寝るためだけに部屋だが今の僕には十分だ。
食事は荷造りして持ってきたバックの中に長期保存がきく干し肉が何枚かあるためそれを食べ、シャワーはないが水はあるためタオルを濡らし体をふき、明日は早朝。朝一で街を出る予定のため今夜は少し早いが寝ることにし布団にもぐり込んだ。
◇◆◇◆
まだまだ外は薄暗いがしだいに日が出始めていた。
眠りにつくと昨日の出来事が悪夢のように夢で何度も何度もリピートされそのたびに目が覚めてしまったためせっかくこの宿についてから早めに寝たが結局睡眠不足でコンディションは最悪だ。
それでも僕はだるい体を動かし顔を洗い、身支度をした。
宿を出て街の門まで行く頃には日が昇り初め薄暗さが無くなってきた。
馬車に乗っていくにもお金がかかり今の僕にはそのお金がほとんどないため馬車や馬などを諦めとりあえず徒歩で次の大きな街まで向かうことにした。
なぜ大きな街かというと小さな町や村では冒険者ギルドがなかったりあったとしても依頼がほとんどなかったりと、あまりお金を稼ぐことが出来ないからだ。
だが今は贅沢を言わずちょっとでも稼げるなら依頼を受けていきたいが生憎僕は回復魔術師だ。サポートメインの僕は依頼があってもソロでは行くことが出来ないため行く仲間が必要だが小さな町とかではよそ者を入れようと思う冒険者パーティーはほとんどないのだ。
その辺大きな街に行けば仲間を募集しているパーティーも多く入ろうと思えばいくらでもはいることが出来、なおかつ様々な依頼があるため稼げる依頼を選んで決めることが出来る。
大きな街まで徒歩で行くとなると何日かかるかわからないが、今進んでいる整備されている道なりを行けば魔物などは基本出ないし、道中に村などはいくらでもあるためそこを転々とし、大きな街を目指す感じだ。
だが今の僕にできることは黙々と歩くことだけだ。
街を出てから、ある程度時間が経ったようで次第と僕の横を商人や冒険者が乗っている馬車が通り過ぎていく。
そんな中、一台の馬車が僕の隣に止まり
「ようやく見つけたぞ!」
と言う声と共に馬車から一人の女性が下りてきた。
『Sランクパーティーを追放された回復魔術師は魔王軍として生きていく』を読んでいただきありがとうございます。
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