特殊なクローズド・サークルなら―石持浅海
さて、石持浅海先生。
メジャー級の知名度はないかもしれませんが、大変精緻なミステリを描く作家さんです。
最初の出会いは、『扉は閉ざされたまま』。
このミステリーがすごい!(宝島社)にランクインしていたことがキッカケ。
(このミス・ベスト10特集コーナーを作ってくれる書店って良いですよね~。すぐ行きつけにしちゃう)
倒叙ミステリ。タイトル通り、犯行現場は閉ざされたままで、物語は進行していきます。
ちなみに、【閉ざされている=密室】ではあらず!!
舞台は高級ペンションで、大学サークルの同好会。
扉を破ることは出来るが、中で何が起こっているのか分からない上、建物を壊すのははばかられる――という微妙な状況。
(読者に違和感を抱かせず読ませるのも作者の力量といえるでしょう。)
犯行現場が開かれず、非常に少ない材料から、頭の良い犯人(男性)と天才的な探偵役(女性)の静かで熱い頭脳戦が繰り広げられます。
そう――この犯人、頭がキレるんです!
倒叙式の犯人といえば、あまりイケてないというか、うっかり者の印象が(私のなかでは)強いのですが、伏見(犯人)は違います。現場を密室にした理由も、おそらく過去に前例がない動機が秀逸です。
当時、学生だった私はこれを読み、いたく感動し、ずるずると石持作品にハマっていったのであります。
お気に入りは、『扉は~』から始まる碓氷優佳シリーズと『月の扉』が代表的な座間味くんシリーズ。
『月の扉』は、宗教団体が絡んだりしているんですけど、飛行機という(またも)閉ざされた空間のなかでの密室殺人……と本格の要素満載です。
ひょんなことから探偵役を指名された座間味くんですが、閉鎖状況のなか、少ない手がかりを元に推理していくロジックは端正で美しい、の一言です。
座間味くんの一言で世界が反転する『玩具店の英雄』などの短編集もおすすめ。
(2015.12.10)
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初めてのかたにオススメするなら、やはり『月の扉』か『扉は閉ざされたまま』。
どうかどうか読んでみてください、と頭を下げたくなるほど傑作です。
愛ゆえに不満があるのは、『玩具店の英雄』と『パレードの明暗』。
(以下、しょーもないネタバレを含みます^_^;)
実際に起こった警察の失敗例を検証する――という物語で、パパになった座間味くんはときに親視点ゆえの推理を炸裂します。
でもでも、自分の子が大事で第一優先なのは分かるけど、目の前で刺されそうになっている人物を助けることを優先することだってあると思うの! 人間の本能として! パパ座間味くんも良いかんじだけど、ちょっと辟易ぎみ……。
(2017.7.3)
次は、井上真偽さんか石崎幸二さんか乾くるみさんか。「い」も多い!