第二項 顧みられぬ惜別の贖罪
前項において筆者はツインテールに対してひと言物申したい、と表明した。それは数多の創作物に、ツインテールがあまりにも安易に登場してはいやしないか? という筆者の思い、というより、世間の空気を読んだうえでの判断であった。しかし、その前段階として筆者は明確にしておかねばならない事由があった。果たして……!
念のため、と言えば、ついでにもうひとつ明記しておかねばならない事がある。実は筆者はここまで暑苦しく語っておきながら、ツインテールにさほどこだわりはない。
……なんだかものすごい説得力のないカミングアウトと思われそうであるが、天地神明に誓って事実なのである。信じてほしい。自慢じゃないが筆者は今まで、一度たりとてツインテールに萌えたためしがない。
ギャルゲーをプレイしてても、十八禁ゲーム誌にツインテールキャラが掲載されてても、「よしっ! ツインテールだから、このコを攻略対象に決めた」なんて事にはならなかった。大抵ツインテールは筆者的攻略対象でいえば五番手か六番手、平たく言えばビリッケツなのである。これは筆者に限った話でもないと思う。大抵、世の男性諸氏はツインテールを最初に攻略したいとは思わないのではあるまいか。「メインヒロインもセカンドヒロインも、ついでに裏ルートの隠しキャラも攻略しちゃったから、もうやる事ないし、仕方ないから売れ残ったこのツインテールでも攻略してやるか~。ヒマだからな!」くらいのノリで攻略にかかったという人が大半ではないかと思うのである。それでも、ギャルゲー、十八禁ゲームは実に七割の確率で、一人はツインテールが登場するのだからそれなりに需要はあるのだとは思う。いや、実際に統計を取ったわけではないのであくまで印象だが、それくらいの割合と見て概ね間違いはあるまい。それでもツインテール萌え~、な男子が世の中にどれほど生息しているかは甚だ疑問である。
筆者は当時若かったので、その理由はこんな安直なものだろうと思っていた。
「キャラの描き分けが容易だから、ツインテールを一人入れてるんだな」もしくは、「ステレオタイプの勝気キャラならツインテールが分かりやすいもんな」などという、非常に稚拙で馬鹿げたあて推量である。当時の自分に背後からドロップキックでも食らわせてやりたいくらいだ。そんなわけがあるまい。相手は商業作品である。ユーザー様のお金と時間を引き換えに渡される創作物に、そんないい加減なキャラクター設定があるはずがない。
どうやら自分は若さと引き換えに、物事の本質を見抜く眼力を手に入れたようだ。老成と言ってもいいだろう。いまの自分なら分かる。ツインテールは決してそんな甘いもんじゃない。世間知らずの若造が一筋縄で太刀打ちできる相手ではない。お前みたいなクズはメインヒロインとセカンドヒロインの間で懊悩でもしてろ! そうやって斜に構えて、製作サイドの批評でもして大人ぶってるがいい。ガキは大抵こうなのだ。ネズミの着ぐるみを見て、中の人暑そうだねとか言うのがマセたガキだと勘違いしていやがる。「中に人なんか入っていないんだよ。あれは本物のネズミさんなんだよ」というのが成熟した大人の物言いってもんだろうがよ!
いかん、話が逸れた。